『自分の小さな「箱」から脱出する方法』

『自分の小さな「箱」から脱出する方法』

人は自己正当化の習慣にとらわれがちということが書いてある。習慣にとらわれた状態が「箱」に入った状態とたとえられている。人はだれでも自己正当化の箱に入ってしまうとなっている。その現象が一番よくあらわれるのが、夫婦の関係。お互いの悪いところばかり目について、自分は悪くないというまさに「自己正当化」に入り込んでしまうとなっている。もっというと相手が悪いことをしてくれるほどうれしくなる傾向もあるという。

  これ本が共感を生むのは、誰もが、その夫婦間のぎくしゃくした関係を経験しているからだろう。本に出てくるたとえ話の大半が、夫婦間の話。会社での上司や部下との関係も自己正当化が多くみられるが、たとえ話から見るとよほど気楽なもの。

  会社は、ほとんどの人が自己正当化におちいってしまい、組織がおかしくなってしまうとしている。おかしくならないように自己正当化に走らないように仕組みを作るのが経営陣の最大のミッションともされている。

  普通に生きてくると自分のいいところを認めてもらって、出世したり、評価を上げてもらったりするように教育されるので、だれだってそうなる。それが人間関係を破たんさせ、協力を生まなくしているという。

  ではどうするか、自己正当化の欲求は非常に強いので簡単ではない。しかし、中には自分が本当に心配したり、好意を持っていたりする人もいるだろう。そういう人との関係が自分が「箱」から出るきっかけとなるとされている。これも確かにと思える話。気が合うとか好きなタイプという人はいるものだ。そういう人のためなら自分を犠牲にすることもある。そういう気持ちになれる人との関係を少なくとも1つはもち、その気持ちを広げていくようにという方法だ。

  もう一つは必ずしも自分が正しくないと思うようにしておくことというものだ。自分が正しいと思えるのは自己正当化のマシンが自分の中で回っているからなのだから、自分の考えが間違っていると思うことも必要ということだ。

  自己正当化が始まるのは、意外にも自分のきれいな心からということも書かれている。相手を助けてあげたいという自分のきれいな気持ちに従わないと従わない理由を探し出す。そこから自己正当化が始まるという。自分のきれいな気持ちはもろ刃の剣というか従わないと真逆に向かってしまうものでもあるということだ。

  本のストーリーは、自己正当化に心を奪われると、会社の業績に集中できなくなるとしている。書いているのは、The Arbinger Instituteというコンサルティング会社。ここから先はコンサルティングの出番ですよという流れになっているてやや不自然。

本書の論点は、会社の中に協力関係を作りにくいのは、誰しもがもっている自己正当化の傾向によるものだという。それを夫婦間の憎悪ともいえそうな似たぎくしゃくした関係を例に説明していて、考えさせられる。



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