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子どもたちのためにできること

児童養護施設や里親のもとで育った子どもたちの自立を支援するある方から、「私のバイブルです。何度も何度も読み返しています」といって紹介された一冊の本があります。
『児童養護施設施設長殺害事件 児童福祉制度の狭間に落ちた「子ども」たちの悲鳴』
東京都渋谷区にある児童養護施設の施設長を元入所者が刃物で刺殺した事件を著したもので、記憶には残っていましたが、その後も凶悪で悲惨な犯罪や事件が相次ぎ、時間の経過とともに薄れつつありました。

元入所者は逮捕されたものの、心神喪失を理由に不起訴となりました。遺族の「真相を明らかにしてほしい」との願いから、不起訴決定をめぐって検察審査会に異議申し立てを行い、一旦は「不起訴不当」の判断が下され、検察による再捜査が行われたものの、再び不起訴の判断が決定されています。結果的に、真相は明らかにされていません。事件そのものは記憶にあっても、その後の経緯は恥ずかしながら承知していませんでした。おそらく、ほとんどの人たちが私と同じかもしれません。

遺族の異議申し立ては、「厳罰を望むものではなく、あくまでも真相を明らかにしてほしかった」という一念に尽きます。「なぜ殺されなければならなかったのか、その背景には何があったのか」「元入所者の退所後のアフターケアはどうなっていたのか、それがいかに難しいことなのか」「その難しい課題に施設長はどれだけ本気で向き合ってこられたのか」等々、ややもすれば、それら全てが真相とともに埋もれてしまいます。紹介された本は、埋もれかけていた真相に光を当てる大変意義深い一冊でした。

私はnoteで、現在国会で審議中の『児童福祉法等の一部を改正する法案』について以下のように書いています。
「児童養護施設や里親家庭で暮らす若者の自立支援の年齢制限を、現行は原則18歳(最長で22歳)が上限ですが、年齢で区切ることなく、施設や自治体が自立可能と判断した時期まで支援を続けるというもの。これまでも最長22歳としながらも、ほとんどが18歳で自立を余儀なくされ、自立するはずが孤立してしまうケースも少なくなかっただけに、実効性を伴うことが求められています。現状に対応しようと法律が改正されることは望ましいことなのですが、予算や人員の確保、専門性の向上が追いつかずに『絵に描いた餅』に留まっている例も少なくなく、受け皿の整備は急務です」
https://note.com/s_kohyama/n/n3bbf3fd6b7cf

このような悲劇を繰り返さないためにも、法律の改正を待つだけでなく、私たちが社会としてやらなければならないことはたくさんあります。施設長の、ただひたすらに子どもたちの幸せを願う、その気持ちに報いるためにも、改めてそのことを深く胸に刻みました。

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