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スクラムを導入したのにチームの生産性が上がらないとお嘆きのあなたへ

結論:スクラムは生産性を上げる開発手法ではありません。スクラムを導入しても生産性は上がりません。

最初の1行で話が終わってしまった感がありますが続きはあります。
スクラムに過度の期待を寄せる人はいます。進研ゼミの漫画みたいに。進研ゼミを始めれば成績は伸びる、部活でレギュラーになって大活躍してモテモテ、みたいなアレです。
通信教育を受けると成績が伸びるのはわかるんですが、なんで部活や異性からの人気に影響できるんでしょうね?

生産性があがるチームの条件

話がズレました。生産性の方に話を戻しましょう。
生産性があがるスクラムチームは、スクラムを導入するほかに定量的なデータ分析を含む改善のサイクルが回っています。
改善のサイクルを回さなくても「スクラムが機能している」と言い張ることは可能ですが、生産性も上げるには改善のサイクルを機能させることは不可欠です。
仄聞する限りにおいて、生産性を上げているチームには以下の条件が揃っているように感じます

・スプリントプランニングが実効性のあるコミットとして機能していること
・スプリントプランニングの実行結果をレトロスペクティブで定量的なデータ込みで振り返りれていること
・「実態に即したデータ」が定量的で分析可能な形で存在すること

スプリントプランニングはスクラムにおいて重要なコミットすべき事項の一つです。
これを欠いている場合、そもそもレトロスペクティブで振り返るべき対象がフワフワしているので全てが機能しません。
当然生産性も上がりません。
実効性のある計画は何より大事です。計画を立てないと、現実が計画とどうズレたかが分からないからです。また実現性が低い計画があっても反省すべき点が多すぎて、振り返り様がありません
そもそもスプリントプランニングをしない場合、定量的にデータ分析されても「ふーん、で?」としかメンバーは考えようがありません。
定量的な数字を考える動機がメンバーに薄いからです。

レトロスペクティブはその次に大事です。チームにおいて振り返りと称するミーティングはあっても「フワッとした印象論」が語られ「抽象的な原因のイメージ」が議論されて対応するアクションが決まる。
アクションが実行されたかは一応見ているが、そのアクションが改善したかった箇所を改善できたかはトレースされない、そういうチームでは生産性の改善は不可能です。
またスプリントプランニングが成功したのか、あるいは失敗したのか。
その結果はなぜそうなったのか。その原因をメンバーから吸い上げ振り返る場がなければ生産性の向上は見込めません。
生産性向上のための、正しいインプットから改善策という正しいアウトプットを出すための場がレトロです。
レトロスペクティブなくしてはすべてがやりっぱなしになります。生産性を含むすべての改善は、レトロスペクティブ無くしてはあり得ません。

「実態に即したデータ」が定量的で分析可能な形で存在すること
実はこれが大事です。
生産性の定義がなにかもはっきりさせないことは最悪です。
偉い人が「俺がこの程度の予算と人員と期間で十分だろ、と判断したリソースを費やして、俺が満足する結果が出る割合」を生産性と称しているケースもあります。
その定義に基づいて生産性を上げろ、と言われたらだいぶ厳しいです。

管理されるべきチケットのデータが実態と即していることも前提条件です。
カンバン上では同時着手可能なチケット数(WIP制約)は4つと決まっているのに、ITS(Issue Tracking System)上では進行中になっているチケットは10を下回ったことはなく、その3割は1ヶ月以上前から進行中になっている
実態としては1週間以上の期間を費やしてDONEしたチケットのステータスがシステム上で変更されるのは、DONEした日。その日にTo Do > 進行中 > 完了 と更新される。
そういうプロジェクトで定量分析などほぼ不可能です。
いや不可能ではないのですが、非現実的で苦行じみたコストがかかります。

そもそもなんでそこまでやらないといけないの?

そこまでやらないと生産性を意識しないからです。

なぜ計画した通りに終わらなかった?
計画を阻害するとしたら何が原因?
何を変えればもっと早く作れる?
何がわかっていれば今回のように失敗しなかった?
成功を再現するには?
失敗を再現しないためには?

それを真剣に考えさせるためです。
そして真剣に考え続けると、結果的に生産性が上がるようにできています。「スクラムは生産性を上げるフレームワーク」と言われることもありますが、上記の3点が機能して、チームメンバーが真剣に考え続ける習慣が根付いて初めて生産性は上がるようになります。
またこれらの要素なしでも、スクラムは機能してしまうために「スクラムをしているのに生産性が上がらない!」という発言が出てしまうのです。

生産性が上がらないチームあるある

生産性が上がらないというチームの話を聞くと
・レトロスペクティブで定量的なデータを見ていない。みな抽象的な印象論をもとに空中戦をしてアクションを決めている。
・そもそもスプリントプランニングを行っていない。
・振り返りは一部のメンバーだけで行っている。
・振り返りが形骸化していて、メンバーの半数はPCで内職している
・チケットシステムはあるが内容は実態と大きく乖離しており、中身を見ても意味がない
のような地獄みたいな状態になっているケースも少なくありません。

じゃあお前ならどうする

基本的に準備に3ヶ月とります。3ヶ月とってデータを定量的に分析できる状態にします。
やることは

・実態とカンバンとITSの状態を合致する状態にする(過去記事参照
・見積およびスプリントプランニングを機能させる状態にする(プランニングを実効性の高いコミットに引き上げる必要はない)
・ITSのデータを分析可能な状態にする(デイリースタンドアップとレトロスペクティブでチェックできる状態が目標)
の3つです。

当然コストはかかります。
生産性を上げられる状態にするコストはかかります。ですがここをケチったら生産性は上がりません。

ただしここで語られる生産性にも罠はあります。
この方法で改善できるのはスクラムチームだけです。
多くの場合生産性は、かけたコストと得られた金銭的利益の文脈で経営者は語りがちです。
スクラムチームが完璧に機能したとしても、企画やマーケティングがクソなら金銭的利益は得られません。
金銭的利益の改善は、スクラムチームの改善のサイクルを機能させる以外の、また別の改善が必要になります。
ここを勘違いしてほしくない、というのは声を大にして言いたい点です。

トップ画像について

裏バイト:逃亡禁止 という漫画の3巻からの引用です。
ホラー漫画ですが面白いです。私の一押しです。

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