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とあるゲーム音楽好きの『MEGALOVANIA』に対する複雑な感情

 どうも、S(h)inと申します。

はじめに

 読者の方々にはゲームについて、ゲーム音楽について多少の知識がある前提でこの記事を執筆しております。ですので、世間的に認知の高いと思われるゲーム(今回扱うUndertaleなど)について一々の詳細説明はできるだけしない方向で行きます。

 また大変申し訳ございませんが、筆者は「Undertale」をプレイしておりません。この題材を扱うのに、です。そのため知識はネットで調べた程度のもので、説明等にニュアンスの違いなどが生じている可能性がございます。ご理解のほどをよろしくお願いいたします。

この記事の執筆を始めた経緯

 突然ですが、私はゲーム音楽がとても好きです。少なくとも人並み以上には愛しています。故に、新しいゲームの情報を聞くたび「音楽どうかな?」という視点でついつい見てしまったりする人間です。

 そんな中、2019/09/05という日に、かの有名な「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」(以降、スマブラSP)に「Undertale」のキャラクターであるSans(サンズ)のコスチュームが配信されました。加えて、購入特典として同ゲームの楽曲である『MEGALOVANIA』がスマブラSPのBGMとしても設定できるようになる仕様となっております。(その内容を含んだ紹介映像)

 早い話が「スマブラSPというビッグタイトルにインディーズゲームのコスチュームとBGMが実装された」ということなのですが、ここで私は一つ引っかかったことがあります。それは、

「Undertaleの代表曲って『MEGALOVANIA』でいいの?」

ということです。

押しも押されぬ人気曲『MEGALOVANIA』

 そもそも『MEGALOVANIA』ってどういう曲なの?という話ですが、ゲームにちょっと詳しい人なら知っている公然の秘密と化しています。つまりは、それについて語ろうとすると「Undertale」というゲームにおけるすさまじいネタバレが含まれてしまうのです。ですので、ご存じない方は「とてつもなく大事な場面で流れる、何度も聴かされる曲」位に思ってください。実際にプレイして聴いた人にとっては思い入れも深い曲でしょう。

 では、具体的にこの曲の人気を図るわかりやすい尺度として「みんなで決めるゲーム音楽ベスト100」に関してお話しましょう。これは、ゲーム音楽ファンたちが自分の好きな曲を2ちゃんねる(現在は5ちゃんねる)へ投稿、それを集計して作られたランキング企画です(が、現在は過疎っているご様子です)。なお、集計対象はランキング開始前に発売されているゲームの楽曲すべて、という途方もない範囲です。

 はじめてこのランキングに「Undertale」の曲が投票可能になったのは、第10回です。総投票者数2430人、そんな中『MEGALOVANIA』の順位は全楽曲中2位です。

 「新発売の人気ゲームは表を集めやすい」「なんとなく、で票を入れた人が多い曲が高順位になりやすい」等の意見もございますが、初登場でいきなり2位を取ったということは、少なくとも「数多くの楽曲をゲーム音楽ファンの中で、その年すさまじい印象を放った一曲」であることに間違いはありません。(ちなみに1位は「 星のカービィ ロボボプラネット」の『 VS.スタードリーム』でした。カービィ強し。)

本当に『MEGALOVANIA』を聴きました?

 こうなると「『MEGALOVANIA』が代表曲になるのも当然では?」といった感じですよね。ですが、1つ問題としてこの曲をゲーム内で聴くことには、そこそこのハードルがあるのです。「Undertale」というゲームではプレイヤーの行動に応じてルートの分岐が起きます。『MEGALOVANIA』はその中でも最も難しいとされるルートでしか聴くことができないのです。

 ここでさらに問題として、このルート分岐条件に関しては「精神的に辛い部分がある」とうことです。ある程度のゲームの腕があり、かつゲーム内での辛い選択を下せる人のみが聴ける曲なのです。

 では、そもそも「何故「Undertale」は人気のゲームになったのか」というと、その原因は主に「ゲーム実況」に起因します。もともと、インディーズゲームである「Undertale」自体がプレイヤーたちのレビューを介して広まっていった作品なのですが、特に日本においての分母を大きく広げたのが「ゲーム実況」です。

 ゲーム実況にて「Undertale」は大きな広がりを見せたのですが、ここで1つ問題点がありました。それが先の「ルート分岐」です。ゲーム実況ではそのゲームの面白さを伝える為、はたまた自分の面白い様子を発信したいが為なのか「ゲームのすべてを動画化しようとする傾向」があります。これと「ルート分岐」のシステムが重なって多くの実況者さんは「全ルートの動画」を投稿してしまうケースが多いのです。

