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大人になれば。

小さいころ、「大人になりたい」と思っていた。理由はわからない。
わからないけれど、大人になりたいと思っていた。たぶん、なんとなく、かっこよかったのだろう。



いま。「こども」ではなくなった、いま。
大人になりたいとは思わない。

年を取るのが嫌だとか、責任が大きくなるからこのままでいたいとか、そんなことではないのだけれど、大人になりたいとは思わない。



気付いたら、無邪気なんて言葉が似合わなくなって。
気付いたら、大人なんていう、ツマラナイ仮面をかぶって。


次に、なにかに気付くのはいつだろう。

もうすこし、「大人になったら」だろうか。




「あの時に戻れたら」


なんて人はよく言う。言うことで、なにかに踏ん切りをつけているのだろうか。はたまた、その呪文のような言葉がないと、自分を保っていられないのだろうか。


ただ、きっともっとずっと選択肢があったって、そう言うのだと思う。もしも人生がやり直せたとして、その時には出会えなかった景色をみることができたとして、これ以上のない満足を選んだとしても、きっと言うんだろう。「あの時に戻れたら」と。



小学生のころ「大人になりたい」と思ったのは、ただただカッコいいなと思ったからかもしれないし、近所のおばさんが優しかったからかもしれない。知らないことをたくさん教えてくれる両親が、その理由なのかもしれない。今となっては憶えていないので、わからないけれど。


しかし、こうして大人になった時「大人になりたい」と思わないのは、自分が大人になってしまったからだけではないような気がする。

きっと、なにかを捨てて、なにかを手に入れていくうちに、ぼんやりとした色に染まってしまったんだろうと思う。真っ黒ではないけれど、真っ白でもない、一言では、とうてい表せないような色に。

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