Colaboの休眠預金からの助成金1億円について。会計処理から検証してみた。

昨年秋頃から、Twitterを中心に話題となっている一般社団法人Colaboの不正会計疑惑について。元会計士試験受験生で、一応日商簿記1級を取得しており、一般企業での経理や監査(内部監査・監査法人による外部監査両方)の実務経験がある立場から疑問点を書いていこうと思います。
私自身、Colabaだけでなく所謂ナニカグループ全体に対して、一般に公表されている資料(会計資料や活動報告書)や暇空茜氏を中心に開示されている資料を踏まえて、助成を受けている金額に見合った事業を行っているか、その妥当性には疑問を持っています。また、税務的な視点では、NPO形態や非営利型一般社団法人としての要件を満たしているか(=税制面での優遇が妥当か)も疑問視しています。Colaboに関しては、東京都の住民監査請求の再検査の締め切りまであと1週間ほどなので、会計処理が正しく行われているかを含めて、どのような判断がされるのかを注視したいと思います。


初投稿となる今回は、パブリックリソース財団から助成された所謂休眠預金1億円について書いていきます。解釈が難しい部分があり、助成金を使っていないのでは?といった声もちらほら目にするため、題材に選びました。一般に公表されている、ColaboのHPに記載されている2021年度活動報告書と貸借対照表、Colaboからパブリックリソース財団に提出されている事業完了報告書の3点の資料から、どのような会計処理が行われているかを考察していきます。なお、あくまで一般的な会計処理を行っていた場合を想定しておりますので、イリーガルな会計処理をしている場合は本記事の内容は的外れとなることをご承知おきください。また、一般企業の会計処理との違いを確認しながら執筆しておりますが、内容に誤りがありましたらご指摘頂けますと幸いです。

2月21日追記
休眠預金については、こちらに詳しく解説されている方がいらっしゃったので、ご参照ください。
https://note.com/embed/notes/nf954d5365ec4

まず、上記3資料の会計処理を正とした場合、助成金1億円と積立金1億円について推測できる結論を書いておきます。

・助成金1億円は、土地の購入と建物の建設に使用した。約360万円オーバーした分はColaboで負担した。
・2022年3月末時点で、1人入居して①いない、②している、かで以下のどちらかになる
①会計処理は問題ない。私の願望としては、待たせている子は早く入居させてあげてほしいし、他7室も早く使ってほしい
②減価償却の計上漏れ。私の主観では、不正とまではいかないが、今後は気をつけてほしい。私の願望は①と同じ
・シェルター居場所増設職員雇用積立金1億円は、助成金とは結びつかない全くの別物。前年度末に6000万円積み立てていたところに、さらに4000万円積み立てた。助成金と同額になったのは偶然。

これらの内容を、【1】助成金1億円の処理、と【2】シェルター居場所増設職員雇用積立金に分けてみていきます。

では、結論を踏まえた上で中身に入っていきます。上記の資料から推測される本件の活動の流れを仕訳にすると、表1のようになります。
・パブリックリソース財団より1億円の助成を受ける
(助成金は、基本的には受取助成金勘定での処理となる。しかし、今回のように使途が指定されている場合は一般の受取助成金と区別するため、指定正味財産勘定で計上する。正しい処理であり、問題ないと思われる)
・助成された1億円を元手に、一部自己負担で土地の購入、建物(8部屋のアパート)の建設を行う
(厳密には、建設中は建設仮勘定などが発生しますが、最終的に建物に振替されるため省略)
・期中のどこかで、シェルター居場所増設職員雇用積立金を4000万円積み増しした(現預金からの組み替えで特に問題はないと思われる)

表1

103,568,896円の根拠
→Colaboからパブリックリソース財団に提出された事業完了報告書

https://www.janpia.or.jp/josei/johokokai/corona/2020/anytime/download/C20_12/C20_12_091/C20_12_091_kanryo.pdf

