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家を開くことで生まれるコミュニティ

「住み開き」という言葉を知っていますか?

地方創生の新たな火付け役として、「住み開き」が注目されています。

住み開きとは「住み」家を「開く」、つまり住宅の一部を開放するという意味の造語です。住み開き発案者のアサダワタルさんは、住み開きを以下のように定義づけています。

「自宅や個人事務所を代表としたプライベートな空間の一部に、本来の用途以外の新しいアイデアを盛り込み、様々な人が集えるパブリックな空間へと変えてゆくその活動、もしくはスペースを指す。」

住み開きには、趣味の教室を開いたり、地域交流の場として活用するケースなど、さまざまなタイプがあります。今回は、多様に進化し続ける住み開きについてお伝えします。

地方創生の課題とは?

地方創生の課題として、地方に住む人が都会に移動してきていることが挙げられます。

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出典:内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局

グラフを見てもわかるように、地方から東京圏への転入者が増えています。

そしてこの問題と並行して起こっているのが、「空き家問題」です。空き家が増えることで、地域の治安が悪くなり、犯罪が起きるリスクも高まります。

住み開きの可能性

空き家問題に対して有効な策として挙げられているのが「住み開き」です。

住み開きは、シェアハウスのように生活を丸ごと他人と共有することではありません。自宅の一部だけを開放したり、週1日だけ開いたりするなど、プライベートな部分はキープしつつ自分のペースで他者とのつながりを持つことができます。アイデア次第で誰でも気軽に始められるため、世代を問わずたくさんの人が住み開きの活動を行っています。

住み開きによって地域の交流が盛んになると街の活性化につながります。実際に、地方の小さな町が住み開きによって活性化され、街おこしにつながった例も数多くあります。自宅の一部を開くことで気軽に始めることができ、新たな出会いや発見をたくさん得られる住み開き。多くの人が集う交流の場として地域に貢献することができれば、充実感や達成感を味わうことができるでしょう。

住み開きのコツ

住み開きにはいくつかのコツがあります。

①目玉を用意する
例えば「本がたくさん読める」「生演奏を聴ける」「料理がおいしい」など、なんでもいいので住み開きをする住人の得意技を存分に生かせるような環境づくりを意識してください。目玉は「モノがある・ない」の大きく二つに分類することができます。「モノがある」と、わかりやすく自宅ミュージアムや自宅ギャラリーのような存在となります。また建物そのものがインパクトを放つならば、住人の持つコンテンツと場所のクリエイティビティを相乗的に高めることになるでしょう。そして「モノがない」住み開きをするならば、シェアハウスの在り方や企画の作り方といった運営システム面に様々な工夫をすることが必要です。

②プライベートを確保する
セキュリティのことも考えて、「ここからは入れない」というルールを確保しておくべきです。最も典型的なのは、1階をオープンスペース、2階を住居とするパターンです。

③経済的に無理をしない
お金をかけずに小さなパブリックスペースを実験できることに「自宅」であるメリットがあります。だから改修費用が膨大になったり、サービス精神が旺盛すぎて毎回費用のかかるものを無料で提供したりしていくと、元も子もありません。改修費用は最低限に留めておくほうが、いざとなったときにやり直しがききます。また、食べ物や飲み物は参加者持ち寄りにしたり、光熱費程度は回収したりして、黒字にはならなくとも赤字にはしない運営を心がけてほしいです。

④日時を決める
自分のライフワークスタイルに合わせて、「平日の夕方2時間だけ」「毎週土曜」など臨機応変に決めると良い。そうすることで私生活や仕事にもメリハリがつきます。

⑤徐々に輪を広げていく
最初から大勢の「知らない人」を招き入れる必要はない。まずは「友人の友人」からなど、徐々にコミュニティの輪を広げていくこともできます。これは告知の方法次第で、開閉度合いをコントロールすることができます。友人からの招待制のみにしたり、住所を明かさずにウェブで公開告知したり、家の前に看板を出さなかったりすることで、来る人をある程度制限することができます。住み開き実践者の多くはソーシャルメディアを活用しているので、ネットとリアルを連動させる情報の流し方にも注目しましょう。

⑥大家さんと仲良くする
借家の方はこれがとても重要である。不特定多数の人が家を出入りするとなれば、あらかじめ大家さんに意図を理解しておいてもらった方が良いでしょう。関係性を構築することで、大家さんが協力的になってくれることもあります。

⑦なるべく大きな音は出さない
住み開きをする上で近隣とのトラブルの一番の原因がこの騒音問題です。自宅を開放するため、周りは普通の住宅地であることが多いです。ちょっとした音でも「騒音」「怪しい」とみなされる可能性は高めに見積もっておくべき。音を多少なりとも出す際は、事前に近隣に挨拶周りに行ったり、何かトラブルが起きた際にはお詫びをきちんとしたり、柔軟な対応が必要です。

⑧子どもとペットを媒体とみなす
子供やペットは、人と人を繋ぐ最強の媒体です。他者との会話のきっかけともなるので、住み開きにはとても適しているといえます。

⑨困ったときは、「ここ私の家ですから」
このセリフは、住み開きで何かトラブルが発生した時の伝家の宝刀です。実践者の自宅であることにより、絶対的ルールが暗黙の理解のもとで形成されます。大方はその場の空気をくみ取る節度を持った参加者が集まるが、いざとなった時はこのセリフを使用すると良いです。

以上9点が住み開きをするコツです。

まとめ

「住み開き」の最大のメリットは、誰でも気軽に始めることができる点です。自宅を活用するため場所代がかかりません。自分の家の空いたスペースをパブリックにすることで、人との交流を生み出すことができる。

興味のある人は、実際に住み開きを始めたり、身近な住み開きの活動に参加してみてはいかがでしょうか。新たな仲間との楽しい時間が待っているかもしれません。



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