新技術『自己治癒コンクリート』
ある経済専門のTV番組で紹介されていたのを観て、『自己治癒コンクリート』の存在を初めて知ることになりました。コンクリートにバクテリアを配合することで、例えば小さなひび割れ(スラック)が生じても、人がケガをしても『かさぶた』ができて、自然と治癒するような効果が働くとのこと。その技術はコンクリートだけでなく、アスファルト舗装にも応用が可能で、維持管理費の抑制だけでなく、排出ガス削減効果も期待されると注目を浴びています。また、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録されたそうで、これから公共工事全般にも普及しそうです。実際にどの程度普及するのか、そして効果が生まれるのか、注目したいと思います。
コンクリートと聞くと「コンクリートから人へ」を思い出します。政権交代を果たしたばかりの民主党が、2009年度のマニュフェストに掲げた政策のひとつ。政策や予算の優先順位を決める政治において、大型公共工事(コンクリート)ではなく、人(教育や福祉等)を大事にしたいとの宣言でした。中身がどこまで伴っていたのかはさておき、当時はそれなりに多くの人の共感を得ることになりました。ところが、東日本大震災があり、その後「コンクリートも人も」と切り返され、政権を失うことになります。確かに、ひとくちにコンクリートとは言っても、防災や身近な市民生活を支えるインフラもありますので、「わかりやすさで共感を得たものは時として逆襲を受けやすい」一つの典型的な例なのかもしれません。
もちろん二者択一のような単純な話ではないにしても、「コンクリートから人へ」に懲りたのか、現在も続く建設ラッシュを見ていると、維持管理費用の確保はできているのだろうかと心配になります。選挙の際は、有権者を惹きつけようと、公約に「〇〇を造ります」を散りばめることになります。「維持管理をしっかりやります」を前面に打ち出したところで「そんなの当たり前」と、ほとんど見向きもされないでしょう。ところがこれまで、コンクリートの劣化や老朽化による橋梁の崩落や、ドンネルの剥落事故などはときどき発生し、最悪の場合は人命を奪うことだってあります。何か大事故が発生すると、国からの指示もあり、緊急点検と称して一斉に確認作業が行われますが、その後も緊張感を持って継続されているのかは疑問です。
言うまでもなく「コンクリート=悪」ではなく、また一定の経済波及効果を狙って「何でも造ればいい」というものでもありません。費用対効果や優先順位、環境に与える影響等に加えて、将来的に発生する維持管理費用もしっかりと考慮した上で、必要なものは造る、そんな当たり前のことを忘れないようにしたいものです。
そんなことに繋がる新技術『自己治癒コンクリート』であることを期待したいと思います。
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