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商店街であるところ

昔は賑わっていたらしいこの商店街も、今は見るも無残に衰退してしまったらしい。
らしいとつけている理由は、わたしがここいらに引っ越してきたのはわずか一年ほど前のことなので、賑わっていたことも衰退したことも自らの目で見ていないからだ。
確かに日中に商店街を通っても人気は少ない。
時計屋、服屋、花屋、喫茶店、その全てが古臭く、時代に取り残されているように思える。シャッターが降りているビルも多い。

この商店街は再開発計画地区になっているらしい。
らしいとつけている理由は、とはいうものの一向に再開発が進んでいないらしいからだ。
喫茶店でマスターらしき人がお客と話してたのを聞いた。
ここは見捨てられたのだと。
実際、わたしが越してきてから今日まで、何一つ変化はなかった。
いや、一回だけ、半年ほど前に、どこかのテレビ番組がなんらかの取材で商店街を訪れていた。
そのおかげで商店街を大勢の誰かさんたちが訪れ奇跡的に復興する、なんてことはもちろんなかった。

だけど。この商店街で暮らす人には悪いけれど、わたしは今のこの商店街が嫌いではない。
夜になると、等間隔におかれた街頭が、ひとけのない商店街とアーチを描くように敷き詰められた石畳を照らす。
適当なベンチに座って、静けさに包まれつつ温かい缶コーヒーを飲む。
運が良ければ、自然のプラネタリウムが鑑賞できる。
そんなひとときがたまらなく愛おしいのだ。

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