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編集者は素敵なライターさんと出会えることで生きていける

今日、Dybe!で編集を担当した記事が公開された。

前職のRettyグルメニュース時代から「いつかお仕事ができたらいいな」と思っていたので、無事に1本目をリリースできたことに安堵していると同時に、これまでいくつもボツになった企画があったことは、媒体のカラーに沿ったネタ出しがいかに難しいかということを再確認するキッカケにもなった。

Dybe!は僕にとってかなり思い入れのある媒体で、確か初めてその名を知ったのは吉玉さんのこの記事がキッカケだ。当時はTwitterをほとんど触っていなかったし、自分がどうやってこの記事に辿り着いたのかは定かじゃないけれど、とにかく僕はDybe!に出会った。

それ以降、更新のたびに記事を拝読していたし、なんとなくテイストも分かっているつもりだった。ただ、それゆえ「はいはい、こういう感じね」と高飛車になっていた気もする。自分が関わることになったらこの人に執筆をお願いしたい、と予想をつけたりもしていたくらいだ。

それが、過信に繋がっていたのだろう。今思えば初めて提出した企画の解像度はかなり低かったし、「よくこれでいけると思っていたな」と感じるものさえある。編集長からの愛あるフィードバックも背筋を正してくれたし、それを機にDybe!のトンマナやフェーズに適した書き手探しに、かなりの時間を費やすようになった。

ところでDybe!の編集長であるカザーキーさんとは、1度だけお会いしたことがある。Twitter経由で「会いましょう」と送ったら快諾してくれて、新宿の彩心というお店で飲んだ(オススメ!)。プロレスをやっていたとの情報があったので、もっとゴリゴリのガタイMAXな人が来ると予想していたけど、シュッとして落ち着いた大人の男性だったこと(とそのギャップ)を今でもよく覚えている。あと、声がセクシーだ。

当時の僕は今よりもトガっていて、編集者(ひいては1人の人間)として日々感じるモヤモヤやストレスをそのままTwitterに書いていたんだけど、「岡田さんのそういう熱いところが好きです」なんて言いながら、1歩引いた目で楽しんでくれていた。

そういう熱い部分を買ってもらい、今Dybe!でお仕事をさせてもらってる面も多少あると思うので(?)、感謝しかない。その後も何度か複数名での会食にお誘いしたことがあったのだが、タイミングが合わずにそれきりになっているのが寂しい。また近々会いましょうね!

と、まぁ前置きが長くなったけど、水面下で動いた期間が優に約3ヶ月を超えてしまったDybe!でのお仕事が(完全に超個人的な)節目を迎えたので、(まだまだ進行中の企画はあるんだけど)映えある1つ目の記事を担当してくれたサカイエヒタ氏について今日は書きたい。

サカイさんとは面識も何もない、ただTwitterで相互フォローしているだけの関係性だった。リプを飛ばしあったりということもなかったし、なぜフォローしたのかも正直記憶が曖昧だけど、「ヒャクマンボルトという会社の代表なんだな」とだけは知っていたし覚えていた。

正直、最初は「変わった社名だな、ピカチュウが好きなのかな?」くらいの印象で(すいませんw)、当時は彼をこんなに好きになるとは想像だにしていなかった。過去に1度だけ、彼の書いた記事がTwitterのタイムラインに流れてきて読んだことはあったのだけれど、その記事を読んで直接依頼したわけではないし、その記事を書いた人だということも忘れていた。

とまぁ、定かではない部分も少なからずあるが、TwitterのDMで彼に依頼すると「是非」とOKしてくれたので、媒体説明と企画の趣旨を伝えてネタ出しに移ってもらうことに。
(※今回はコラムの執筆依頼だったので、大枠となるテーマはありつつも、ネタ出しから書き手にお願いしている)

ざっくりとしたスケジュールを伝え、アイデアを待っていると予定よりも前倒しでネタが上がってきた(Point.1)。そのネタは媒体のトンマナともマッチしており、ほとんど僕の方で追加修正することなく編集会議に提出でき、そこでも無修正でOKが出た。

この時点で「ネタに対する編集者のフィードバック→書き手が反映→確認して会議に提出」「提出したネタに対する編集部からの修正依頼をフィードバック→書き手が反映」という、2ないし3ステップが一気にスキップできたことになり、早速執筆に移ってもらうことができた(Point.2)

経験上、こういう事例はかなりレアだ。僕はライターさんからいただいたネタにはしっかりメスを入れるタイプだけど、微調整はしたもののサカイさんに関してはほぼ無修正。編集会議を通した別の編集者視点からも、ツッコミどころがほぼ見つからなかったのはすごいと思う。

