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Road to the Sun / Pat Metheny

昨年の「From this place」が、まるでこの後に世界中を翻弄するウイルス兵器のWW3を予告するかのような、混沌とした、ダークな内向的なサウンドで、これまで私がPatに持っていたイメージ…すなわち、アーシーなライトフュージョンの人、というものを大きく覆した作品だったんだが、あれから1年経ち、新レーベルから発表した新作がこれ。そして、今回もまた大きく驚かされる作品になっていた。
今回は、ギターのための2つの組曲を、パットが委嘱したギタリストの演奏により披露する、という「作曲家」としての立ち位置に専心。そして最後の一曲はリトアニアの現代クラシックの作曲家、アルヴォ・ペルトの代表作の一つ「アリーナのために」のソロ演奏。
で、2つのギター組曲のタイトルが「光へと向かう4本の小径」、そして、アルバムタイトルにもなっている「Road to the Sun」とこれまた、意味深。

ウイルス戦争の最中の作品ということもかなり影響するかの如く、わずかな、ほんの一筋の光を求めてもがき苦しむ様や、ようやく掴みかけた光にどうにか縋って進んでいこうとするひたむきな姿や、ようやく享受できた太陽の光によって甦る姿なんかが想像されるようなメロディラインは、このご時世だからこそ、聴いていてとても切ないし、じっくり噛み締めて聴ける時もあれば、軽く流して聴ける時もあれば、聴いているとますます息苦しくなるときや、状況に応じて、さまざまに変幻自在に聴こえる曲であるように、まず、感じた。
そのように思わせるセンスは、これまでのイメージの中には正直なくて、不自由な状況を強いられる中での彼なりの抵抗とメッセージ。前作と合わせて、静かな夜に、そっと噛み締めて聴いていきたい、と思った。

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