 これでは、せっかく「ある程度の技量」と「精神的負担」という2重のロックがかけられたルートも『誰もが見れて、知っている普通のもの』へと変貌してしまうのです。結果、すさまじい選択の果て選ばれたルートの熱い展開にて流れる『MEGALOVANIA』は多くの人に聴かれ、大変人気な楽曲となりました。

 これでよかったのでしょうか?私はこの事が少し悲しく思います。

ゲーム音楽は音楽のみでは成立しない

 見出しにもあるように、私はゲーム音楽は音楽のみでは成立しないと考えています。そもそも一般人において「曲」という言葉自体「歌詞があってアーティストが歌うやつ」などと思われている中、ゲーム音楽はその多くが歌詞のない曲(いわゆるインスト曲)であったりと中々異色です。定義にしても「ゲームに収録されている楽曲」くらいしかなく、ジャンルもバラバラ。とても難しい代物のはずですが、じゃあ何故「ゲーム音楽が好き」となるんでしょうか?

 それは、音楽と共に行うゲームが記憶に刻まれるからです。あなたがもしゲームをやっていて、

キャラクターの心情とマッチした曲があれば、場面が印象深くなります。
攻撃のパターンと併せてBGMが変化すればノッてくる事でしょう。
決め台詞に続いて響くイントロはさぞ格好よく聴こえると思います。

 ゲーム音楽はゲームのみでは成り立ちません。つまり、先ほど動画で「Undertale」を視聴し『MEGALOVANIA』を聴いた人々は実際のプレイと曲とのリンクが存在しないのです。そんな状態で曲を気に入った人は「ゲーム音楽としての『MEGALOVANIA』を好きであるとは言えない」と私は考えるのです。彼らはただの「曲」としての『MEGALOVANIA』が好きなのです。

過去にも似たような話があった

 その昔、東方Projectシリーズにおいても似たような違和感を覚えた事があります。「東方Project 人気投票」という投票企画には「音楽部門」が存在し、度々トップを飾っている楽曲に「U.N.オーエンは彼女なのか?」というものがあります。

 これは「東方紅魔郷」という作品のエキストラモードにて聞ける楽曲ですが、はっきり言ってそこそこ技量が求められます。解放条件とか、ちゃんと曲が聴ける場面までいけるかとかです。ですが、票を入れた人は多く、「すごい、みんな出来るシューターさんなんだなぁ」と思っていた時期もあったりしました。

 しかし、実際は「東方を知った曲だから」「動画で見て人目気に入った」とかプレイ時の話が聞こえてこない理由で投票する人も多いのです。ここでもやはり「本当に好きな楽曲なら、聴く為にゲームを遊んでいるのでは?何故そうではないのか?」と不思議に思ったものです。多分この人たちもゲーム音楽ではなく「東方というコンテンツの一曲」として見ているんだと思います。コンテンツを好きでいてくれているのは嬉しいですが、なんとも複雑な気持ちになりました。

『MEGALOVANIA』が本当に好きな人へ

 話が少しそれましたが、先の「U.N.オーエンは彼女なのか?」についての話は、ゲーム音楽が普通の「曲」として聴かれる傾向は以前からあった、ということを言いたかったのです。本来はゲームを引き立て、ゲームに引き立てられる存在だったはずのゲーム音楽は、現在このような扱いを受けている。そんな現状が少し寂しいという事を言いたかったのです。

 「『MEGALOVANIA』がUndertaleの代表曲のように扱われてしまった」ということに発端する私の違和感の本質はそのあたりにあるんだと思います。『MEGALOVANIA』という素晴らしい楽曲が、みんなに好かれている。それなのに、その「好き」では曲の魅力を100%理解する事が出来ないという事が心苦しいのです。

 私は前述の通り、Undertaleをプレイしていません。(理由は嫌いだからとかそう言うのではなく「私にはゲーム性などが合わないな」としてプレイしていないだけです。)そのため、『MEGALOVANIA』については「いい曲だと思う」という少々素っ気ない言葉でしか表現できません。ですが、きっとプレイ中に聴いたらこの何倍もの魅力を感じられるんだろうなとも思っています。

 そんな私だからこそ、私より強く『MEGALOVANIA』を好きな人は絶対にたくさんいるはず、と感じています。そんな人たちに問いたいのです。

「あなたは本当に『MEGALOVANIA』が好きですか?」

 この問いに答えられる「ゲーム音楽が好きな人」が増えてくださると感無量ですね。

以上です。


追記

2020/09/12
 見出し画像と画像出典の追加

画像出典

(見出し画像)
Nintendo Switch|ダウンロード購入|UNDERTALE
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000009922 (2020/09/12閲覧)

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