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「想い出はモノクローム 色を点けてくれ」(君は天然色について)

ダイハツのCM、ムーブキャンパス「COLORING LIFE 海」篇で流れてくる藤原さくらさんの「想い出はモノクローム 色を点けてくれ」といった歌声を耳にされた方も多いことと思いますが、この曲は日本語でロックを始めたはっぴーえんど(大滝詠一、松本隆、細野晴臣、鈴木茂)でボーカルだった大滝詠一さんの「君は天然色」のカバー曲です。

ちなみに、大滝詠一さんは、2003年の12月に亡くなられているため、生の肉声をもう聴くことはできませんが、「君は天然色」が収録された1981年3月21日発表のアルバム、「A LONG VACATION」でご本人の歌声を聴くことができます。

あまり知られていませんが、じつはこの「A LONG VACATION」は、世界ではじめてCD化(CBS・ソニーレコード株式会社静岡工場製)されたアルバムで、製品番号は35DH1(35は3500円、DはDigital(CD)、Hは邦楽、1はカタログ通し番号)となっています。

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「君は天然色」の作曲は大滝詠一さんご本人で、作詞ははっぴーえんど時代の仲間でもあり当時ドラム担当だった松本隆さんとの久々のコンビによるものですが、当初は松田聖子さんのバックコーラスで活躍し、女性ポップスシンガーとしてデビューしていた須藤薫さんに提供される予定の曲でした。

ただ、曲自体がやや男性的であったことを理由に不採用となったため、大滝詠一さんのところに戻されるという運命的な曲でもあったのです。

また、このアルバムは当初1980年7月28日に発表される予定でしたが、発表直前に最愛の妹さんを亡くした松本隆さんが作詞できる状況になかったため、松本隆さんから「誰か別の人に頼んで欲しい」といったリクエストがあったにもかかわらず、「君の詩じゃないとだめだからいつまでも待つよ」と松本隆さんの詩を約半年待ち続け完成した曲でもあるのです。

そして、ようやく完成しこのアルバム、「A LONG VACATION」の代表曲となった「君は天然色」の歌詞は、最愛の妹さんを失い行き詰まった精神状況で見た街の景色から「想い出はモノクローム」、何色でもいいから色を染めて欲しいということで「色を点けてくれ」、と作詞されています。

ここまででもひじょうに興味深い話ばかりなのですが、この曲にはまだあまり知られていないことがあります。

2011年3月21日に2枚組で発売された「A LONG VACATION 30th Edition(製品番号SRCL8000~8001)」のTRACKS盤(純粋なカラオケ版)の11曲目の「君は天然色(Originar Basic Track)」には

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「想い出はモノクローム 色を点けてくれ」といった歌詞部分は自分の声が出ないからとハーモナイザーで半音さげられる前の本来の「君は天然色」の純粋なTRACK(カラオケ)が収録されており、じつに30年間明かされてこなかった「想い出はモノクローム 色を点けてくれ」といった部分は本当はこうだったのか思い知らされる曲でもあったのです。

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