【1】助成金1億円の処理について
Colaboの2022年3月末の貸借対照表に、指定正味財産として1億円残っていることから、表1の内容が2022年3月末の段階で仕訳として計上されていると考えられます。2022年3月末の段階で利用開始していなければ、表1の仕訳のみで完結していて、特に問題はないと思います。
しかし、事業完了報告書には「1名の入居が決定している」と記載されています。もし2022年3月末の段階で1人入居していた場合は、建物が使用を開始しているという扱いになるため、1ヶ月分の減価償却が必要となります。仕訳にすると、表2のようになります。なお、減価償却の金額は、建物の取得金額、形態(木造か鉄骨かなど)によって減価償却の計算式が変わり、断定が出来ないため、?にしています。

表2

表2の仕訳を実施すると、指定正味財産は減価償却の分減少するため、1億円丁度残っているのはありえません。そのため、考えられる事象としては以下のどちらかかなと思っています。
①入居は決まっていたが、3月末時点ではまだ入居していない(公表されている資料に基づく数値はこちら)
②入居していて、表2の仕訳の計上が漏れていた

①の場合は、元々8名を入居させる予定なのに、決まっているのが1名で且つ入居すらしていない状況になるので、早く対応してあげてほしかったと思います。会計処理の問題ではなく、事業の内容の部分になってきますね。
②の場合は、減価償却の計上漏れは一般企業だと税務署に指摘される案件なので、自分たちで運営していく以上は、適切に管理してもらいたいところです。なお、Colaboは非営利型一般社団法人で、課税対象となる34種類の収益事業は行っていない、もしくは実施していたとしても赤字とされる(法人税が均等割りの7万円のみから推測)ため、表2の計上が漏れたとしても税務に影響はありませんし、全体的な金額にもあまり影響がありません。よって、不正まではいかず、来年度以降気をつけてくださいレベルの不備扱いになると思います。しかし、①でも同じですが、7名分の空室がある状態には変わりないので、1年前の事象ですが早く対応できていることを願っています。

【2】シェルター居場所増設職員雇用積立金について

私自身、この勘定科目は見慣れておらず、恐らくColabo側で独自に設定しているものであると思っています。中身としては、将来別のシェルター(助成金1億円のものとは別で)を建設する際にすぐに取り掛かれるよう、通常の現預金と分けて管理しているものだと推察しています。金額の根拠としては、本件で約1億円で8部屋のアパートを建設したことから、その実績を1つの目安として、1億円になるように2021年3月末の6000万円から4000万円追加で積み立てたものではないかと考えています。そのため、助成金1億円と同額になり、怪しくみえただけなため、問題視する内容ではないと思っています。
なお、私自身は、新たに建設する必要があるのか(空き部屋をリフォームなどでは駄目なのか)、8部屋のアパートを建設するのに1億円が妥当なのか、といった疑問を持っていることは付記しておきます。


まとめ

今回は、一般に公開されている資料から、休眠預金より助成された1億円の会計処理について検証してきました。今回使用した3つの資料を正としてみれば、会計処理としては特に大きな問題があるとは考えておりません。妥当性には違和感はあるけど、おかしいと断定は出来ない状態です。しかし、イリーガルな処理をしている場合は話は別なので、監査の結果を待ちたいと思います。
Colaboに限らず、一般に公開されている会計書類や活動報告書から読み取れる情報は沢山あります。しかし、実際の会計処理や活動の詳細は監査や立ち入り検査、書類の開示請求を行わないと分からない部分も多くあり、目に見えない情報や憶測を持って断言することはデマの流布につながり危険だと思っています。特に現在、Colaboや所謂WBPへは負のバイアスがかかっており、フラットな目線での判断をしにくくなっている状況です。事実と憶測の区別をしっかりつけた上で、議論していければよいと思っています。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。訂正やご指摘、リクエスト等ありましたらコメントいただけますと幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?