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偏食のこと(その前に・2

好きな食べ物はなんですか?

私は小さい頃から好き嫌いがなく、むしろ兄弟のものを取って食べるような食いしん坊だったと親からは思われているのですが、記憶をよく辿ってみると、何か好きじゃなくて噛まずに飲み込んでいたものがあった気がします。
好き嫌いをするのは悪いこと、なんでも食べられるのがいい子、という大人からのプレッシャーがありました。そんな時代の生まれです。

偏食対応の条件を書いていこうかと思ってのですが、その前に、ふと思ったことがあります。
なかなか本編に入れず、すみません。
偏食ってなんでしょう。
好き嫌いがある、食べられないものがある、食べたくないものがある、それはそもそも「悪いこと」なのでしょうか?

作ったものは美味しいって食べてくれると嬉しい、栄養バランスを考えて作っているから残さず食べてくれたら嬉しい、なんでも食べられる子になってほしい、そういった大人の主張はわかりやすくさまざまなところから聞こえてきます。大切な子どもにとってよりよい食生活を送ってほしいと思う気持ちは痛いほど感じます。でも、見えている緑の野菜を食べなくても、トマトが苦手で食べなくても、唐揚げ以外のお肉を食べなくても、それは「悪いこと」ではないですよね。
なんでも食べられた方がきっと体に良いし、栄養バランスよく食べた方が体調よく機嫌良く過ごせるかもしれないし、睡眠や精神安定にも繋がっているかもしれないけど、でも、好きなものを食べている時に冷めた目で見られたり、苦手なものを口元に持ってこられる時の大人の顔の怖さに慄いたり、残すとため息をつかれたりして、食事中が居心地の悪い時間になっても仕方ないような「悪いこと」ではないですよね。
少しくらいの好き嫌いなら、楽しい食事を優先していいと思うのです。

ただ、食べられるものが本当に少なかったり、一般的にご飯を食べる時間に用意してもほとんど食べなかったり、実際、体もなかなか大きくならなかったりして本当に栄養が取れているのか心配になるような場合もあるとは思います。そういう子には本当に色々手を尽くして、成長していけるだけの栄養を摂取できるような手段を大人が考えていく必要があると思っています。

乳幼児期の栄養摂取は、まずミルクを吸って飲むということから、さまざまなものを食べる事で味や食感を知るとともに、食べ物を取り込んでいく唇や舌の使い方、歯を使って咀嚼する事、ある程度の固形物を飲み込む事を覚えていくという、目まぐるしく食べるという事の意味が変わっていく時なので、初めての物や知らない物を嫌がったり、一度食べた時に嫌な思いをすると当分食べなくなったりすることはあっても仕方ないのかなと思います。偏食というより、食べず嫌いというレベルなのだと思います。どうしてもその野菜を食べないと取れない栄養素、なんて、ないと思うので、1日、1週間、1ヶ月と一定のスパンで見て、トータル的にある程度の栄養が取れていればいいと思います。

野菜もお肉も、なんでも食べてほしいという思いを否定するつもりはありません。ですが、偏食の対応で、これをやれば一発でよくなるというような、特効薬はないと思っています。(脅しが効く子は親の前では一時的に食べるようになる事はあるかもしれませんが、それはそれで後々大きな禍根を残すと思っています)
ただ、特に乳幼児期のお子さんは、日々同じ瞬間がないくらいのスピードで変化していく時期です。良くも悪くもずっと同じでいる事はないんです。日々の小さな出来事が子ども達には大きな体験で、その体験の中で感じ取ってきたことが、ある時、大人がわかるような変化につながるのだと思っています。

そんな乳幼児期の食べることで私が大事したいと思っているのは、「食べたことがある事」と「知っている事」です。
「食べたことがある事」は2、3歳になって野菜を食べなくなったという子でも、離乳食の時はなんでも食べていたという子はかなりクリア出来ることだと思っています。とりあえず、その食材の味や匂い、食感を経験していて、アレルギーの有無が確認できていればいいと思っています。さらに、4、5歳児になるとよくトライするような米粒程度の大きさの一口チャレンジの目的も、食べられるようになる事ではなく、食べたことがある物として覚えてもらう事が目的であると思っています。「私、これ、食べたことあるよ!食べられるんだよ!」と子ども自身が思えればいいんです。

「知っている事」は見たり聞いたり触ったりして作っていく物です。なので、食べないけれど、大人の食べるものは見てるとか、食べないけれど、お手伝いや遊びの中で見たり触ったりしたことがあるとか、食べないけれど、カレーライスの歌が歌えて、こぐまちゃんのホットケーキを読んでるとかそういうことでいいんです。
「ちらし寿司に入ってる桜でんぶは好きですか?」は多くの人が答えられると思いますが、「タカカに入っているジャンブーって好きですか?」はどうでしょうか。(タカカとジャンブーを知っている人がいたらすみません)日本において、一般的には知らないですよね。見たことのない料理や、聞いたことのない食材は好きかどうか、答えられないのが普通だと思います。子どもなりに自分は何が好きで、何が嫌いかがわかればいいと思います。そして、そうして知っていくことで、食べてみようかなと思える日や、食べたらおいしかったという経験をする日が来ると思います。

そのために、大人が美味しく食べることが大事だし、誰にでも好き嫌いの一つや二つあるのだから、そういう時の上手なかわし方を見せてあげれば良いのではないかと思います。「ハンバーガーピクルス抜きでお願いします」みたいに。そして、その子が今食べられないものを「嫌いだね、食べないよね」と出来ないレッテルを貼らず、「美味しいから、いつか食べられたらいいね」と見守れるといいのではないかと思います。(理想的すぎるかな)

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