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ラピッド・スピード・ストーリーズ

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ハイテンポな痛快娯楽パルプ小説集。派手なアクションが多め。メインコンテンツ。
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2019年3月の記事一覧

殺し屋イヌイ #4

4.殺意の声、死闘のはて。 先手を取ったのは先輩の方だった。腹の底を揺らすような太い銃声が二発。散弾の雨が飛んでいく。しかし、サルヤマは銃声が鳴った瞬間に空高く跳び、銃弾を避けた! 「!?」  先輩は、驚きはしたが熟練の殺し屋だ。反応すばやく、宙を飛ぶサルヤマめがけて更に連射。いくつかの弾がサルヤマに突き刺さり、そこからどす黒い血が吹き出す。俺も寝転んだまま拳銃をがむしゃらに連射。俺の弾は当たらない。ちくしょう!  のんきに寝ている場合じゃねえぞ俺! 必死に両手に力を込め

殺し屋イヌイ #3

3.泣きっ面に蜂ってか?「扉だな」 「やっぱり扉ですよね。なんでこんなところに……金庫ですかね?」 「違うだろうな」 「ですよね。金庫じゃないですよね」  扉を見つけた俺は、すぐにサメジマ先輩を呼びに行った。先輩は管理部へ連絡している真っ最中だったが、俺の様子を観てすぐに察してくれた。そして今、俺と先輩は扉の前に立っている。  俺は慎重にかつ大胆に扉に触れてみた。硬い。ノブに手をかけると、ノブが回った。鍵はかかっていないらしい。  振り返って先輩に「開けますか?」とアイコ

殺し屋イヌイ #2

2.映画みたいに上手くはいかない 体勢を低くして突入。瀕死のヤクザが下敷きになっているドアの上を踏み越える。奥の部屋へめがけて拳銃を三連射。牽制だ。二発は扉にあたり、一発が隙間から奥の部屋に。  ガラスが割れる音と、「親父を守れ!」「どこの組のもんじゃあ!」「グズグズすんじゃねえ!」ヤクザ共の怒声が響く。  目標は確かにここにいるらしい。おそらく奥だろう。後手でハンドサインを出す。銃を顔の前で構えたまま、左の扉を体当たりであけて突入した。扉の先は薄暗く狭い部屋だった。そし

殺し屋イヌイ #1

1.今日の現場はヤクザの事務所だ  俺とサメハラ先輩は、赤鳥居――ビル二階分ほどの高さの――の前に立っていた。赤鳥居の上には、何故か木彫りの猿が置いてある。守り神か何かだろうか? その向こうには汚れた三階建てのビルが建っている。ここが今日の仕事現場になる。 「先輩、なんですかねこの赤鳥居は。なんでビルの前なんかに……」俺は赤鳥居の上を指差した。「それとあの猿も」 「くだらないこと考えてないで集中しろ。仕事だぞ」  先輩の声は鋭い。言葉の端々から殺気が漏れている。仕事モード