全社で大規模スクラムを導入してみた話

メディカルフォースCTOの畠中です。

メディカルフォースはシリーズBの資金調達を行なったバーティカルSaaSの会社です。ここまで、会社の拡大を経験する中で色々と学びがあったので記しておこうと思います。

以下目次です。


直近一年で利用してくださるお客様は倍増、一緒にプロダクトを育てる仲間もたくさん増え、拡大期の渦中で一層スピード感を出して仕事をしようとしているのに、俯瞰してみるとなぜかスピード感がない。「みんな頑張っているのに、なぜかスピード感がない」という鬱々とした悩みがずっとありました。

ご存知の通り、スタートアップにとってスピード感がないというのは致命的です。人も少ない、使えるお金も少ない中、市場を生き抜き、なんなら市場で勝とうとしているので並大抵のスピードではできません。

さらにSaaS企業にとって市場を独占するということが最重要な中、競合は日々たくさん生まれ、時には大企業を相手に戦わなくてはいけません。他のプロダクトと差別化しようと機能を新開発しても半年後にはパクられて終わりです。

そんな中、プロダクトで勝とうとすると常に第一線でプロダクトに新機能を乗せ続けないといけない、つまりスピードで差別化するしかないわけです。

スピード感とは

会社にとって「スピード感」というものをあえて定義するとするなら「ミッション/ビジョンにどれだけ速く近づけたか」だと思います。

当たり前の定義になってしまいましたが、逆を考えると結構難しくて「ミッション/ビジョンに沿わないことをやる」「ムダな仕事を生んでしまう」「そもそもミッション/ビジョンが明確ではない」みたいなことは普通に仕事をしていたらやってしまいます。

経営として、上記のような失敗をしてしまった場合、どれだけ個人個人がスピードを持って仕事をしても、会社として"速度"そのものは速くなっていてもスピード感というものは失われてしまうと思います。

メディカルフォースでも直近はそのような失敗をやりまくってしまいました。そんな中「ミッション/ビジョンにできるだけ速く近づく」には、以下の3つが大切なのではないかというのが今の僕の結論です。

  1. ミッション/ビジョンを明確にすること

  2. ミッション/ビジョンに沿っていない時はすぐに軌道修正する

  3. ムダなことはできるだけやらない

やはり「アジャイルに、リーンに、明確なゴールに向かう」という結論です。何度も書籍などで目にする結論ですね、、、しかしこれを経営として実践するのはなかなか難しいと思います。

明確なミッション/ビジョン

まずはゴールを明確にすることが根本だと思います。軌道修正するにせよ、ムダを省くせよ、ゴールが明確じゃないとそもそも何が正しくてどう変えれば良いのかわかりません。

メディカルフォースでは、ミッション/ビジョンを早くから決めていました。

「大前提からのやり直しで時間がかかる」「今更、経営陣の間で向かいたい場所がそもそも違うことに気付く」みたいなことがなかったのはかなり良かったと思っています。ミッション/ビジョン策定のタイミングは重要だと思います。

また僕たちはミッション/ビジョンを四半期に一回見直しています。ミッション/ビジョンを通じてやりたいことは個人ごとにもちろん違うものの、共通点をよりシャープに言語化しミッション/ビジョンに昇華としていくというプロセスにより、ゴールが毎度明確になっている感があります。

さらなる拡大をする中で特にマネージャーにはミッション/ビジョンに共感してもらい、信じてもらうこと、それによって大きくなっても誰にとってもゴールが明確になるようにすることはこれからの課題だと思っています。

アジャイルに、リーンに、

「ミッション/ビジョンにできるだけ速く近づく」ために、「アジャイルに、リーンに、明確なゴールに向かう」にはどのようにすれば良いのでしょうか。

  • ミッション/ビジョンに沿っていない時はすぐに軌道修正する

  • ムダなことはできるだけやらない

ができれば良いわけなので、「ミッション/ビジョンに沿っているのか」「ムダはないか」を常に問い、もし答えがNoなら都度アクションをとれば良いということです。

全社会議で説明した時の画像

これをもう少し抽象化すると、適宜「検査」と「適応」を繰り返せば良いわけなのですが、「検査」をするにしても実際に各チームがどのような仕事をしているのかがきちんとみれる状況にする必要があります。

まとめると「透明性」が高い状態を社内で保ち、「検査」と「適応」を繰り返す必要があるというのが結論になりそうです。

ここまでくるとピンとくる方もいるかもしれませんが、実はこの「透明性」「検査」「適応」はスクラムの三本柱です。

スクラムとはスクラムガイドによると以下のように定義されています。

スクラムとは、複雑な問題に対応する適応型のソリューションを通じて、⼈々、チーム、組織 が価値を⽣み出すための軽量級フレームワークである。

https://scrumguides.org/docs/scrumguide/v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf

