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竿だけ屋


私は長い間、洗濯竿はどのマンション・アパートに備え付けられている備品だと思っていた。
それが東京の新築マンションに引っ越し、洗濯物を干すためベランダに出るとあると思っていた竿がない。
しかし、私は洗濯竿を買わなかった。ネットで調べた梱包用のロープを巻き付ける方法で十分代用できたからだ。
そうゆう人もいるはずだし、ネットやホームセンターで買う人大多数だろ。
消耗品でない竿を売るために走り回るなんて異常に燃費の悪い営業だ。
 
私が住んでいる花園町も、たびたび「たけや~さおだけ」とレトロなスピーカー音を鳴らしながら竿売りが走っている。
まず、ネットを調べて驚いたのが、スピーカーから流れる「たけやーさおだけ」の「さおだけ」が「竿竹」という漢字だったことだ。
私はてっきりさお“だけ”売ってますの「さおだけ」だと思っていた。
 
そして本丸のどうやって生計が立つかを調べると、
まず、タクシー代行も兼務していることが多いようだ。
そして、一番の理由は捕まえた顧客に対し詐欺紛いの売り方をしているところが多いらしい。
2本1000円と謳っているが、竿の長さの調整をすると家の中に上がり込み、カッティング料と称して1万円上乗せする。
そして、安い竿だと錆びるから高いものを勧めてきたり、その被害はネットに多数上がっている。
人は家に上がらせると強気で断れなくなるという心理に基づいた賢いマニュアルだ。
 
まさかこんな商売で成り立っているとは、私が騙されたぼったくりバーと同じ手法である。
1時間4千円ぽっきりと言いながら、女性のお酒代が高く、しかも何人も座ってきて結局5万近くかかった。
今度竿屋が家に近づいてきたら、その時の恨みも込めてゴミでも投げつけたいくらいだ。
 
書きながら、洗濯の思い出が蘇ってきた。
10年前、私は岡山に住んでいた。
古めのアパートで家賃は今と同じ38000円。
3階建てのアパートだが、私の部屋は安いだけに最下層の1階だ。
多くの人は1階を嫌がるが、私はすぐ部屋に入れるし、泥棒に盗まれるものもない、洗濯ものが見られても構わない。
(ちなみにアパートに泥棒が入る確率は、1回と上層階で倍以上違うらしい。)
そんな楽観的兼危機管理能力皆無な性格のため、いつもの引っ越しと同じく何の不安もなかった。
しかし、このマンションだけはそうは問屋が卸さなかった。
半年たつ頃には、2階に代わりたいと心底思った。
その原因は1階周辺を恐ろしい魔獣が行き来していたからだ。
 
魔獣の正体は野良猫。
 
初めてみたときは私の部屋の小さなベランダにふらっと遊ぶにきて日向ぼっこをしていた。
最初は気に留めてなかったが、来るペースがだんだんと速くなっていった。
そしてついには、干していた服をビリビリにしたり、平気で糞をするようになった。
さすがに頭にきたが、威嚇しても意味がなく、
古典的にペットボトルを置いたりしたが効果がなかった。
最終的に、猫が入れってくる格子を全て段ボールで埋め、床には猫が歩けないようプラスティックの針がついたマットを置いた。
ようやく猫は来なくなったが、同じマンションの住人からは1階にやばい奴が住んでいたと思われていただろう。
コラムの干し方の違いが気になるなんて書いていたが、そんなの可愛いもんだ。
 
ようやく安住の地になったと思いきや、今度はアパートの裏にとんでもないものがやってきた。
「かばくろ」という店名の当時岡山ではやった豚のかば焼き丼を出す店だ。
次の日から、アパートの住人すべての洗濯物からかば焼き臭が漂うことになった。

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