花畑に行きたい

寝ているのかと思ったら、死んでた。そういう心配の仕方をされたくてまだ愛されてるなと思いたくて母と喧嘩した後の俺は部屋の端っこで死体の演技を頑張っていたけど心臓は止められなくて横隔膜は微かな上下をし続ける。悲しくなって起き上がったので寝てるのかと思ったら、寝てたになった。自室が無いからずっと演技をしている。トイレと布団の中で化け物に戻る。生まれた瞬間は人間の形をしていて良かった。捨てられる覚悟はできているけれど捨てられたくないと思う。ヘンゼルとグレーテルを教科書にして車に乗せられる時は食料を持つ、何回曲ったかを数えて帰り道を覚えるを徹底しているけれど今のところ助かっていて、俺は随分と熱心に窓の外に興味を持つ子供だった。忍者を走らせる余裕ができたのは看板の地名を読めるようになってからだった。
今は一人暮らしなので毎日おぞましい姿で安心して死んだように眠り続けることができて嬉しい。10時間プラス3時間睡眠でお風呂を毎日あと伸ばしにする。働くことを諦める。演技はサボるとすぐに忘れる。諸々がはみ出してしまうのを諦める。別に捨てられてもいいので見捨てられてなくても俺から一方的に見捨てる。保身はコンパクトに、死んだふりをしなくてもずっと心配されているけどもう見捨てた人にありがとうと思わない。これらが川を眺めるようにとめどなく流れ過ぎ去っていって俺は今草原に居る。ここが夢なのか、夢じゃない方なのかはまだわからないけど綺麗な場所に居れて心地よかった。そういえばずっと花畑に行きたいと思っていたのだった。これは遮蔽物の無いどこまでも続く地表の果ての稜線を眺めたいという気持ちなので、草原でも満足だ。俺の知ってるマインクラフトよりは鮮やかで、影Modを入れてあるのかもしれない。それよりかは単調で、スクリーンセーバーかもしれなかった。もう何年も動いてないから。羊をたくさん数えて飽きた。草原は永遠に続いてゆく。

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