さらに

スクラムは「経験主義」と「リーン思考」に基づいている。経験主義では、知識は経験から⽣ まれ、意思決定は観察に基づく。リーン思考では、ムダを省き、本質に集中する。 スクラムでは、予測可能性を最適化してリスクを制御するために、イテレーティブ(反復的) でインクリメンタル(漸進的)なアプローチを採⽤している。スクラムを構成するのは、作業 に必要なすべてのスキルや専⾨知識をグループ全体として備える⼈たちである。また、必要に 応じてそうしたスキルを共有または習得できる⼈たちである。 スクラムでは、検査と適応のための 4 つの正式なイベントを組み合わせている。それらを包含 するイベントは「スプリント」と呼ばれる。これらのイベントが機能するのは、経験主義のス クラムの三本柱「透明性」「検査」「適応」を実現しているからである。

https://scrumguides.org/docs/scrumguide/v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf

という記述があります。

スクラム導入

というわけで、メディカルフォースでは半年ほど前から全部署・全チームにスクラムを導入することにしました。

スクラムの定義については前述した通りなものの、もう少し具体的に書くとスクラムには複数の役割を担う人を任命した上で、複数のイベントを一定期間(スプリントと呼ばれます)で繰り返す、というフレームワークです。

まず役割についてですが主に3つの役割が必要です。スクラムガイドは開発者向けなので、もう少し汎用性のある形に直すと

オーナー: チームから⽣み出される価値を最⼤化すること の結果に責任を持つ。具体的にはチームで何を行うのか、さらにはその優先順位を決定する。

スクラムマスター: スクラムを確⽴させることの結果に責任を 持つ。具体的にはチームが価値を生み出すことに責任を持つ。

メンバー: インクリメントの あらゆる側⾯を作成することを確約する。具体的には実際に価値を生み出す。

といった役割です。
開発チームでいうと、プロダクトマネジメントをするのがオーナー、プロジェクトマネジメントをするのがスクラムマスターといったイメージでしょうか。

さらに代表的なイベントについては以下です。

デイリースクラム: 日々の進捗に関してチーム内で自律的に「透明性」を高め、「検査」および「適応」を行う。

プランニング: 次のスプリントで行う内容に関して、何を行うのかの「透明性」を高め、「検査」および「適応」を行う。

レトロスペクティブ: 前回のスプリントのプロジェクト的な側面について「透明性」を高め、「検査」および「適応」を行う。簡単にいうと、KPTなどを書いて振り返りをする。

スプリントレビュー: 前回のスプリントで生まれた価値に対して「透明性」を高め、「検査」および「適応」を行う。

これらの役割とイベントを社内の全チームに導入することにしました。実はそれだけでは全社でスクラムを回すことはできず、さらにScrum@Scaleというフレームワークを導入しているのですが、長くなってしまうので今回は割愛します。興味のある方は以下を読んでみてください。

スクラム導入の「検査」

良い機会なので、メディカルフォースで大規模スクラムを導入してみた結果について検査したいと思います。

良かった点ですが、

  • アジャイルさが明確に上がった

  • ムダな業務が減り、リーンさが上がった

  • 各チームにチーム感が生まれた

というように、狙いであった「アジャイルさ」「リーンさ」は明確に向上した感覚があります。例えば
「とある機能を開発した方が良いのでは、という意思決定の次の週には開発チームが開発に取り掛かりながら、営業チームが資料を作り、CSチームが現場への落とし込みの方法を考え、マーケチームが昨日リリースの告知準備をして、2週間後には開発完了、リリース告知、営業/アップセル開始ができる」
といったことが実現できるようになりました。

またチームに対して明確な役割や意義が生まれ、チームとしてのモメンタムが高まり、チーム感が生まれたことも非常に良かったと思います。

逆にこれからの課題として

・定常業務(商談や顧客からの問い合わせ)により、さける工数の不確実性が高いチームもある
・イベントに強制的に時間を割く必要があるため、チーム全員が揃うべき時間を一定設けないといけない

といったものがあります。

これらに関しては適切なチーム分割やチームごとにどこまで厳密にスクラムを行うかを適応していく必要があると思っています。

まとめ

拡大期に創業期のスピード感が失われていくという問題は珍しい話ではないのかなと思います。メディカルフォースでも、メンバーの数やスピード感は上昇しているのに何故かスピード感が失われていくという経験をしました。

スピード感とは「ミッション/ビジョンにできるだけ速く近づく」ということであり、そのためには「アジャイルに、リーンに、明確なゴールに向かう」ことが必要そうであるというのが一旦、今の僕の結論です。

それらの課題に対してメディカルフォースでは大規模スクラムを導入した結果、チームによって良し悪しはあるものの、スピード感は明確に上がりました。

僕はもっとたくさんのメンバーでスピード感を持って仕事ができれば絶対に大きい会社を作れると思っています。なので是非一緒に働きましょう!!!!

採用のことでも大規模スクラムのことでもなんでもお話しするので気軽に連絡をいただけると嬉しいです!

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