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アロマターゼ阻害薬と脂肪肝疾患

Aromatase Inhibitors and Newly Developed Nonalcoholic Fatty Liver Disease in Postmenopausal Patients with Early Breast Cancer: A Propensity Score-Matched Cohort Study
閉経後早期乳がん患者におけるアロマターゼ阻害薬と新規の非アルコール性脂肪肝疾患
:傾向スコアマッチング法を用いたコホート研究
Oncologist
. 2019 Aug;24(8):e653-e661. doi: 10.1634/theoncologist.2018-0370. Epub 2019 Jan 24.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30679317/

2021.2.26

背景:ホルモン受容体陽性の乳がんと診断された閉経後の女性は、アロマターゼ阻害薬(アリミデックス®、フェマーラ®、アロマシン®等)による内分泌療法が有用です。
 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD:Nonalcoholic Fatty Liver Disease)は、世界中の慢性疾患の一般的なものとなりつつあります。正確な数は不明ですが、NAFLDは進行性疾患の非アルコール性脂肪肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis)を発症し、肝臓の繊維化の進行は肝硬変を引き起こす可能性があります。
 女性は閉経後NAFLDの有病率が高くなります。(→内臓脂肪の蓄積・脂質異常症・耐糖能異常などが原因)
さらに、NAFLDを有する閉経後女性は肝繊維化のリスクが高いことが報告されています。
 いくつかの研究では、タモキシフェン(ノルバデックス®)の内分泌療法を受けた閉経後の乳がん患者は、NAFLD発症リスクが高く、生存率に影響を及ぼす可能性が報告されています。
 この研究は、アロマターゼ阻害薬のNAFLDの発症ががんの再発や生存に影響するかを調べました。

方法:この研究は後ろ向きコホート研究です。過去のデータを分析しました。対照群は同じ時期に健診をうけた健常な人のデータと比較しています。
 研究対象者は1,480人で、アロマターゼ阻害薬を術後に開始した乳がん女性。(転移性乳癌、B・C型肝炎、タモキシフェン治療経験有、週140g以上のアルコール摂取、情報欠損などは除外)血液検査とお腹の超音波で脂肪肝を診断。脂肪肝予測モデルHIS(カットオフ値>36)、APRI、FIB-4などの計算式を使用。
 対照群は、健康診断を受けた138,171人。最後に、220人の患者を性別・年齢・月経状況についてマッチング。

結果:アロマターゼ群は、対照群に比べてBMI(Body Mass Index)が低い→対照群24.3±3.5 AI群22.9±2.4 
BMI>25の数も対照群が多い。脂肪肝予測モデルHISは36>はアロマターゼ群が高い25.9%vs53.6%。糖尿病・高血圧は両群では差がありませんでした。肝繊維化の比率は、FIB-4(p=.000)、NFS(p=.001)でアロマターゼ阻害薬に関連していました。アロマターゼ阻害薬を使用後にNAFLDを発症した患者は、NAFLDを発症していない患者に比べて無病生存期間(DFS)が有意に低かった(p = 0.010)。多変量解析では、ER陽性とPR陽性は、より長いDFSを予測する独立因子を示した。

考察:
 アロマターゼ阻害薬治療後に新たに発症したNAFLDは無病生存期間を減少させる。
 NAFLDは単純な脂肪変性から進行した繊維化までの肝疾患を含み、肝硬変・肝細胞癌に進行することもあります。
NAFLDの最も重要な予後因子の一つは、関連する進行性肝線維症であることが報告されています。この研究では、アロマターゼ阻害薬投与後、NAFLDを発症した患者ではDFSの減少を認めた。
 アロマターゼ阻害剤治療後のNAFLD発症、肝線維症患者の肝線維症と生存期間の転帰をさらに調査する必要がある。

感想:タモキシフェンでのNAFLD/NASHはもちろんのこと、アロマターゼ阻害薬でもNAFLDを考慮しなければならないと思いました。腹部超音波でのNAFLDフォローはBMIや糖尿病によらず、アロマターゼ阻害薬治療の方は必要かもしれません。


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