自動筆記

ずっと雨です。空気が冷たいね。空は曇りの割に照度があるので水が透明感を増して見える。水たまりなんか綺麗です。俺の家の風呂は入居した時から照明がイカれてて暗いので水が濁り果てて感じる。湯船の水面越しに見る俺の皮膚は灰色がかっていてそれは皮膚の表面に付着した細かい泡が周囲を反射しているから。触れた部分からシュワシュワと細かい泡が浮き上がる。俺は夜のプールに居る。水底で体育座りをして水面越しのぐちゃぐちゃになった月を見上げている。月が正円に戻らないように口から泡をごぼごぼと吐いている。夜の水は冷たいので皮膚の温度はお葬式で触った死体とおんなじだった。冷蔵庫の中のゼリーのようでもある。あれも光に照らされて透き通っている。不透明な容器に物を入れることは周囲からの隔絶や隔離の要素を含む。我々が収められる棺は木製だが白雪姫が収められた棺はガラス製だったためうまく魂が現世から乖離できず、彼女は成仏する機会を失う。ガラスに映る半透明の像は幽霊と同じ性質を持つ。性質を併せ持つ♡。ヒソカの股間が光るフィギュアがあったな。クラピカの顔面が光るフィギュアもあった。ツイッターおもちゃ箱のどこかにそれらがある。ツイッターは広大で俯瞰すると極彩色の曼荼羅に見えるけど一つ一つのツイートは彩度の低い皮膚みたいな色をしている。もしくは灰色か無色。面白いツイートは光源となり平凡なツイートを照らす。現実に可視光線は届かないので何も無いように見える。本当は闇の中に無数の存在が飽和しいるのだが俺は黒闇の中で周囲を感知する受容器を持っていなかった。俺を包む黒闇は子供から大人へ向かうグラデーションを持って水に変化した。俺は掴めない流れに流され続けたり俺が発した言葉は泡になってごぼごぼと消えて行くだけだったり肺の酸素をセーブして黙ったり死体のフリをして浮かんだりした。体温は常に低かった。水底で見つけた泥の中に沈んでゆく時が一番気持ち良いことにここ数年で気がついて以来ずっと泥の中で眠っている。握った泥は少し暖かくて誰かの手のような気もした。この泥はここで死んでいった死体が溶け合ってできているから、俺もいつか泥に同化するけどその予定は怠惰に引き伸ばされて行く。平日にお昼まで寝る。胎児の頃の記憶を再現する。深夜に布団の中でツイッターを見る。その時が一番眩しく見える。

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