遅刻癖が好きかもしれない
彼女は、約束の時間に来たことがない。出会ってから3年ほどの付き合いになるけれど、それは変わらない。
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わたしのお仕事はおもに文章を届けること。ライターは、一人でできるものじゃない。クライアントさんはもちろん、読んでくれる人がいなければ、ただの自己満足になりかねない。
お仕事をつくっている契約内容や報酬は、信頼があるからこそ生まれるのだと思う。見ず知らずの人にお仕事を頼むことはできないし、したくない。直接顔が見えないネットを使ったお仕事には、信頼がとくに欠かせない。
この『信頼関係』を築く方法自体はたくさんあって、その方法は人それぞれ、優先順位もそれぞれなのだけれど、私が思うに『時間を守ること』は、中でも大切なものの1つにあげられる。
いま活躍しているあの人だって、目標にしている誰かだって、そうやって信頼を作ってきたから今があるのだ。
ただ、最近のわたしは、お仕事を意識しすぎてしまったようで。今日、友達と会ったことで『お仕事に支配されている』と気づいたのだけれど。
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『約束の時間に来たことがない』
ここだけ聞くと、あぁ時間にルーズなんだな、約束を守れない人なんだな、と思うかもしれない。
でも、わたしにとっては、その『遅刻癖』が心地よかったりする。
毎日のようにお仕事をして、いくつもの文章を打ち込み、1日に何度もお仕事メールのやり取りをしていると、寝ようとするときでさえ「明日はこれを提出せな」「さっき練った構成は、やっぱりもうひとつの案にしてみようかな」なんて考えるようになった。
だんだんと『お仕事にはこれが必要そう』ではなくて、「人としてあたりまえデショ」と捉えるようになっていたのかも。
きっと、生活のなかにお仕事があるのではなくて、お仕事のなかに生活が組み込まれてしまったのだ。
だから、彼女のマイペースな行動は、わたしに心のゆとりを与えてくれる。もしかしたら、頭にもカラダにも「いい余裕」をもたらしてくれるのかもしれない。
そんな彼女の性格をわかっているから、1日の予定はのんびり組んでいる。分単位で動いたり、乗る電車の時間を決めたりはしない。そういうユルさも、「今日はオフ」という雰囲気を作り出してくれている。
自他ともに認める仕事人間だからこそ、メリハリが必要だと気付かされた、そんな日だった。
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