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だって人生って計算どおりにはいかないでしょ

好きな人と出会ったのは、2月の末。
第一印象は
「この人めっちゃ営業トークみたいな話し方するなぁ、すごい仮面かぶってんなぁ」だった。
彼はその場を盛り上げるためににこにこと色々話していたけど、素性が全く見えてこなかった。

それからふとしたことがきっかけで、GWに二人で夜中に散歩に行った。
そこでいろんな話をして、彼は本性を出してきた。
共通の友人たちに思っている本音を、どろどろと話し出したのだ。

私は正直驚いたけど、みんなの前ではひたすら「いい人」を演じていた彼の素顔を初めてみて、「やっぱりあれは仮面だった」という自分の直感が当たったことと、私にだけ本性を見せてくれたことに少し喜びを感じていた。

そもそも私は、「ただのいい人」が好きじゃない。
愚痴も言わない、誰のことも一切悪く言わない人といると息苦しくなる。
だって誰だって他者に対して嫌だなと思うことはあるはずで、それを腹の中にためてる方が怖いから。だから相手が愚痴とかを言ってくれると安心する。
いい感じに性格が悪い人が好きなのだ。

だから、彼も人並みに性格が悪いことがわかって安心した。
仲間だ、と思った。

それからGWは毎日散歩に行ったりご飯に行ったりして、とても楽しかった。私も女の子にはとても言えないみんなへの鬱憤を、彼の前で晴らしていた。悪友のような存在だった。

みんなの前と私と二人の時、彼は声のトーンからして違った。
みんなの前では「いい人」を演じて、無理しているのがわかった。
だからこそ、「自分しか知らない彼の顔がある」ことに優越感と喜びを感じていた。

私は彼より1つ年上で、なぜかしっかり者のお姉さんと思われていた。
本当は全然そんなんじゃない私なので、積極的に相談したり頼ったりして、人としてもとても頼りにするようになっていた。
気も合ったので、単純に二人でいると楽しかった。

彼はとても頭が良くて計算高い人だった。
みんなの前で「いい人」のふりをするのも、人に気に入られるため。
話の端々に計算高さは現れていて、よく「それ俺になんのメリットがあるん」と言っていた。
そのたびに私は「メリットとかデメリットじゃないよ、経験の豊かさに繋がるんだよ」と話していた。
メリットとかデメリットで物事を考えたことがなかった私は、単純にそういう考えもあるのかと感心していた。

今思うと、そんな計算高い人が、感性で生きていてバカ正直で騙されやすい私に合うはずがなかった。


私がお土産を渡す時に添えた軽い一言を書いたメモを、彼は「かわいくて嬉しかった」と言った。
「◯◯からもらったメモはすぐ捨てたけど、momo.がくれたメモは大事に置いて毎日見えるところに貼ってる」と。
今思うとその日に話したこと全部、私の気を引くために計算されていたなぁと思う。

「◯◯からの誘いは行きたくない。でもmomo.から誘われたら行きたい」
「◯◯から毎日LINEが来るのがしんどい」
周りに女の子が多い彼への私の不安を打ち消していくように、
わざと一旦ほかの女の子を落とすことで私への特別感や好意を示していた。
私はそれにまんまと引っかかっていた。

だけど、あるタイミングで私は見切りをつけられてしまったようだ。

それまでの彼は本当に優しかった。
付き合ってもない人にあんなに優しくされたのは初めてだった。
今までならきっと、私がコロナになったと言ったらすぐに返事がきて
「大丈夫?何か買っていこうか?」と言ってくれていたはずだ。
だけど今、彼からの返信はない。
普通、優しい友達なら形だけでも「大丈夫?」ぐらいは言うはずだ。
それが彼の本性なのだ。


どのタイミングでそうなったのかはわからない。
長らく二人で話していないから真相はわからない。

だけど彼にとって私に優しくするメリットを失ったから、優しくする必要がなくなったのだ。
こんなにも手のひらを返すものかと怖くなる。

きっと今もみんなにはにこにこしている。
私にひと時だけ向けられた優しさは、特別なものだった。
それは全部、私の気を引くためのもので本当の優しさじゃなかった。 


たった数ヶ月の片思いだったけど、告白したくなるほどには好きにはなっていなかったのでまだギリギリ戻れるところだった。
思ったよりダメージは少ない。
それよりも久しぶりの片思いで、学びがたくさんあった。

だけど二人で夜中静まり返った街を歩きながら共に涙が出るぐらい爆笑し合った時の彼は偽りない本当の彼だったはずだ。
みんなの前ではあんまりふざけたりしないけど、私の前では彼はいつもふざけてばかりいた。
二人でアイスを食べながらどうでもいい話しをして笑っていたあの時間に偽りはない。

あの楽しかった時間はもう戻らないのだろうか。

彼とアイスを食べながら愚痴大会をすることはもうないのかな。
私が息苦しくなったとき、いつも彼に吐き出していた。
彼も同様に、私の前では素に戻って鬱憤を晴らしていたと思う。

彼もそういう風に感じていたはずだから、これからはきっと友達として仲良くやっていけると私は信じたい。そのためなら私は全力を尽くす。


だって、お互いを失うのは双方にとってデメリットが多すぎるから。
とても頭が良くて計算高い彼なら、わかっているはずだ。

けどそもそも人の感情は計算では動かせないし、人生のすべてがメリットデメリットだけでは量れない。

もしそのことに気付いていないなら、愚か者だ。

彼がもし愚か者なら、私には必要ない。

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