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がん治療の意思決定基準

Decision Making Criteria in Oncology

Oncology 2020;98:370–378  DOI: 10.1159/000492272  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30227426/

 意思決定のプロセスは、日常診療の本質です。私たちの判断や意思決定には様々な要因が影響します。様々な理由から、がん治療には複数の選択肢が用意されていることが多いです。 

〇意思決定の個人的特性 〇意思決定特有の特性 〇文脈的要因 が意思決定を形成します。腫瘍内科で行われる多くの決定はエビデンスに基づく医療のみに基づくものではなく、例えば経験豊富な同僚の意見を反映した意思決定を行うことになります。 また、医療における意思決定は、理想的には患者さんを巻き込んで行われ共有された意思決定とされますが、このプロセスはがん医療における意思決定の基準は完ぺきとは言い難い。

 臨床腫瘍学における意思決定には診断、治療、予後などの複雑な不確実性を考慮する必要があり、このナラティブレビューは臨床腫瘍学における意思決定基準の様々な側面を考察することを目的とします。

複数の判断基準の存在:がんの種類、医療制度、治療法、個人差など様々な理由によって日常的な臨床上の意思決定には多くの異なる基準が導入されています。

意思決定者に関連する基準:行動科学は、人間は利益を最大化する合理的な個人として意思決定を行うわけではないという観点から、最近の研究では、意思決定は認知バイアスや感情などの要因に影響されることが示されています。

患者に関連する基準:患者関連の基準は意思決定の中心となる。 しかし、決定は患者さんや介護者によって覆される可能性もあります。例えば、患者さんの治療アドヒアランスや不適切な行動、積極的ながん治療を行わないと決定した場合。 がん患者のノンアドヒアランスは広くみられる問題であり、文献では16~100%と報告されています。 がん患者が治療法を検討する際には、多くの心理的要因が関与します。また、患者さんの希望や個々の目標を聞いている場合、患者さんが満足し、治療法を遵守する可能性が高いことを示す研究結果もあります。

医師に関連する基準:医師の知識レベルが治療方針の決定プロセスに影響を与えます。 適切な意思決定を行うためには、最新のエビデンスを熟知し、それを臨床の場で解釈し適用する能力が必要です。  また、意思の職業的背景も重要な要因となります。診療科によって好む治療法に差があるようです。

医師は、患者の症状と、検査、病歴から得られる客観的な情報に基づいて、病気の診断と治療を行います。 逆に患者は、仕事や社会生活に支障が出て症状が問題と思っているときにしか医療を受けようとしません。

意思決定の共有は賞賛すべき目標ですが、意思決定の共有にはいくつか限界があります。特にエビデンスの乏しい環境では、多くの臨床医が未だにパターナリズムに慣れ親しんでいます。このアプローチは意思決定プロセスに影響を与え、結果にも影響を及ぼす。

以下に臨床腫瘍学における意思決定基準の概念モデルを現します。意思決定基準の3つの主要カテゴリーとその例です。

Dcision-making process(意思決定プロセス)

〇意思決定者に関連する基準:個人の信念、システム、人生の質、社内でポジション、モチベーション、部門、治療へのアドヒアランス、治療、医師の時間制約、体験、個人的な希望、コンプラアンス、病気関連の症状、治療医の背景、医師との相互関係

〇意思決定の基準:年齢、性別、がんのステージ、治療の毒性、パフォーマンスステータス、併存疾患、感情的なストレス、時間のプレッシャー、形態学的・組織学的な癌の特徴、治療の意図、バイオマーカーや検査値

〇文脈的な要因:マーケティング、財務状況、実践組織、臨床試験、政府政策、文化・宗教、リソース/情報へのアクセス、家族からの影響、経済状況
擁護団体、返還金のポリシー/コスト、社会経済状況とステータス


結論:がん治療医と患者が複数の選択肢に直面した時、その選択は合理的分析的な意思決定モデルを越えたいくつかの要素が影響される。意思決定者にとって、それが個人であれ委員会であれすべての関連情報を処理し評価することは困難です。このことから、腫瘍学では、無数の異なる意思決定基準が使用されますここに示したリストがすべてを網羅しているわけではありませんが、腫瘍学の意思決定基準の複雑さと多様性を示しています。

まず、その複雑さとその影響を認識する必要があります。                    

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