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ザ・加藤伸吉・アンソロジー(7)直近の仕事の話、そして「バカとゴッホ」の始まりを振り返るの巻

またしても、ずいぶん間隔が空いてしまいました。編集側の都合です、すみません!
今回は、その間に動いた加藤伸吉の最新作品のお話と、そして傑作『バカとゴッホ』についてお話をしていきます。

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*表紙イラストを担当した「最新作」発売中!*

トキタ:3人で話すの久しぶりになっちゃったけど、その間もnoteの読者さん、じわじわ増えているようで、嬉しいですね。そして、このnoteがきっかけで、新しい仕事も!徳間文庫の新レーベル「トクマの特選!」の第一弾で、かんべむさし『公共考査機構』のカバーを描くという。

加藤:そうなんですよ。このnoteが窓口になったのがうれしいです。

大須賀:「ここに連絡してよろしいでしょうか」って、note経由で打診をいただいて。無事まとまって、先日の出版時には大型書店で平積みになっていたり、店頭キャンペーンでカバー画がポスター展示されたり、嬉しかったですねー。

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トキタ:いやーおめでとうございます!

大須賀:ね、おめでとうございます!ほんとよかった。結構時間かかったんですか?

加藤:かかりましたよ。まず僕のラフが出来るまで時間かかった。そのあとは先方のご要望も二転三転したり。これは必ずあるんですよね。最初の案で一発OKって、まずないからね。喧々諤々やって、かなり気まずくなったりして、で、最終的に一発目のが一番良かった、とかなるんですよね(笑)

トキタ:そうそうそう。あれこれやるけど結局…っていうね。でも、やっぱり最初に仕事するときって、試したくなるっていうのもあるんですよ、依頼側からすれば。違う引き出しもあるんじゃないかっていう。でもやっぱり最初に本人から出てきたのが一番良いってなりがちなんだよね。

加藤:そうなんだよね。実際、そうなったよ(笑)。今回は新レーベルの立ち上げということもあって、先方も発注段階ではまだ固まっていない部分もあっただろうし。あとまぁ、僕の絵柄は分かっているだろうけど、人としては初対面だから。「はじめまして」から、話し合っているうちに色々、こいつだったら違う絵もかけるんじゃないかとか。人を見て考えが変わるっていうのも絶対あるだろうし。

トキタ:そうそう。結局人だからね。作品って、人と人との関係性の中で落ちてくるものなので。それはよくわかりますよ。

加藤:そうだよねー。最終的にはスケジュールギリギリになって、入稿までかなりバタバタしました。

大須賀:おつかれさまです!(笑)

トキタ:でも締め切りがないと仕事って着地しないからね、どこかで諦める時点がないと。

加藤:そうなんだよね。時間がないって味方だなと。最終的に良い仕事になってよかった。

トキタ:あれは店頭で目を惹きますよ!

*猛獣と猛獣使い、のお話*

加藤:それにしても、おふたりは僕のような「猛獣」を使う側でしょ、よくやっているなぁって思いますよ。作家とかクリエイターと仕事するの、大変でしょ。

大須賀:んー、まぁそうですねー。

トキタ:クセのある人しかいないよね(笑)。でもね、そういう人じゃないと作品なんて世に出せないですよ。そういう人のものでないと、商品にはならない。そのクセがあってこそだから。だから、クセごと付き合わないといけないと思ってる。

大須賀:そうだよね。まぁでも、長いこと仕事してると、たとえば大企業の社員だって、創造性の高い人はクセが強いですよ。アーティストとはクセの種類が違うだけで。だから結局、何かを創ろうとする人って誰でもなんかしらクセあるんだろうなと。そういう人と仕事するから面白いんだと思うし。

加藤:僕はほら、動物やってる側だから(笑)いい飼育者みたいな人が現れてくれないとだめなんですよ。いいところで鞭打ってくれないと。コース外れたりするし。

大須賀:でも、鞭打ってほしくないところで鞭打たれるとむかつくんだよね(笑)

加藤:そうだねー

大須賀:そこが難しいところですよね(笑)

*さあ、「バカとゴッホ」の話を!*

大須賀:さて、ここからはついに『バカとゴッホ』の話をしましょう。僕、ホントにこの作品好きなんです。

バカとゴッホ:初出はそれぞれ、『モーニング』’97年35号、『モーニング新マグナム増刊』’98年2号~5号、’99年6号~11号、2000年12号、13号、15号

トキタ:これは、加藤くんとしては異色作だよね。その前後の作品を読んでいても、ここだけ違う空気が流れている気がする。

加藤:うん、そうだね。この作品は他の作品とちょっとだけ読者さん層が違う気はしますね。「カトシン熱い!」みたいなレビューを見かけたり。自分では、いや、熱くないんですよ、っていう感じなんだけどね。『バカとゴッホ』だけ別な空気が流れている、というのは、確かにそういう気はする。

大須賀:まず経緯から。これは、最初から連載として企画されたんですか?

