そんなもんだよ、はたちなんて。


脳内にWordが実装されて欲しい。
自分の言葉が時差なく可視化されて欲しい。
一字一句逃がしたくない。



帰り道、日が落ちるのもどんどんと早くなって、同じ電車に乗って帰っているはずなのに、もう私が帰る時間は“夕方”ではなく“夜”になっている。

電子機器の使い過ぎでさらに遠くがぼやけて見えるようになった。
夜道を照らす電灯がライブの照明、レーザービームみたい。光がいろんな方向に鋭い線を伸ばす。今日は風が強くて涙が滲んで、光源を囲むように線が柔らかな曲線を描いていた。
受精卵、みたいだと思った。
なんだかひどく安心した。
夜道を自転車で走るのが好きだった。


もうすぐ、はたちになる。
20年も生きたとはとても思えない。私は自分のこと生まれたばかりに思っている。冗談でもなく、ほんとうに。

好きなものを見つける前、言葉をこうして書き連ねるようになる前、どうやって生きていたっけ、ほとんど思い出せないや。
そんなものか、小中なんて。
そんな昔のことなんか覚えていない、担任の先生の名前なんて忘れたって言ってた大人達の気持ちがわかった。


今の半分の年月しか生きていなかった頃の私よ


二十歳の私にむけて、絵を描いていますか?希望通りの職種に就いていますか?彼氏はいますか?結婚していますか?まさか子供はいないよね? なんて手紙に書いたね。

その手紙を書いたころの自分からみた二十歳は立派な大人で、二十歳になる頃には、自分で生活していけると思っていたし、テレビでみるような女優さんみたいな、所謂大人の女性になれていると思っていたし、車にも乗っていると思っていた。結婚や育児も手が届くところにまでは近づくんだろうと思っていた。


安心してくれ。または、残念だったな。


まだまだ自分で生活はできないよ。当時見ていた雑誌のモデルの歳をとっくに越えたけれど、その子達のほうが大人に見えるよ。自分より歳上にみえるほど着飾った可愛い歳下が何億といるよ。車には一ミリも乗れないよ。小学校高学年の時に買ってもらった綺麗なブルーの自転車を未だに愛用しているよ。なんなら、小学生の時よりも使っている。結婚も育児も全然まだまだ、そういう関係になる人の影すらない。絵はほとんど描けない。ただただ見るだけで眼だけが肥えた。希望の職種なんてない。…実はあるけど笑われるのが怖くて誰にも言えてない。働きたくない、休みたいってずっと言ってる。

そんなもんだよ、はたちなんて。


全然大人じゃなかったや。手紙を書いていた時と外も中身もそんな大きく変わってない。

諦めるのが早くなったし、上手になっただけ。


でも、別に良くないものでもないよ。

元から仲良かったけど、最近、もっと家の中の空気があったかい。みんな仲良し。なんなら居心地良すぎて一人暮らしを恐れている。もっと可愛くなりたいし変わりたいけど、涙袋にラメいれた私は可愛いよ。免許は取らなきゃと思ってはいるけれど、自転車で小学生の時にサンタさんからもらったウォークマンで曲聞きながら、夜道を走るの大好きだよ。(イヤホン片耳だけだし、しっかりと安全確認して走行しているので見逃してほしい。)
そういう関係、は、考える度わからない。好きは区別と量の調整が難しい。
区別もいらないかな、なんて最近は思っているよ。本当は見ないふりしているだけかもね。

まあ全部が良いわけでもない。

昔はもっと勉強に積極的だった。楽を覚えた。怠惰になった。もっと一生懸命に生きてた。今は一生懸命が眩しくて、一生懸命になって笑われるのが怖くて、成果が付いてこないことが怖くて、辛いのが嫌で、頑張らなくなった。元気よく挙げていた手、いつの間にか先生と合わせないようにすること、目立たないことに必死。他の人が成功しなきゃいいなんて、やめたいだなんて、死にたいだなんて、


いつだってバトっている。何かとなにか。
毎日戦争、月に何回かはすべてに惨敗。
課題と娯楽はいつだって娯楽の圧勝。


そんなものか、人間って。人生って。


たかだか20年、全然知らない。

今日こそ君に全部勝ってみたい。
引き分けでもご褒美のプリンあげるね。
ご褒美だからね、先に食べたら即行失格、私の負けだよ。



“前の自分のほうが好きだったなんてもう微塵も思わないように”

いつかの自分が言っていた。
さすが私。かなり痛い所を突く。
まあ、今の自分のほうが好きなことに変わりはない。

ただ、嫌いな、許し難い部分が増えただけ。

でも、どうせなら全部好きになりたいよなあ。

生きるの難しい。そこが美しいと感じてしまうこと、憎み続けている。




なにが言いたかったのか。

今の自分のこと好きだよ。
でも、もう少し私は頑張れて、
頑張ったらもっと自分のこと好きになれる、楽になれるのにね、って話。



でも、頑張るよりもずっとずっと前に、
どうか生きていてね。


(2020.12.7)

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