40 いまのはなし

 きりのいい数字できりのいい感じの日なので、「ここまでのはなし」に引き続いて、近況をつづる回にしようと思う。


 夏の真っ盛りでコミケもたけなわである。ぼくはコミケに出展したことがないが、休止中のぼくに代わって、作品を頒布委託しているサークルが、今まさに、コミケで作品を頒布している。


 「ドジョウ街道宿場町」の今田ずんばあらず氏は、「旅する小説家」というキャッチコピーを掲げて全国の創作同人誌即売会を飛び回っている。ひょんなことからブースで隣同士になったよしみで知り合い、ぼくの全国展開へのきっかけとなった書き手だ。一昨年の4月、彼と机が隣り合わなければ、ぼくは全国を遠征しようとは思わなかっただろうし、また現在のような知名度を得ることもなく、今以上に(資金以外のリソースが)困窮した書き手になっていただろうと思う。実際、ぼくの作品を積極的に読んでいただいているみなさんは、そのほとんどが彼よりも後に出会ったひとたちである。名実ともに、ぼくと彼はある種の不思議な縁によって互いに互いを高めあってきた。彼曰く「戦友」とのことだが、そのことば自体がぼくらの関係を端的に象徴している。


 彼の代表作は、3巻構成の文庫本として発刊されている長編青春小説「イリエの情景」である。ふたりの女子大生が、夏休みを利用して東日本大震災の代表的な被災地を旅するという内容のもので、被災地のその後を描く手法と、そこから主人公であるふたりの肖像と関係性に収束していく、マクロからミクロへと移り変わっていく景色は、壮大な交響曲を思わせながら、現代的でさわやか、そして様々なことに思いを巡らせられるような、非常に多面的な小説である。ぼくが彼に出会ったのは、まさに彼がこの作品を執筆していた頃で、これをいかに多くの人々に知らせていくべきか、ということを非常に深く考えていたことが印象的であった。実際、この「イリエの情景」の完成後、その洗練された広報戦略と様々な地方イベントに車中泊を繰り返しながら文字通り「旅」をし続ける、どこか泥臭さと執念すら感じさせる地道な全国行脚によって、「ドジョウ街道宿場町」は2年間で1000部以上の頒布を行うことに成功する。ご承知の通り、これは一次文芸を専門とするサークルにおいては途方もない数字であり、紛れもない確固たる実績である。


 その彼が、今まさに、東京ビッグサイトでぼくの作品をいくつか用意してくれている。ぼくの代表作であり、故郷浦安をイメージしたスチームパンク架空都市小説集「煤煙〜浦安八景〜」と、創作活動に行き詰まる思いを抱えたひとにのみ読むことのできるクソメソッド本「おもちくんメソッド 同人編」を彼に託している。どちらもぼくが出した本の中ではトップクラスの頒布力を誇るものである。逆に言えば、これ以外の作品はあまり手に取られる力が弱いということでもあるのだが。もし、一次創作畑に行くことがあれば、彼を探していただきたい。1500ページの辞書のような個人全短編集「あめつちの言ノ葉」が目印である。


 彼については、復帰予定作であり、まさにこの「あめつち」から多くの影響を受け続けている拙作「〇」にもいくつか書くつもりである。ぼくの復帰が近づいたら、しれっとまたそれについて書くかもしれない。

 休止中にぼく以外からぼくの作品を受け取る方法は、彼から頒布を受ける方法以外に、あとふたつのサークルについても存在するのであるが、それについてはもう少し本数を進めて、当該イベントが近づいてきたら、またはなしをしたい。

おすしを~~~~~よこせ!!!!!!!!おすしをよこせ!!!!!!!よこせ~~~~~~!!!!!!!おすしを~~~~~~~~~!!!!!!!!!!よこせ~~~~!