Ryu
我が言葉の群れ。
私の孔雀は庭にいる 私にだけは羽根を広げるのを見せようとはしない それは自分で決めたことだから文句は言わないが それでも同居しているのだ 一咲きくらいはしてくれたっていいだろう ある朝 私は大きな鶏を買ってきた もちろん食べるつもりだがそれは秘密で そうしたら孔雀は見事に羽根を広げた 私は孔雀を庭で抱いた
私はあなたとは違う あなたはあなたを知らない 私はあなたを知っている あなたは私を知ろうとしてくれる 私はあなたを知り私を知る あなたは私を見てあなたを知る そうやってずっと生きてきた そうやってずっと生きていく 生きる 生きる 生きながら歩き 泣き 笑い 培い 繋ぎ 働き 怠け 触れる 優しく
華奢で滑らかな腕の曲線を眺めている 水蜜桃の汁気を拭う 細長いナイフとフォークで精密な工作みたいに 肉から骨を引き剥がす カットされたガラスの群れが天井から塊となってぶらぶらと垂れ下がり真昼のテーブルを照らす 欲望の源はすべてテーブル上に並んでいて我儘さとあどけなさと周到な哲学が三つ巴となって混沌を呼びつける 他愛無いお喋りをする隣人たちをよそに小さな匙を泡立つスープに突き入れる
僕らは音楽を求めてやまない。 ピアノがはじけるようにリズムを奏で ドラムが我が物のように踊り出す ギターが小刻みに歌い パーカッションがそのすべてを楽しさに変えていく その音楽に滑り込むようにボーカルの声が僕を揺らす そしてともに揺れる木々の葉を見ている 風を感じている 踊る 弾む 怠惰を味わい尽くす それが生命そのものであるみたいに
陽射しで海が白く見える。 風が起こり紙ナプキンを飛ばす。ひとりだけの客である私は目を細めて水平線を飽きることなく眺めていた。水滴、じわりとコップの底に流れてテーブルを歩く蟻を飲み込んだ。 こういう時間を私は大切にしている。現実に空想を重ね合わせること。 無人に見える漁船、目測を見誤る鳶、飛び跳ねる魚をあらかじめ決めておく。 空の広さと同じだけ、海中もまた広々と果てしなく続いているのだと砂浜を転がっていく紙ナプキンに書きつける。
旅と、音楽と 美味い酒と飯と、 美しくも堕落した世界を愛する そういう店でありたい。 そんな画家でいる。 そんな気配を持つ部屋を作る。 陽射しも 犬の鳴き声も 草木の揺れも グラスに浮き立つ水滴も 他愛のない言葉の駆け引きも 猫達の惰眠さえも