この時点で再度スケジュールを引き直し、サカイさんと協議の上で原稿完成(提出)までの時間をかなり巻いた(納品が前倒しになることは素直に嬉しい)。しかし、提出期限の数日前に「諸事情で間に合わないかも」との連絡がきたのだ。もともとの予定よりも巻きのスケジュールに変更しているので、「じゃあ1週間伸ばしましょう」と提案すると「そんなにいいんですか?大変助かります」と感謝された(Point.1)

その後、指定した期日よりもやはり前倒しで原稿が納品された(Point.1)。完成度は高かったものの、ツッコミどころはいくつかあり、そのことを伝えると「自分でもそこは詰めが甘いと思ってましたが、バレちゃいましたか」との連絡があったので修正してもらうことに(Point.3)

少し期間を設けてあがってきた修正稿を確認すると、解像度が低かった部分がしっかりアップデートされた状態に仕上がっていた(Point.4)。微調整だけして完成したものを編集部に提出し、ほとんど修正なく公開されたのが今日の記事だ。

率直に言って、僕はサカイさんとお仕事をしてみてすごく気持ちがよかった。ある日の深夜、ふと"振り返った時にどこがどうよかったのかをnoteにまとめたい!"と思いたち、今この記事を書くに至っている。

一連の流れの中で、彼の何がどう素晴らしかったのかを【Point】に分けて解説したい。

【Point.1】締め切りは守るのが当然、かつ締め切り前に提出できればかなり強い。守れないとわかった時点で自ら報告しよう

ライターさんと編集者にまとわりつく締め切り。当たり前のことだが、締め切りは守るのが当然の義務であり、どんな理由があれ事前の連絡なしに遅れてくることはもってのほかだと考えている。

この業界にいるとそんな感覚がマヒする出来事も多々あるし、「遅れてくるもんだよ」とか「それをコントロールするのが仕事だよ」と言われることも死ぬほどあるが、一理あると思いつつ、納得はしていないし毛頭する気もない。なぜならきちんと締め切りを守る人も大勢いるからだ。きちんと守る人がいるのに、守らない人を擁護するようなスタンスではいたくない。

とはいえ(他)人を変えることはできないので、僕もなるべくお互いにストレスなく仕事ができるような工夫はしている。あくまでスケジュールは目安とし、遅れてもいいような進行を心がけたり、定期的にいやらしくない程度のリマインドをしたりするなど(他にもいい方法があったら教えてください)。

サカイさんの素晴らしいところは、与えられた納期よりも常に「前倒し」だったこと。納品が遅れそうなことがわかった段階で、自ら報告してくれたことの2点だ。これだけで圧倒的に信頼度が変わるし、次回以降で、もしまた遅れることがあったとしても、毎回遅れる人に比べて寛容になれる。

当たり前のことを当たり前にできていない人が多い中、当たり前以上のことができるのは強い

また、納期を後ろ倒しにする提案をしたときの「そんなにいいんですか?」にも心を打たれた。編集者にとって締め切りは死活問題であり、それに追われて仕事をしている内情を分かった上での心遣いなんだろう。

こちらも納得のいく形で原稿を完成させてほしい思いがあるし、気持ちよく仕事がしたい。作品の完成度を向上させるという共通のゴールに向かって、両者が思いやりを持ちながら仕事に臨めたのはすごくよかった。ひとえにサカイさんのスタンスの賜物だと感じている。

【Point.2】書き手にとって大事なのは「自分が書きたいこと」を優先するよりも「媒体のカラーに寄り添った上で、どれだけ自己主張できるか」を考えられること

初めて書く媒体において、そのトンマナを理解するにはある程度の経験や時間が必要になる場合が多い。こちらも最初から完璧なものを求めているわけではないし、ブラッシュアップすることでよくなるネタの原石もある。

でも、サカイさんの場合は早期段階で媒体へのフィット感があった。これまでの人生や携わってきた仕事などに起因するので、たまたま適合性があったという見方もできるのだが、個人的には共鳴能力が高いと予想している。

ライターさんの中には「自分が書きたいこと」を優先させてしまう人も少なくない。もちろんそれが悪いことではないのだが、「書きたいこと」が先行してしまうと、媒体のカラーに寄り添うことを忘れてしまいがちだ。

お仕事として依頼している以上は、媒体側にも意図があるし、「こういう記事を書いてくれたら嬉しいな」という希望もある。ゆえに大前提その部分(依頼意図や媒体理解)は必要最低限のスキルとして求められる(気がする)のだけれど、サカイさんはその意図を汲みとる共鳴能力が優れている。

もし仮に、「そんなにすぐ完璧には理解できない」と感じる人がいても大丈夫。できないからこそ、自己主張を控え、依頼先に質問してみてほしい。意図を理解しようとしてくれる姿勢が伝われば、それをめんどくさがる編集者はいないだろうし、ぞんざいに扱ってくる編集者とは仕事をしなくていいと思う。

