ちゅ~る袋のこと
※初版本はすでに売り切れていて、入手できません。ご注意ください。
単行本『猫のいる家に帰りたい』(辰巳出版)の初版には、初版限定ふろく「ちゅ~る袋」を付けていた。このふろくを作ることになった経緯を書いてみたい。
そもそもなぜ?
「作った短歌をどう届けるか」は、常に考えている。
「遠くまで届くことがうれしい」というのが、表現の動機のひとつなので、遠くまで届く方法を、ずっと考えている。
「ちゅ~る袋」はもともと自分で作って10首くらいセットにして、歌集として文フリなどで売ろうと思っていたグッズ案。
枡野浩一短歌塾時代に「束見本で作る歌集」や「セロテープの形の歌集」を提示してみたとき、枡野さんから「あなたの場合は猫歌人として、猫の写真その他をもとに考えてみては。アイデアいいと思うけれど、あなたがやる必然性はあまり感じられない。あなたがやることになった物語、というか。自分ちが造本やってて、束見本が余ってる、テープ屋さんで、テープを子供のころから見てた、などが物語。」というコメントをもらって、「なるほど、物語か……」と思った。
それ以来なにか作るときには「自分が作る必然性」みたいなことを強く意識している。
【参考】束見本歌集サンプル
【参考】テープ型歌集サンプル
制作過程
ちゅ~る袋のヒントは「オリジナルうまい棒」。
https://www.umaibo.jp/
ちゅ~るは短冊形で、短歌の表記と相性がいいので、最初は「おーい、お茶」の俳句みたいにパッケージに印刷してくれたりするとうれしいのに、と思っていたけれど、この「オリジナルうまい棒」の二重包装の方式はとてもありなのでは、と思った。
猫のいる家に訪問するとき、ちゅ~るをおみやげに持っていくのは割とあることだ。いなば公式にも「おちゅ~る元」という企画商品があるくらいだから。
「CIAOおちゅ~る元」
https://www.inaba-petfood.co.jp/ochurugen/
ならば、お年玉のポチ袋みたいにちゅ~るを入れる専用の袋があってもいいのでは。うやうやしくてバカバカしくて、いい。
ちゅ~る袋なら猫歌人が作る必然もある。
……で、単行本を出すと決まったあと、ふと「ちゅ~る袋をノベルティー(書店でご購入された方へのおまけ)として進呈しては?」と思いついて、自分でサンプルを作って、写真を撮って、編集さんに送ってみた。
その段階で「本のノベルティーなのだから、しおりとしても機能するほうが必然性が増す」とリボンを付ける穴も入れて「しおり兼ちゅ~る袋」とした。(当初は、公式とコラボなんてまったく考えていなかったので「猫のおやつ袋」とするつもりだった)
すぐに編集さんから「おもしろいですね。社内で共有して、いなばさんに公式の打診をするので、実物を送ってもらえますか?」と言われ「え、マジで? いや……これは手書きだし……」。と急いで展開図を作って「この展開図で、そちらで作成してください」とお願いした。
あとは、あれよあれよという間に、公式の許可が下り「ノベルティーだと書店でご購入された人にしか渡らないので、Amazonなどネット書店でご購入いただいた方にも届くように、初版限定ふろくにしましょう」ということになった。
最初はちゅ~るピッタリのサイズ感を考えていたのだけれど、細すぎて折りの工程が手作業となりコストが上がるため、少し幅広に。代わりに贈り物っぽい水引ともリボンとも取れるようなデザインを施してもらって、結果的にかわいく仕上がって、とても満足。
こういうのは、本当に担当編集さんとイラストレーターの小泉さんのフットワークのよさのおかげだと思う。あといなばさんの懐の深さ。
アイデアを出すだけで、プロが動いてくれるって、自分で作るよりクオリティーが高い上に、こんなにも楽でいいのだろうか……と感じた。ありがたすぎた。
ふろくの効果
ふろくの存在は、情報解禁(2/22)から単行本発売(6/24)までの間に「告知できる材料」として、役に立った。
それが「ちゅ~る袋」という変テコな物だったことも効果的だったと思う。
付随して、広告タイアップで、ちゅ~る短歌を掲載してもらったのも、よかった。
ちゅ~る袋メインの記事を書いてもらえたことも。
今後の希望
ちゅ~る袋は、今後連載が続いて続編が発売されることになっても、継続して付けられるといいな……と思う。
そんなそんな。