「楽園で遅い朝食」

「あなただったんだろうな、本当に」

登録のない番号からの、ショートメールだった。
…いつだって通り魔のようで、鼻腔に麝香が強く香る。舌は冷え切っていた。

あれは夏にしては涼しい夜で、車達の尾灯ばかりが彼の眼にひかって、煙草を吸っている指は陶器のようだった。
果物の腐ったにおいが辺りに充満していた。
愛していたし、愛されていたことを知っていた。誰もおらず、誰も要らなかった。
彼は暗い森に火を放ち、たちまち燃して…でも、それだけ。そうして置き去りにされたことを知るだけ。

そう、わたしだった。

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