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相談する力、聞く力

もし、あなたが「誰にも知られたくない秘密」を抱えていて、
「誰かに相談しなければどうにもならない」というところまで
追い詰められたとしたら……、どうしますか?

親や兄弟姉妹、親しい友人など、身近な誰かには相談できない。守秘義務を遵守してくれそうな役所や警察、弁護士等の公的機関に相談するには、敷居が高くて、なかなかそこまでたどり着かない。誰かに相談するのも簡単なことではありませんよね。

なぜ、そんなことを考えたかというと、今日も先週末と同様に、今春から児童養護施設や里親のもとを離れて自立する人たちを対象とした『巣立ちセミナー』の最終回にボランティアとして参加したからです。前回も紹介したように、このセミナーの主な目的は、金銭問題や職場でのトラブルなど、自立後に生じるであろうさまざまな問題の解決策を見出すというより、『決してひとりで抱え込まずに誰かに相談する習慣』を身につけてもらうことにあります。

また『こうのとりのゆりかご』に関する話になりますが、『ゆりかご』の設置を許可した際、「設置はされても使われない方が望ましい。まずは相談を」と『ゆりかご』を運営する医療法人側に24時間体制の相談窓口を求めるとともに、県や市の行政機関においても同様の相談窓口を設置しました。『ゆりかご』という象徴的な存在があるからか、全国から多くの妊娠や出産に関する相談が寄せられることとなり、一人で悩みを抱えている女性がいかに多いかが明らかになりました。それは15年目を迎えた今も変わることはなく、その相談のほとんどは行政ではなく医療法人が設置した窓口に集中しています。

岸田首相は『聞く力』といいますが、高いところから「遠慮なく言ってください。聞きますから」と言ったところで、ほとんどの人が遠慮をするか、本音を話すことはないでしょう。『聞く側』と『話す側』に信頼関係がなければ、そのやりとりは形式的なものとなり『聞く側』の自己満足で終わってしまうこともよくあることです。そして、聞いたあとが大事であることは言うまでもありません。たとえ本音を聞けたとしても、聞き置くだけで終わってしまえば、2度と本音を引き出すことはできなくなるのでしょう。

『相談する側』においては、勇気をふりしぼる力が求められ、『相談される側』においては、個人としても体制としても、もっときちんと受けとめることのできる力が必要なのだと思います。子どもたちに「もっと大人に相談しなさい」と勧めるからには「まずは私自身が相談される力をもっと持たないといけないなぁ」と、あらためてそんなことを考えさせられた今日のセミナーでした。

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