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叙情性と叙事性

写真は、写っているものが曖昧であればあるほど叙情的になりやすく、具体的であればあるほど叙事的になりやすい。
(叙情とは「感情や気持ちを述べしるすこと」叙事は「事実・事件をありのままに客観的に述べしるすこと」)
例えば、遠景の風景写真などは、どこか一点だけが具体的に写っているわけではないので、叙情的要素が入り込みやすい。対して、ストリートの人物などを近距離で撮った写真は具体的なので叙事的要素が強くなる。
また、カラーとモノクロについては、モノクロの方が色を無くした分曖昧になり叙情要素が加味されやすい。
そして、カリカリ鮮明に写っているよりはぼんやり滲んでボケたほうが叙情的になりやすい。
森山大道さんは、内在する自らの叙情性を排除して記録に徹することを目指しながら、モノクロ・アレ・ブレ・ボケという要素が否応なく叙情性を引き出してしまう矛盾を抱えていたのだが、ある時から路上スナップすることで自らの叙情性を確認しそれをシャッター音とともに道端に捨てて身軽になっていくすべを獲得したのではないかと想像している。

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