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『小さな家の思想-方丈記を建築で読み解く』文春新書を出して⑫長尾重武

 少し時間が空きましたが、また幾つか、続けることが出来そうです。
 東大建築学科で同期だった友人から、次のようなメールが届きました。

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 返事が遅れ、申し訳ありませんでした。最初のメール連絡の後、早速書店に走り、本を購入したのですが、丁度その頃、読みかけの本があり、それに手間取りました。私の東大豊島寮時代の寮友、鶴石悠紀さんが書かれた5作目の空想科学小説「雀が墜ちる時」で、上下2刊、延べ1112ページの大作でした。

 さて、「小さな家の思想」ですが、「方丈記」・・若い頃に読んだ記憶はあるのですが、今回読んで、前半の災害の記載しか覚えていなかったようで、方丈庵についての長尾さんのご説明に「なるほど、なるほど」と感心するやら、自分の理解不足、不明を恥じるばかりでした。名文家の世捨て人だけではなかったのですね。長尾さんの学識の深さにより鴨長明の人と成が良く分かりました。

又、長明以降の「小さな家」の記述も説得力があり、特に芭蕉、良寛、北斎は私も関心のある人物で、大いに参考になりました。

それにしても、語り口が如何にも長尾さんらしい、大学の先生が学生に語り掛けるような文体ですね。長尾さんが方丈庵の間取りを平面図で示しておられるのを見て、昔、東大の太田博太郎先生から夏目漱石の「吾輩は猫である」を読んで、苦沙彌先生宅の平面図を示せという宿題を出されたのを懐かしく思い出しました。

最後に、蛇足ですが、5 大弐資通 と 6 蓮如 は順序が逆ではないでしょうか。

詰まらない指摘で、申し訳ありません。 今後もご活躍の程、祈っています。
    仲島 聰

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 嬉しいですね。ほとんど音信不通であった旧友から、思いがけないメールが届きました。他にもいろいろこうした連絡をいただき、ありがたいものだと思っています。

 この本の前に、彼が夢中で読んだ、の東大豊島寮時代の寮友、鶴石悠紀さんの空想科学小説『雀が墜ちる時』上下巻、なんと10000頁を超える大作、凄いですね。是非読んでみたくなります。

 そしてこれまた、著者が学生時代の東大豊島寮時代の寮友というのも素敵なことですね。長く豊かな交流に乾杯です。

 それから、「昔、東大の太田博太郎先生から夏目漱石の「吾輩は猫である」を読んで、苦沙彌先生宅の平面図を示せという宿題を出されたのを懐かしく思い出しました。」と書いておられますが、大学で建築学科に進学してすぐ、日本建築史の名講義があって、担当されていたのが、太田博太郎先生、でした。このレポート課題は本当に面白く、漱石の小説を読んで、その家の平面図を描け、というのですから、あらためて丁寧に読まなければレポートは書けません。

 そのレポートの講評の時に、行燈部屋を描いた奴がいるが、そういうのはダメだ。部屋には陽があたらなければならない。窓がなければいけない。そう言われたのが印象的でした。そして、今でも苦沙彌先生の家の図面はおおよそ描けると思います。
 
 建築を勉強すると、多分、空間的想像力というか、建築的想像力が身につくように思います。そうして、目の前にあるものも、ないものも、どちらも描けるようになるのでしょう。

 最後の彼の指摘は、気になっていたことで、ありがたい指摘です。かなり終盤になって気がついて、直したはずですが、間違いが残ってしまいました。
読めばわかるのですが、こういう過ちがあるのは、大欠陥で心から恥じていたところへ、軽やかに指摘してくださったことに感謝です。 そしてごめんなさい。 


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