加藤:いや、最初は読み切りの短編。

大須賀:やっぱり。第一話は完結感ありますもんね。起承転結あって、最後「おしまい!」的な。

加藤:うん、そうそう。連載化以降よりページ数も少し多いしね。

*最初は「ビートルズとゴッホ」だった!*

大須賀:これって、さっき異色作っていう話あったけど、「青春モノ」「学園モノ」ですよね。これは加藤くんから?あるいは編集側から?

加藤:これはねー、最初はすごくシュールな短編を考えていたんですよ。ビートルズとゴッホが出会っていたら、っていうのを考えついて。

トキタ:ん?ん?

加藤:あのメンバーを、ゴッホと会わせてしまったらどうなるんだろうって。

大須賀:あ、SF的な設定として?

加藤:だから、ファンタジーだよね。異世界の中であの5人が会ったらっていう。タイトルなんかはそこから始まっているんだよね。

大須賀:えっと、ついていけてないんだけど(笑)、本物のビートルズと本物のゴッホが出会ったら、という話を考えた、と言ってるんだよね?

加藤:うん、そう。

大須賀:うわぁ…すごいですね。僕なんかは凡人だから、こういう、バンドをやっている高校生の物語って、加藤くんの…個人的エピソードではないにせよ、設定とか物語は自分の体験から発想したものだとばっかり思っていたんだけど、全然違うんだ。すごいですね。

トキタ:それで、そこからどうやってあのカタチに?

加藤:まず、ビートルズからポールとリンゴを引いて考えたんだよね。ジョンとジョージを残して、そこにゴッホが絡んでいくという。で、だんだん今のカタチになっていったということなんだよね。

大須賀:えーと、それは、えーと…訊きたいこといっぱいあるよ(笑)
ポールとリンゴを引いたのは、登場人物を整理しないと話が複雑になり過ぎるとか、そういうテクニック的なこと?

加藤:それもあるし、んー、その当時の情報ではビートルズの解散はポールの暴走のせい、っていうのがあって、それを踏まえて、ビートルズ解散後にジョン・レノンが『イマジン』を創っているときの、ジョンとジョージのあの関係性のイメージがあったのかな。

ジョン・レノンの『イマジン』セッション:ビートルズは1970年に解散。直接的なきっかけの1つがバンドのマネジメントを誰に任せるか、という問題で、ポール対ジョン・ジョージ・リンゴ、という構図で対立。ソロアルバム『マッカートニー』の発売インタビューでポールが(結果的に抜け駆けのように)解散を対外的に公式発表したこともあり、この時期はポールが悪者とされていて、そのイメージは(ヨーコ犯人説と並び)わりと最近まで持たれていた。数々の映画などでも見ることが出来る1971年のアルバム『イマジン』のセッションでは、ジョンとジョージがポールへの当てこすりのようなことを言って盛り上がっているシーンも多く、ポールを攻撃する曲『How Do You Sleep?』を一緒に演奏するなどしている。

大須賀:そういえば冒頭、4人組のバンド『ムーズムズ』から2人が抜けて、主人公の堺と正二が残されるわけですけど…『バカとゴッホ』の着想にビートルズのイメージがそんなに濃厚にあったとは、驚きました。そのSF・ファンタジー的な世界観が学園モノになっていくっていうのはどこから?

加藤:それは、やりたかったんだよね。時系列的には、単行本に収録されている短編が先にあるんです。そのシリーズの新バージョンというか、それを描きたいと。

単行本に収録されている短編:2000年刊の「バカとゴッホ」単行本第1巻に収録された、「イサムダイアリー」と「My Mhz マイメガヘルツ」。この2作は加藤伸吉ならではのファンタジー/SF的な設定・世界観と甘酸っぱさのあるリアルな青春物語が絶妙なバランスで、ファンも多い。

トキタ:ビートルズ×ゴッホ、というSF的なコンセプトというかイメージと、青春モノという当時加藤くんが取り組んでいた世界を合体させたということ?

加藤:うん、そうなんだよね。だから、あの短編の集大成みたいな感じで描いたんです。

大須賀:なんか、いきなり想定外すぎてすごい話ですね。では次回はこの続きを!

<続く>

#マンガ #漫画 #加藤伸吉 #バカとゴッホ

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