DMM、100冊70%OFFクーポン配ったってよ

DMMブックスの「最大100冊70%OFF」は本日まで! 大反響につき終了を前倒し - BCN+R https://www.bcnretail.com/market/detail/20210412_221188.html

上の記事の話です。
さて気になるわけですね。
なんのために100冊上限70%OFFクーポンを配ったのか。

初回購入者に限ってはいますが、新しいアカウント開設を抜け道として公式が案内しています。
週刊ジャンプの新刊が484円、ざっくり500円として100冊買った場合
500 x 100 x 0.7 = 35,000円をOFFにします。とそう言っているわけです。
(もっと高価な本を買えばより割引額は大きくなるけど今回はそれを考慮しない)

なぜ70%OFFなのか

Amazonにおける電子書籍の非専売時の出版社の取り分が35%です。仮にDMMも同じ条件としている場合65%がDMMの取り分(粗利)となるはずです。
DMMの取り分をほぼゼロにするという意図なんだと思います。電子書籍は何冊売ってもコスト変わりませんし。65%ではなく70%なのはわかりやすいからとか?
クレカなどの決済手数料もあるので、実際には「35%の出版社取り分 + 5%の決済手数料 - 70%引の価格」で決済金額の10%程度の金額がDMMの持ち出しとなるはずです。
ここがポイントです。10億円の売上を作るとDMMは10%、1億円の持ち出しが発生するわけです。

なぜ最大100冊なのか?

なぜ最大10冊ではなく100冊なのか。
「漫画のシリーズ全てを買えるから」
これが最大の狙いだと思います。

漫画業界でよく聞く「1文で矛盾する迷文句」があります。
「面白い漫画作品教えて。10巻以内のやつで」
漫画は売れている限り続巻が刊行されます。10巻以下で打ち切られている時点で面白い漫画ではないことになります。
なぜ最大10冊ではなく100冊だったのかの回答がこれだと思います。
あなたの好きな面白い漫画、シリーズ全巻が70%オフで買えますよ。
この殺し文句のために100冊という上限値が設定されたのだと思います。

ワンピースが全98巻、ゴルゴ13が全202巻。こち亀が全200巻。
100巻以上続く漫画は手で数えられる程度しかありません。

施策の「ターゲット」は誰だったのか

新規ユーザーの獲得、と見ることはできるかもしれません。
イマイチ浸透していないヨドバシの電子書籍を見れば明らかです。
電子書籍=Kindle。もうこれはデファクトスタンダードです。
では70%オフで新規ユーザーを大量に獲得すればそれでKindleと戦うことができるのか。答えはNoです。
70%オフのときにユーザーはDMMで本を100冊買い、それ以降はまたKindleに回帰するだけなので。

私はターゲットは出版社だったのだと思います。

100冊70%オフのキャンペーンで、平均40冊を5万人が買ったとしましょう。平均単価500円として2週間で定価換算10億円の売上が発生します。
数字としては仮定ですが大きくはズレていないでしょう。
しかも売れ筋の新刊ではなく名作のシリーズ全体買いを志向させた施策なので、需要の先食いにはなりません。
「これから2週間で10億円の電子書籍の売上が発生するキャンペーンをやる」
と言われて首を縦に振らない出版社はいません。
なぜなら電子書籍コミックの1日の売上が10億円弱だからです。
いっきに数ポイント売上が発生するイベントに自分だけ参加しないというのはビジネス的に不合理な行動だからです。

そしてそのキャンペーンに参加すためには、名作や売れ筋のコミックスをDMMに登録する必要があります。
つまりキャンペーンを通してDMMが欲しかったのはプラットフォーマーとして最も重要な「売れ筋商材の確保」だと私は考えています。

プラットフォームで一番大事な点は、売れるアイテムを確保できるか。この点につきます。
プラットフォーマーは水槽だけを保有する水族館です。
誰かに魚を水槽に入れてもらい、その水槽を人に見せて入場料を取る水族館、それがプラットフォーマーです。
見た目の悪い魚しかいない、あるいは空っぽの水槽しかない水族館にはなんの価値もないからです。

1億円で大手出版社に売れ筋のコミックス商材を登録させた

そのためにDMMが支払った費用は1億円程度です。
さきほども言った通り、DMMの持ち出し分は出版社取り分への補填含めて10%。
需要の先食いをしないタイプのキャンペーンなので今後定価で売れるはずだった商材の見込み売上を食うこともありません。
10億円の売上が発生しても1億円の持ち出しですみます。

1億円の広告費の成果としては大成功と見るべきでしょう。

私は今回の最大100冊70%オフキャンペーンは、大手出版社に1億円で売れ筋の商材を自社プラットフォームに登録させる施策として大成功を収めたと考えています。

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