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習作1(その8):電話

短文を書きました。小説の一項になるにはどうすればよいかアドバイスをください。

電話


エッセンシャルワーカーといわれる人たちがいる。介護や医療、建設現場で働く人たちだ。

エッセンシャルな仕事は、いつも人手不足だ。求人に応募すると、すぐに電話がかかってくる。

「ご応募いただきまして誠ありがとうございます。」
「勤務のご希望をお聞かせいただけますか?何曜日に勤務いただけるかなどありますか?」
「ちょっとわからないですが、月金で週5日でしょうか」
「何時から何時まで勤務可能でしょうか?早朝、日勤、夜間などご希望はございますか?」
「日勤といいますか9時、5時でお願いします」
「ご勤務はいつから可能となりますでしょうか?」
「来週からでどうですか?」
「承知しました。これで弊社からお伺いしたいことはすべてでございます」
それだけなんだ。
「あの、勤務場所はどちらになりますか?うちの最寄りの場所ですか?」
「はい。左様でございます。エントリーいただいた勤務地となります」
登録は名前とメールアドレス。生年月日さえ要らない。履歴書など全く必要ない。
電話で、簡単な説明、いや尋問かを受け、すぐに雇用契約成立となる。
何社応募しても、ご期待に添えません、と通知される職種とは大違いだ。
エッセンシャルワーカーといえば、看護師や介護士、建設労働者だ。素人ではできない仕事をするのだが、だれでも採用する。
看護師なら注射は打たないにしても、点滴の確認はするだろう。間違えていたらどうなるのだろう。介護士なら入浴の介助がある。浴槽にお年寄りを落としてしまったらどうするのだろう。建設現場で高所を歩いていて落っこちてしまったらどうなる。労災か。いや、命が危ない。誰かの命が危なくなる仕事をエッセンシャルワークというのかもしれない。
すぐさま現場に放り込まれて、現場で見て覚える方式だ。早く習得するという点では間違ってはいない。事故が起こらないか気になる。気にする人はいないのかもしれない。誰も気にしないのか。
私が、エッセンシャルワークで仕事をしても誰も気にしない。反対に、エッセンシャル以外の仕事をしても誰も気にしない。そんなものだ。
違いは、仕事をしてくださいという電話がかかってくるか、仕事はありませんというメールが来るかだけだ。悪い知らせほど、丁寧に、あたたかく伝えてほしいが、あっさりと、メールがくる。何万回もコピーされた使いまわしの文面で。


読んでいただけると嬉しいです。日本が元気になる記事を書いていきます。