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なぜ研修医は病みやすいのだろうか。仮説の殴り書き#1



"研修医の30%は抑うつ状態である" らしい。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/mededjapan/48/2/48_71/_pdf

上記の論文で算出されたこの数字はいろいろなところで目にするし、医学生時代も研修開始後もことあるごとに話題に挙がる。

私は(学生時代に実習への不適応を起こしていることもあり)他の研修医より脆弱性が高そうだな、と思っていたが、案外抑うつな気分を生じずにこれている。

と思っていたが、
緊張型頭痛の発生頻度は爆増して毎日鎮痛剤は手放せないし、
人生史上最も睡眠時間が必要だし(毎日7時間では不足)、
思い立ってやってみたCES-Dは17点だった(0-40で16点カットオフ)。

大うつ病性障害や適応障害の診断基準は満たさない(=新規に病名がつく状態ではない)が、まあまあ抑うつ状態ではありそうだ。


なぜだろう。と思って立てた仮説を書き残しておく。
あくまでもこれは私の場合であることは念頭に置いて。


① 毎月配属チーム(&業務内容)が変わり、慣れることがない

医師たちは初期研修医がスーパーローテーションすることを当然だと思っているのであまり疑問を呈する人はいないかもしれないが、
一般社会人として考えると まずこの労働環境が異常なのではないだろうか。

「研修医として勤務開始して9ヶ月目」ではあるものの、
「今勤務しているチームでの経験年数は0年0ヶ月」である状態が丸2年間続く。

多様な診療科での臨床経験を通じて、"診断と治療の専門家"としての臨床判断能力と対処能力を培っていくのが重要なのは分かっているが、
人間関係が積み上がらずいつまで経っても緊張しているので正直ツラい。

上司(=上級医)が変わるだけでなく、コメディカルもその度に変わる。
病棟によって違うレイアウト、病棟によって違うマイルール、(病棟によって本当にぜんぜん違って覚えるのが無理なレベルなので)都度ごとに看護師さんに質問すると「こんな基本的なことも分からないで、これまで9ヶ月も何やってきたの?」って顔をされるのは日常茶飯事。いや、こちとらいつまで経っても経験0年0ヶ月やねん。ナースステーションのレイアウトや処方ルール、物品の置き場所を全病棟で揃えてくれれば覚えることもできるけど、無理なくらいぜんぜん違ってこっちも戸惑ってんねん、想像しておくれやす。(看護師さんの共感性は患者さんと看護師仲間にだけ発揮される仕様になってるのかってくらい、共感スイッチのオンオフが激しすぎてビビります。)怒涛の愚痴でした。


なのにだ。

② 配属チームで要求されている業務内容が不明瞭、dutyとmissionについて話すことがないまま日々の業務が進行していく

のだ。

私の場合は 1年間 会社員として仕事をする経験をさせてもらっているのが不幸なことなのか、「業務内容と目的/目標が不明なまま業務が開始する」のが気持ち悪くて仕方がない。

診療科チームにとっては、研修医は毎月変わる人員なわけで。
いちいち業務内容の説明を行うのが面倒臭いのもわかるし、
監督下じゃないと仕事をさせられないので、重要な部分を任せづらいのもわかる。
研修医同士で業務引き継ぎは当然しているのだが、実際にその仕事たちのうちどれがmustでどれがhave-to、どれがhope-toなのか、重要度のフィードバックがないまま進んでいく。仕事それぞれのクオリティフィードバックも基本無し。(どちらも、余りにも酷い場合にのみお叱りが入る。あまり期待されていないことも多いので叱り慣れていない上級医も多いが、患者さんに危害が及ぶ前に止めなければならないので、初回からガチギレされるパターンもままある)

これ、どうにかならないものなんだろうか。
何が「良い仕事」なのか、チームからの要求を聞く機会も、評価・フィードバックを頂く機会もなく始まり、終わっている、ということなので、問題なのではなかろうか。

診療科チームの人数が多くて専攻医が数人いる場合は、担当メンターをつけてくださることもある。この場合は、一緒にタスク整理をしてもらえることがあるが、must / have-to / hope-to の振り分けまでは期待できないことが多い。そういうコミュニケーションに慣れてないことも多いのだろうが、どのようにリクエストしたら(サボりたいという意味に取られずに)タスク重要度&仕事の質のフィードバックを貰えるか悩ましいところだ。


そして

③ 一貫して自分の成長を見守り指導してくれるメンターが不在

なのだ。診療科チームは変われど、"診断と治療の専門家" であり "診療行為チームのリーダーポジション" という医師の役割は変わらないなかで、身につけるべき考え方やコミュニケーション上の(修正した方がいい)クセ、何度もやってしまうエラーなど、乗り越えるべき課題は一貫している(かもしれないと思う)。
それらを客観的に見て、フィードバックを入れつつ、成長していく過程を一貫して見守ってくれるメンター的存在は、当院では不在のように思う。

一応は「この先生がメンターです」と当ててもらってはいるのだが、1回あった面談も形式的であり、その後は「問題があれば相談の機会を設ける」ような制度になっている。正直あまり機能しているとは思えない(…贅沢な話だろうか)。


新卒1年目(去年)は2つの環境で仕事をしたが、どちらもフィードバックを高い頻度で貰える贅沢な環境だった。仕事の質についても優先順位についても多くのフィードバックを貰い、「この仕事の価値は**だから、△△を実現するような良い仕事をしよう」という思考回路にしてもらった。
そのおかげで、「仕事をすると決めたなら、良い仕事をしていきたい」という考え方を自然と持ち創意工夫をするような人であることに誇りを持っている。

だが、正直、この初期研修という環境下では、そのことが凶となっているような気がしている。

このような制度下では、ふんわりとした役割でもないような役割を、誰がやっても大差ないようなかたちで、大きなミスなく終えてくれればそれで結構なのだと感じることが多いからだ。

私は欠けたところのある人間なので、強みでそれを補うチャンスのある環境でなら働くことができる。
いまの環境では 強みを発揮することを求められていない以上、弱みをカバーする手段を見つけるのは難しい(模索はし続けているけどね)。


人事担当者がしてくれるのは、寝坊しては遅刻出勤の連絡をするたびに、「おまえは足りない人間だ」「なぜ、当たり前にみんなしていることが、できないんだ」「もうそろそろ、見逃してあげることはできないですよ」と突きつけることだけ、

のように感じてしまうのだ。


自分の周囲の環境に文句ばかりを言い、「僕はまだ本気出してないだけ」と言い続けるような人間にはなりたくない。
でも、いまの私はきっとそう見えるんだろうな。



どうしても愚痴が多くなってしまった。
あまり推敲できてない思考だけれども、雑多な生の考えごととしてこのまま置いておくことにしよう。



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