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⑻ 11月7日 最後の診察①


病院に到着。
彼は一度家に戻り、待機してくれる事になった。


大きな病院だか、
流石に午後は 診察の人のピークは超えていた。




産婦人科。

普段は不妊治療で有名な
婦人科専門のクリニックに通っているので
お腹の大きな妊婦さんや
赤ちゃんと同じ空間は久しぶりだった。




こんなタイミングで
近くに顔見知りを見つける。
小さなキーホルダーで、妊婦さんなんだと分かる。


複雑な気持ちがなくはないけど、
他人の幸せに触れて ほわっとした気持ちになる。




それでもこちらの状況だけに、
あまり顔を合わせたく無いという気持ちから
被っている帽子を さらに目深にし直す。

知ってる彼女とは逆の方向にある
受け付けに向かった。





予約はあるが、
初診の為 問診票の記入があった。

流産という項目はなく、自分で書き加えた。
受け付けに提出し離れて座る。



静かな空間に
受付の人の声は通りやすく、少し離れていても
内容まで聞こえてしまっている。

あー、、しかもここは名前で呼ばれるようだ
出来れば存在を消しておきたいのに。





ご丁寧にフルネームで呼んで頂き、
体重と血圧を測る。


沢山の部屋があったが
私の診察室は一番奥だったのが救いで
予定時刻まで約30分、
人知れず一呼吸置いた。





思ったより早く呼ばれ診察になった。

若い男性医師は物腰柔らかく、
丁寧に問診してくれたが

文字の入力が達者で
言葉とチグハグな
耳に触る大きめな音を叩いていた。


繋がる隣の部屋に案内され
いつものと違う診察台に上がり、
少し緊張感がある診察が始まる。




しなくてはならない処置があったようで
思わず、
そこが痛いです と
声を歪めてしまったが

言ったからどうなるわけでもないと
分かってもいた。


不妊治療をしていると
そういう処置なんかに慣れるかというと

する方とは違って
私は 診察台も冷たい器具も全然慣れない。



身体が強張るような処置が終わり、エコーが入る。





これが最終確認。
2日前の様子と変わったようには見えなかった。
エコーに映る変わらずの黒い丸い空間と
中で丸まったかたまり。



診察は終わり、再度椅子に移動する



やはり心拍は確認できませんでした。と
分かってはいるけど、
もう一度
はい、と受け止める。


元々体質的に
血小板が少ないので 血が止まりにくく
大量出血の懸念もあり
総合病院に転院となったのだが、

医師の丁寧な説明によると
自然排出を待つのが、結局は一番負担も少なく
肝心の出血も少なくて済むそうだ。



だか、いつそうなるかは分からないし、
そうなった後に、どうなるかは分からないので

もしもの時は深夜でも
いつでも診察をしてもらえると言ってくれた。



そして 胎嚢が出たときの処置も教えてもらう。



嫌な気持ちとかにはならなかったが、
反射的にサービス業的な
少し笑みを浮かべて
処置の説明をする側との
温度差を感じながら 頭を整理する。




自然排出は
時によれば4週間かそれ以上か
いつあるか、どうなるかそれぞれで
予測がつかないという医師の話もあり、


手術を受ける気で来たもので、
少し肩透かしを食らったような気分と

今現在では、
確実に確保した休みは数日だったので

長くなるようだったら手術を望むと、
言葉を選びながら伝えた。



医師が、再度丁寧な言葉で説明をしてくれ、
ひとまず11日後に予約を取って
診察室を出た。




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