【Point.3】本質が問われるのは初稿ではなく、2稿以降!指摘は素直に、そして前向きに受け止めるのが大事

「初稿が完璧すぎて直すところがない!」なんてことは、今までの編集者人生で1度もない。誤字脱字、表記ゆれ、漢数字か算用数字か、タイトルや見出しが適切か、などの細かい修正は必ずと言っていいほど存在する。

内容に関してはもっと顕著で、本人が腹落ちしていない部分は、読者からすると必ず引っかかる(編集者は最初の読者なので、わかりづらい部分があれば伝えるのが仕事)。

悪気がなくても、書き手は自分の気づかないところでバイアスがかかってしまうこともあるし、自分なりのルールや価値観もあるだろう。もちろん、それは大事にしてもらって構わないが、指摘は素直に受け止める気持ちが大切だ。

サカイさんの場合は、きっと自分でもなんとなく指摘されるであろうことがわかっていたし、指摘されたらされたでそれを素直に認めて「バレたか〜」と冗談っぽく落とし込めたことがよかった。

(あくまで個人的な見解だが)編集サイドの意見を代弁すると、修正点を伝えるのは正直ツライ。せっかく時間をかけて書いてもらった原稿に、ケチをつけていると捉えられてしまうこともある。ツライ。でも、違うんだ。お互いに意見を出し合うことで、さらによくしたいだけ。

だからこそ、サカイさんみたく修正点や指摘について前向きな反応がくると救われる。

もしかしたら、もともと再考する心算ができていると、スっと修正に向かえるし、切り替えられるのかもしれない。修正箇所を再考するときに前向きなスタンスで入れるかどうかは、その後の創作活動に大きく左右すると思っているので、ライターさんは初稿提出前に自身でも「ココはもしかしたらツッコミが入るかも?」と予想してみるといいのかも。

自分が一生懸命書いたものを、指摘されたり修正されることは苦しいかもしれないけど、予め予想しておくことでダメージは軽減されるはずだ。

【Point.4】ライターさんはとにかく筆力が全て!

言うまでもなく、ライターさんにとって何よりも大切なのは筆力だと思っている。写真の撮れるライターさんが重宝されるみたいな話もあるが、小手先の部分よりも「書く」ことこそ極めてもらいたいし、筆力がないとそもそも依頼する気にはなれない(あくまで僕の場合です)。

もちろんその他のスキルも長けているに越したことはないし、自分の個性を出すために筆力以外の部分を極めるやり方を否定するわけではないが、「書く」以外の業務はぶっちゃけ編集者(または他の職種の人)でもできる。

自分にもできること(撮影、取材アポなど)を代わりにやってもらえるのは工数削減になる点ではありがたいし助かるものの、「自分には書けないようなイケてる文章を書いてくれる」に勝るインパクトはない

自分にないスキル(筆力)を持っているライターさんと、自分にもできる(もしくは替えが効く)仕事を代わりにやってくれるライターさん。どちらが上とか下とかではないし、息が長いのがどちらかもわからないけれど、差別化の観点だと圧倒的に前者が強いし、後者はライターさんとしての個性というよりは、幅広く仕事を取りたい人のためのメソッドな気がする。

仕事を取りたいとか、お金を稼ぎたいとかであれば後者は一定水準で重宝されるだろう。でも、「書くこと」を極めたい人にとっては路線が違うのかもしれないな。

編集者は、ライターさんに依頼する時に少なくともいくつかの作品に目を通していることが多い。だからもし、自分が(依頼段階で)想定していたよりもいい原稿が上がってくると単純に嬉しいし、「この人に頼んでよかった」となる。写真が撮れるとかより何十倍もいい文章が書けるかどうかのほうが「この人に頼んでよかった」となりやすい。

編集者とライターさんがいいバディになるためには、お互いに対するリスペクトが1番大事な要素になる。そのリスペクトが1番顕著に表れるのが、筆力の差だ。

編集者がライターさんに対して「かなわないなぁ、いい文章書くなぁ」と思えない関係では、いいものが作れるわけがない。編集者を惚れ込ませる書き手に出会えることは、この仕事の最も喜ばしい瞬間の1つだし、1人でも多くそう思えるライターさんと出会えることを願いながら僕は仕事をしている。

以上、僕が超個人的な編集者目線で感じた、サカイさんの素晴らしいところの解説でした。賛否両論あるでしょうし、それぞれの【Point】はあくまでも僕目線なので、タメになる人とそうでない人が分かれると思っています。でも、少しでも誰かの心に響けばそれはそれで幸いです。

是非、優秀な書き手を探している人はサカイさんに連絡してみてください!こんな僕と仕事がしてみたいというレアな方がいたら、そういう連絡もお待ちしています(笑)。