Ⅰ Mari*Mariの章
主人公は
蜘蛛に似た【かたち】の【シュピ】
【ママシュピ】と【パパシュピ】が水晶の丘で出会い”ペア”となり
そして【シュピ】が誕生しました。
その日、生まれたばかりの【シュピ】は
”水晶の原”にある”永遠の池”の前で
ある【かたち】と出会います。
「こんにちは。」と、【シュピ】が話しかけると
『こんにちは。』と、ある【かたち】は応えます。
「ぼくは【シュピ】。今朝、生まれたばかりなんだ。あなたはだあれ?」
『わたしは【マリ】よ。』
その【かたち】はてんとう虫に似ている【マリ】でした。
「初めまして【マリ】。ここで何をしているの?」
『わたしはね、待っているのよ。』
「待っている?誰を?」
『そうねえ…もうひとつの私かしら。』
「もうひとつの【マリ】?」
【シュピ】は訳が分からずに目をキョロキョロさせました。
【マリ】は、そんな【シュピ】をみて笑い出し
ゆっくりとした口調で話し始めました。
『ウフフ…。あのね【シュピ】。
私がね、あの宇宙にある”天の道”を通って
この星に落ちたのは…
そうねえ…
あなたのパパとママが生まれるよりも
もっともっと前のことだったかしら。
その時ね
わたしは誰かと一緒だった気がしたの。
でもねえ
落ちた衝撃のせいかしらね。
その時は、いくら思い出そうとしても
それが一体誰なのかは思い出せなかったのよ。
だから、この星に落ちてすぐのころは
不安で、ただただ泣いてばかりいたわ。
でね
ふと気づいたらその落ちた穴…
私が勝手に
”永遠の池”って呼んでいるんだけど
そこに涙がたまって
池になっていたの。
それが、何だか
可笑しくって、可笑しくって。
ずいぶん長いこと泣いていたのね私。
ウフフ…。
それでね、涙を拭いて
その”池”をちょっと
のぞき込んでみたの。
そしたら、私が映っていたわ。
それで思い出したの。
“私はもうひとつの私と手を繋いでこの星に来た”
…ってことをね。
それは、私の希望になったわ。
だって、この星のどこかに、もうひとつの私がいるんですもの。』
そう言うと
【マリ】は幸せそうに微笑みました。
「だから、ずっとここで待っているの?」
『そうよ。
ここにいたら、いつかもうひとつの私が
わたしのことを思い出して
ここに戻って来るかもしれないでしょ。
だから、私ずっとここで待つわ。』
「ずっと待つって…退屈じゃないの?」
好奇心旺盛な【シュピ】には
ずっと待つことが
とても退屈そうに思えたのです。
『それがね、全然、退屈じゃないのよ。
ウフフ…。
この”永遠の池”には
色んな【かたち】が喉を潤しにやってくるわ。
その度に、もしかして?って
”星の木”の影から、そっと【かたち】をみてみるんだけど…
いつも【かたち】が違うの。
でもね、それも幸せなのよ。
なぜなら、ここには希望があるんですもの。』
「う~ん…。ぼくには、なんだかよくわからないや。」
『ウフフ…。そうよね
生まれたばかりですものね。
でも
これから色んな出会いや経験を重ねれば
きっと
【シュピ】にもわかる時がくるはずよ。
ところで、【シュピ】
これからあなたは何をするの?』
突然、【マリ】にそう聞かれて
【シュピ】は戸惑いました。
「何をする?
…ぼく、今朝、生まれたばかりだから…。
う~ん。
ぼく…何をしたらいいんだろう?」
そう首をかしげていると
【マリ】は優しく微笑んで言いました。
『そうよ、あなたは生まれたばかり。
これから何だってできるわ。
まずは、何でも
やってみるといいわね!』
「そっか、そうだね。
ぼく、何でもやってみるよ!
なんだか、ワクワクしてきた!」
【シュピ】は目を
キラキラと輝かせました。
『何かあったらまた
いつでもここにおいで。
私は、いつでも
ここで待っているから。』
「うん!…あと、もし
【マリ】に似た
【かたち】と出会ったら
【マリ】のこと伝えておくね。」
『ええ。
楽しみに待ってるわね。
ウフフ…。』
「【マリ】今日は、ありがとう。」
『こちらこそ。
楽しかったわ【シュピ】。』
「じゃあ、またね。」
『ええ。またね。』
そう言うと
【シュピ】は嬉しそうに
”静かな森”へ帰って行きました。
【シュピ】を見送った【マリ】は
『さてと…。』
と大きく伸びをすると
あなたに向かって尋ねます。
『あなたはこれから何をする?』