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龍の巣②

この世界最大の暗闇と言われる洞窟が、なぜ「龍の巣」と呼ばれるのか。

「この中には母親の龍が居る。それを追って、父親と子供たちの龍がここに集まってきた」
ミャオ族の言い伝えである。

この洞窟の成り立ちは、インド亜大陸が、ユーラシア大陸と衝突した5000万年前に遡る。その衝突の際に、ヒマラヤ山脈が隆起した話は有名だ。インド亜大陸は今でも北上を続けており、今でも年に5センチほど、ヒマラヤは隆起し続けているという。
この時の衝突が、中国の南部にある貴州省の地形を作ったと言われる。

ミャオティン(龍の巣)は貴州省の安順市にある。



安順市は貴州省中西部に位置しています。面積9,269㎢、人口260万です。かつて「雲南の喉、貴州の腹」と呼ばれ、昔から貴州の要衝の都でした。
安順市の特徴としてカルスト地形が随所でみられます。河川や渓谷が縦横に交錯、石林が広く分布し、約100の滝と約1,200の鍾乳洞があります。なかでも黄果樹瀑布と龍宮、格凸河風景区の国家クラスの景勝地は絶景です。他には、明代の軍事の遺物・屯堡、中国劇の化石といわれる安順の地方劇も有名です。
中国で最も長い鍾乳洞とされる「龍の巣」は、紫雲ミャオ族プイ族自治県の格凸河風景名勝区にあります。格凸はミャオ語で聖地という意味です。長さ700m、幅215m、高さ80mに及ぶ「龍の巣」の容積は世界最大、面積は世界第二位です。

上記、観光案内の引用中での数字であるが、実際のスケール(大きさ)はというと、容積は約1078万m3(立方メートル)、全長は約870m、高さが最も高いところでは約185mということである。

この龍の巣は、最初は小さな水中洞窟だった。それが、インド亜大陸の衝突と続く北上が、この土地の土壌に大小の、数えきれない亀裂を生んだ。その亀裂を伝って、もともと水中洞窟、鍾乳洞であったここに、水が侵入してきた。時には激しい奔流となって。それは繰り返される。なぜなら、インド亜大陸は今でも止まることなく北上を続けているからである。

つまり、「龍」の正体というのは、「水」であった。

「母親の龍を追って」「父親と子供の龍がここに集まってきた」
もともと、ここにあった水の流れに、亀裂を通って大小さまざまな水の流れが合流して、幾万年もの間に、巨大な洞窟を形成したのである。

「龍」の概念について、インドの蛇信仰が中国にわたり「龍」の概念と結びついた、と見られるが、もともと雨や川、雷、といった、水そのものを表す概念で、日本や東南アジア各地にその影響が見られる。

これは、まさに、インド亜大陸のユーラシア大陸への衝突が、ヒマラヤを生み、ヒマラヤの大量の雪解け水が、遠く遠く、様々な土地に水をもたらし、衝突で出来た亀裂を伝って、中国の南部にまでその水を行き渡らせた、というそのストーリーと一致する。

文字も何も、伝達の術がなかった時代の途方もないストーリーが、長い長い時を経て、漆黒の闇が光に照らされたときに、現代のわれわれの目の前に、ある整合性をもって登場する。

今回、この番組を見て、その映像とそれを映し出した技術に素直に感心したのだが、このブラックホールのような闇に、光を当てることは果たしてどうなのか、という思いに捉われた。

地質学的な謎が解明される、という成果はあったであろうが、今後、中国政府がこのミャオティンをどうしていくのかなあ、と、ふと思った。
こうやって人の目に晒されるようになったことは、果たしてここに住むミャオ族の人々や、中国にとって、どういう影響があるだろう。
人は、最先端の科学技術がなくても、真実を認識する能力があるのではないか。そして、全てを暴くことがいいのかどうか、という事も、知っているのではないか。
「そこは龍の棲む冥界、決して入ってはならない」というミャオ族の伝説には、やはり真実が宿っていると思うのだ。

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