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変革の時代~子どもたちに『よりよい環境』を

熊本県の有明海と八代海には、まるで宝石箱のように美しい大小の島々が点在しています。それら天草諸島と九州本土とを結ぼうと、1966年には『天草五橋』が完成し、5本の橋で、大矢野島、永浦島、池島、前島、天草上島が繋がりました。その内の1本、宇土半島と大矢野島とをつなぐ1号橋を渡り、しばらく行くと児童養護施設『みどり園』があります。縁あって、以前から時折立ち寄っては、園内の子どもたちの様子を伺うようにしていました。そして数年前から、同園を運営する社会福祉法人の評議員を勤めることとなり、今日は年に一度の評議員会に出席するために、久しぶりに1号橋を渡りました。

園内の40人の子どもたちの内訳は、認定子ども園および園内保育児7人、小学生14人、中学生11人、高校生等8人。会議の終わる午後3時頃には、ランドセルを背負い、体育帽子を被った、おそらく小学校低学年の子どもたちが元気に帰って来る様子が、窓から見えました。その後には中学生から高校生と、順に帰ってくることになります。

現在、児童養護施設も含めた社会的養護は変革の真っ只中にあります。欧米諸国に倣い、子どもたちを「施設からより家庭に近い環境へ」と、従来の施設での養育から、養子縁組も含む里親家庭と小規模施設とに移行することで、それぞれ3分の1を目標に進められようとしています。実際に、同園でも、施設の一部をユニット化したり、地域の空き家を借りて小規模化を図ったり、里親支援員を置いて里親候補を開拓することなどに取り組んでおられます。

ここに来て、話を聞いたり、子どもたちの様子を見たりしていると、そうした行政の方針は、方向性としては正しくても、進め方を誤れば問題が生じてしまうことを実感します。もちろん、里親はもっと増やした方がいいし、小規模化の方針も理解できる。ただ、設定された期限内に目標を達成しようとすると、無理が生じ、歪みが生じることになります。スタッフの育成が追いつかない中で無理矢理小規模化を進めたり、里親としての準備が伴わないうちに里子を引き取ってしまうようなことになれば、誰のための改革であるのか、その原点が置き去りにされてしまい兼ねません。

同園の子どもたちのほぼ100%が就職し、措置延長なしに自立しているとのこと。地域性もあってか、施設による違いをあらためて感じました。同園には広々とした敷地があり、周囲は山々に囲まれ、近くに漁港もあります。長年にわたり、それこそ天草五橋のつながる前から、この園から多くの子どもたちが巣立っていきました。「子どもたちにとってよりよい環境とは?」この園を通して、これからも考えていくつもりでいます。


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