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離婚クーリングオフ制度の懸念

厚生労働省『人口動態統計』によれば、2020年の国内の婚姻件数は約53万件。最多だった約110万件(1972年)の半分以下となっています。一方、2020年の離婚は約25万件。最多の約29万件(2002年)に比べればやや減少傾向ではありますが、婚姻数減少との兼ね合いでは、依然として高い水準にあることに変わりありません。

私の周囲を見回しても、離婚は決して珍しくなくなってきました。離婚に至った経緯や思いは人ぞれぞれ、事情を聞いた上でも子どものことを考えると「なんとかならなかったのか」と思う時があります。しかし、我慢して婚姻関係を続けることが幸せとも言えず、プライバシーに深く関わるとても難しい問題です。

この対策の一つとして中国には『離婚冷静期制度』があることを知りました。別名『離婚クーリングオフ制度』。中国でも、婚姻件数がピーク時の4割減と大幅に減少しています。見直されたとはいえ『一人っ子政策』と相まって、人口問題は深刻です。

2021年から導入された同制度は、離婚届を提出した後、30日後に再び『離婚証』の発行という手続きを行わなければ、自動的に離婚手続きは取り消されるというもの。衝動的な離婚を減らすことが目的だそうです。実際に制度導入後、離婚件数は4割ほど減少したとのことで、衝動的な離婚を減らすという目的は達成されているようです。一方では問題もあり、クーリングオフ期間であれば、片方の意思でキャンセルすることも可能で、例えばDV被害などからも逃げにくくなるという深刻な問題もはらんでいます。

衝動的な離婚を減らすという名目の先には人口問題があり、人口減少を食い止めることで、国力の増強を図ろうとする国家の意図が透けて見えます。いわば国家のために個人の自由や権利が制約を受ける形です。

日本もやがて憲法改正の議論が始まるのでしょうが、憲法第12条、13条にある「公共の福祉」の範囲も重要な焦点の一つになるでしょう。自民党憲法改正草案では「公共の福祉」が「公益及び公の秩序」と変更されています。日本の憲法問題に中国の極端な政策を引用するのは適当ではないのかもしれませんが、国家と個人、国益と人権、その関係性について、私たちの問題として捉えるひとつの事例になるのではと考えました。

中国の『離婚冷静期制度』、個人の心情に国家からそこまで踏み込まれたくはないですし、それが人口対策であるとすればなおさらです。私には違和感でしかありません。

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