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ニューヨーク単独「Last Message」感想

飛ぶ鳥を落としたお笑い芸人「ニューヨーク」の単独ライブ「Last Message」
私は大阪公演初日と配信ライブを大満喫した。

しかも、初日の終演後は気の置けないニューヨーカーと打ち上げまでできた。

もちろん左腕には屋敷さんとお揃のレジェンドダイバーを身につけて(自慢)

8本のネタ全てが面白かった。
面白いという言葉が陳腐に感じるくらい面白い。
もはや自分の中では「興味深い」という表現が的確なのかもしれない。

オープニング漫才の「メッセージ」に痺れ、
ラストの漫才はM-1に出ないと判断した2人だからこそたどり着いたネタだと感じた。

その中でも私のお気に入りは「デスゲーム」と「田舎の社長」 のコントだ。

今回の単独でニューヨーカーなら誰しも思うことがあったと思う。

それはLast Messageに出てきた全ての漫才・コントに「モデル」が存在するということ。
そして、そのモデルは「誰の、何のこと」が背景にあるのか、手にとるように分かった。

ニューヨーカーは8本のネタの起源を知る仲間であり、気持ち悪い表現をすれば「共犯者」とすら思ってしまった。

2人のさまざまな出会いや体験が「種」となり、
それを題材にニューラジオで掛け合っていく。
今考えると、それはまるでネタ合わせのようだった。
そして、単独ライブという舞台で見事にネタへと「昇華」させた。

知らず知らずのうちに壮大なネタ作りの「目撃者」であったことを、ニューヨーカーは気づかされたと思う。

どこかの媒体で屋敷が「この面白さ分かるの自分だけちゃうん?と全員に思わせたい」と語っていた。

まさしくそんな感覚に陥ってしまった。

どんなに忙しくとも面白くなる何かは転がっている。そこに気づけたり疑問を持つアンテナは私も見習いたい。

これこそが私が彼らから受け取った「Message」だったりもする。

今回の単独で際立っていたのは嶋佐和也という芸人の圧倒的な存在感だ。


純粋な漫才が2本だったこともあるが、コントインした時の「俺たちの嶋佐」は圧巻だった。

憑依時の彼の凄みは周知のことだが、今回の「デスゲーム」で演じた1人4役には驚愕した。

ニューヨークのネタの素晴らしさの一つに「分かりやすさ」という点が挙げられる。
ネタが単純という話ではなく、とにかく設定や情景をお客さんに理解させるのが上手い。

コント「デスゲーム」は多くのキャラが目まぐるしく切り替わる。しかも、全編通して動きのあるコントだ。それなのに最後までお客さんが迷子にならなかったのは、憑依のスイッチングがお客さんの理解とシンクロしていたということだ。驚くべきこである。

キャラに入る時に何を考えてるのか、本当に憑依しているのか、生まれついての才能なのか、いつか聞いてみたい。

最後の「三瓶オチ」が全公演ウケなかった理由を自分なりに考えてみた。

あれほどまでにバカバカしく、緻密で、隙のない面白さ。SMAPの歴史までフリにしたコント。

感動の余韻すら残っている中で、
「さんぺ〜です」でオトしても、
「えっ?さんぺえ?」
「三瓶とSMAPってなんか関係あったっけ?」
「何かと掛かってるの?」
と考えてしまう。
少なくとも私はそうだった。
こんなにも荒唐無稽なスカしは見たことがないからフリーズしてしまうのだろう。
質が高すぎたからこその現象だと思う。

積み上げたものを意図なく壊し、反応がないことに訝しがるニューヨークの可愛げも見ることができた。

ちなみに私は慎吾ちゃんの「まったね〜!」にグッとくる。

早くつよぽんと慎吾ちゃんに見てほしい。

個人的にMVPは社長のコント。大傑作だ。

2019年のM-1以降、屋敷さんがツッコみで毒を吐くスタイルは少なくなった。
逆に嶋佐さんに毒を持たせ、屋敷さんが常識人としてツッコむと見せかけて言い過ぎてしまうという構成が多くなったように感じる。

2020年のM-1で披露した「軽犯罪」はその集大成で、ナイツ塙さんは「毒を以て毒を制した」評した。
毒を飼い慣らしたのだ。
そして今回の社長のコントは完全に「毒を裏返した」
「バカタレ」という言葉の緩急だけであれ程までに「人」を表現できるものなのか。
人の心を動かせられるものなのか。

また、高橋くんが社長の机に灰皿をすっと置き、喋ってる途中の社長が喋るのを一瞬辞めて「あ、わりぃのぉ」と言うシーン。

ネタの本題には全く関係なく、本来なくてもいいやりとりなのだが怖いくらいの自然さがあった。
そして「そういった立ち振る舞いができる高橋くん」と「高橋くんには気を遣っている社長」という、人物像に深みを持たせるために必要なシーンだったと思う。

本当にそういった世界が存在していると錯覚すらした。あのやりとりを台本に入れるという細部へのこだわり、それともアドリブだったのか?
末恐ろしさすら感じて鳥肌が立った。

元ネタなる人物がいることも驚愕なのだが、一般の人を題材にここまで凄いネタが出来るなんて驚愕だ。

逆にいうと嶋佐の怪演ありきのコントであり、それがなければ逆に毒に喰われていただろう。

ちなみにお笑い二刀流であった「イ○ウ」のコント。本人と会ったからこその感想だが、本当にあのまんまだ。本人が憑依しているかのような鳥肌ものの瞬間が何度もあった。

嶋佐和也という芸人は計り知れない。

どうでもいいことだが、配信では社長のコントが始まる3秒前に嶋佐さんが「携帯持ったか?」と小声で屋敷さんに確認してるのがマイクに入ってます。

たくさんの方に見てほしい単独である。
たくさんの人の感想が聞きたい。

一年で1番楽しみな日が誕生日ではなくなってからかれこれ20年が経つ。
これからはニューヨークの単独が一年で1番楽しみな日になるだろう。

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