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減少する『こうのとりのゆりかご』利用者

『こうのとりのゆりかご』について2021年度の利用状況が明らかになりました。昨年度、ゆりかごに預けられたのは2人、2007年5月の開設以来最も少ない件数でした。15年間の累計は161人、熊本市要保護児童対策地域協議会代表者会議で報告されたものです。昨年度少なかった理由として、熊本市は全国の相談体制が充実してきたことを挙げていました。そうであれば望ましい方向だと思います。ただし、慈恵病院に寄せられる相談件数は相変わらず高水準であることを考えれば、一概に言えないのかもしれません。全国に寄せられる相談内容と慈恵病院に寄せられるそれらとを比較し、分析する必要があると思います。

https://news.yahoo.co.jp/articles/1b14ac09902ad8539626eb98eb5e2a1afcd9fc29

また、昨年度の預け入れも4件と少なかったことから、コロナの影響はどうなのか。内密出産制度を慈恵病院が独自で導入することを宣言し、今年に入り実際にその制度のもとで出産した女性も現れてきており、その影響はないのか。さまざまな角度からの分析が必要になるでしょう。

報告された内容で私が注目したのがゆりかごを利用した2人とも、預け入れの状況がある程度明らかになっていること。「1件は預け入れから1カ月以上後に父母らが接触。1件は父母等からの手紙が残されていた」とありました。ゆりかごは匿名でも預けることのできる施設ではありますが、なるべく手がかりを残すように、熊本市から慈恵病院に求め続けてきました。匿名でも預け入れはできますが、全く匿名というわけでもない、そんな施設なのです。

一方、内密出産制度は、ゆりかごから派生して生まれた制度であることはこれまでも言及してきました。ゆりかご同様ドイツに習い、慈恵病院が独自に運用を始めたその制度は、女性が病院にだけ身元を明かして出産し、後に子どもが望めば出自を知ることができるという仕組みです。一定期間ではありますが、匿名は保たれることになります。ゆりかごに影響を与えているに違いない、私はそう考えています。

ゆりかごには一切関与してこなかった国が、内密出産制度についてはガイドラインの作成を表明し、協力姿勢を示しているようではあります。そんな国の示すガイドラインとは一体どんなものなのか、実際に利用しやすくなるのか、慈恵病院との間で基本的な認識のずれがないのか、私はその点を注目しています。
子どもが望むまでの間、女性の身元・個人情報の取り扱いを一病院が担うことには無理があり、国なり自治体なりが責任を持って保管・管理する、それがあるべき姿なのでしょう。

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