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環境の時代へ~鉄道イノベーション

ドイツのベルリンでは、世界各国の鉄道関係者が集う世界最大の鉄道イベント『イノトランス』が開催されています。2年に一度がコロナの影響もあり4年ぶり開催とのこと。「会場をぐるりと回れば鉄道業界の進む方向が見えてくる」との触れ込み通り、特集記事などで内容を知れば知るほど、日本国内との違いをまざまざと見せつけられたような気がしました。

元々、鉄道輸送割合の高いEU(欧州連合)は、2050年までの温室効果ガス実質排出ゼロ達成を目標として掲げ、自動車や航空機から鉄道へのシフトを促すべく高速鉄道網の整備や鉄道貨物輸送の強化策を次々と打ち出しています。言うまでもなく交通は、温室効果ガス排出量の多い分野の一つであり、自動車や航空機に比べると鉄道は一人当たり排出量が圧倒的に少ない輸送手段だからです。

一昔前までは、高速鉄道といえば、日本は新幹線を前面に鉄道技術では最先端ともいわれていましたが、現在では、ドイツを始めとしたEUの企業や、中国の台頭も著しいようです。
例えば、ドイツの電機メーカー『シーメンス』は水素燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッド車両を展示。2024年にベルリン郊外での運行が計画されています。水素燃料電池車両で先行していたフランスの鉄道車両メーカー『アルストム』は、今回のイノトランスでも水素燃料電池や蓄電池を搭載した電車を公開し、水素燃料電池車両の分野で両雄が並び立った形です。また、スイスの『シュタドラー』も水素電池列車を、ポーランドの『ペサ』も新開発の水素燃料電池機関車をそれぞれ公開しています。鉄道の時代は「スピード競争より環境」へと時代は変わったと言われています。

日本勢も日立が電気、ディーゼル発電、および蓄電池を組み合わせた3モード車両『ブルース』を展示。電化区間では架線からパンタグラフを通じて電気を取り込み、非電化区間ではディーゼルエンジンが発電した電気を使って走行するというものです。また水素燃料電池車両にも無策というわけではなく、JR東日本が現在試験運行を行っている水素燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッド車両『HYBARI』のプロジェクトに参加しています。

日本における高速鉄道は、先日、西九州新幹線が部分開業し、リニアモーターカーも開業に向けた建設が進んではいるものの、国土の面積や平地が少ない地形からいっても、鉄道需要には限界があるのかもしれません。それでも、技術開発の面では、今後も世界をリードし続けるような存在であることを期待したいと思います。

そして、これまでこのnoteで何度か取り上げてきたローカル線等に、それらの技術を応用することで、環境面はもとより、地域振興やQOLの向上につながることを心から期待しています。


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