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「おふでさきの物語」 第一章 その1

第一章
 
 暗闇の宇宙の中で、神様は呟きました。
「誰も私の心を知ったものなど、いるはずもない。」
 でも、それはあたりまえのことでした。
 自分の気持ちを、誰にも伝えたことがないのですから。
神様は、ゆっくりと大きく息を吸い込みました。
「そうだ、誰かに私の気持ちを伝えればいいんだ。」
神様はよろこんで、暗闇の中をじっと観察したのでした。
と言っても、無数に存在する星々の中で、生命のある星はただの一つしかありません。
 この星も、遠い昔、神様が一所懸命に造り上げたものでした。そのときも、なかなか思い通りにはできませんでしたが、それでも、神様はあらんかぎりの力と智恵を振り絞って、ちょうど星に大地と天空があるように、生命にも女と男をつくり、少しずつ、その生命たちを成長させてきたのでした。
 どうやって造ったかって?
それはもう、長い歳月を費やして造ったのですから、一言で言い表すことができるはずもありません。
でも、この「なぜ生命をつくったのか」、「どうやって造ったのか」ということこそ、神様にとっての伝えたい気持ちだったのでした。
そのためには、まず、「どこで創ったのか」をしっかりと伝えなければなりません。
神様は、生命を創った場所に「ぢば」と名付けました。
人間たちは、この場所のあたりのことを霊験あらたかなところだと言っていましたが、その本当の意味を知っている者などいる筈もありません。
でも、神様はこう思いました。
きっと人間たちも私の心を知れば、私や、この「ぢば」のことが恋しくなるにちがいないと。そう、たとえどのような者であっても、すべての者が、恋しく思えるにちがいない。
もし人間たちが知りたいと思ったなら、この「ぢば」に来てもらおう。そして、ここで私の心を伝えていこう、そうどんなことだって。
神様はこの星に現れようと決めました。もし、これを聞きたい者がいたなら、たとえ何年かけてでも、ゆっくりと一つひとつ伝えることにしよう。
私が、この星に降りたって、人々にこの心を伝えたならば、きっと世界中の生命たちが奮い立ち、勇み立つに違いありません。そうして、世界中の人々が、神様が最初に描いていた、本来の人々の在り方に近づくよう努力して扶け合いながら生きていくのなら、世界中のすべての生命がもっともっと元気になって、本来あるべき姿に向かって人々の成長も加速していくことでしょう。
そのために必要なこととは一体なんでしょう。それは神様と生命の対話、つまり「祈り」ではないでしょうか。
「どのような祈りがふさわしいだろう」
ゆっくりと神様は考えました。そうして、人々にも、ゆっくりとそれを教えていこうと決めたのでした。

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