内部留保を取り崩せ!

最近、Twitterなどで、今こそ内部留保を使え!といった主張を目にしたので今日は内部留保の話をしたいと思います。

まず、Googleで内部留保と調べると、下記のような定義が引っ掛かりました。

内部留保とは、企業が生み出した利益から税金や配当、役員報酬などの社外流出分を差し引いたお金で、社内に蓄積されたものを指します。 社内留保ともいいます(内部留保 初めてでもわかりやすい用語集 SMBC日興証券)。

内部留保を使えと主張する方は、内部留保を社内に蓄積されたお金(会社の金庫にあるお金)をイメージされているのかと思います。おそらくSMBC日興証券さんは誰にでも解りやすく記述されるためにこう書かれているのかなと思いますが、内部留保とは必ずしもお金に紐づくものではありません。

ウィキペディアにはこのような記載がありました。

内部留保とは、企業の所有する資産のうち、借入金や株主の出資ではなく、自己の利益によって調達した部分をさす(ウィキペディア)。

内部留保とは、企業が経済活動を行った結果として得た利益(利益剰余金)です。その利益がどのような形(資産)として企業が持っているかはその企業それぞれなのです。

・全て現金で回収していれば現金として保有しているでしょう。

・まだ回収していなければ債権(お金をもらえる権利)として保有しているでしょう。

・回収したお金を次に販売する商品を仕入れるの使っていれば商品(流動資産)として保有しているでしょう。

・回収したお金を設備などに投資していれば固定資産として保有しているでしょう。

多くの企業は稼いだ利益を現金あるいは預金のまま寝かせるということはしません(運転資金として一定程度は手許に残しますが)。事業を成長させるために様々な投資を行っていくため、稼いだ内部留保は換金しにくい資産に姿を変えていることが多いのです。

そのため、今すぐ内部留保を使って社会的責任を果たすべきだと主張することは、一見もっともらしい主張に思えますが、企業の実情を考えると難しいでしょう。

会計的な視点で考えた場合に内部留保はどのようなケースで増減するのでしょうか。シンプルに考えると以下の通りです。

①売上が増加(減少)すると内部留保は増加(減少)する

②コストが増加(減少)すると内部留保は減少(増加)する

③配当を行うと内部留保は減少する

つまり、内部留保は、売上を減らす、コストを増やす、配当をすることにより取り崩せますが、売上を減らす意味はあまりないので、従業員の賃上げ(コスト増)・配当の実施などが考えられますが、大企業の従業員は中小企業と比較して待遇も良く賃上げをしてもその効果は限定的です。また、配当を実施しても金融資産を持っているような余裕のある層にお金が流れるだけで、やはりその効果は限定的だと思います。

今こそ内部留保を使えという主張は、もしかしたら大企業は困っている人たちに内部留保回して社会的責任を果たせということなのかもしれません。しかし、内部留保は、株主が投資して得たリターンですので勝手に使うわけにはいきません。

やはり、内部留保を取り崩すのにもっとも効果的なのは税の仕組みを見直すことでしょう。

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