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16代目王者はマヂカルラブリー 奇跡の戴冠を振り返る

【東の無秩序が起こしたうねり M-1史に残る死闘】

言葉にならないというのはまさにこのことである。
混戦を制し、チャンピオンフラッグが東に渡り、野田クリスタルが涙を浮かべた瞬間の感情だ。

見取り図、おいでやすこがにも票が割れ稀にみる死闘だった。
とんでもなかった。すごかった。

敗者復活組がトップバッターを務めたのもM-1史上初。
冒頭から波乱を匂わせたM-1 2020はまさにそれを踏襲する結果となった。
今年も目の離せない展開となった今大会を振り返りたい。

俺らのボスが暴れまわる 野田クリスタル覚醒

優勝予想に彼らを選ぶことができた人がどれだけいたのだろうか。
特に筆者のように予選を見てきたお笑いマニアたちにとって、彼らを信じ切れなかった人は多かったのではないかと思う。
とにかく、私はまずマヂカルラブリーの二人に謝りたい。
信じきれずにすみませんでしたと。
なぜ予選で一番笑わせてもらっている彼らを、俺らのボスを、なんとなく世間に認められないんじゃないか審査員にささらないんじゃないかというモヤっとした理由で選びきれなかったことを謝りたい。

前回のコラムでも軽く記したが私の3連単はオズワルド、見取り図、ニューヨークだった。
本のしっかりしている正統派コンビらが、審査委員の評価の得ると思っていた。
もちろんそこには準決勝でみて得た主観に起因しているところもあった。
そして「マヂカルラブリーは面白いし、ウケをとることは間違いないけれども
審査員のジャッジは割れるのではないか。とくに巨人、礼二には辛くうつり伸び悩むのではないか。そして去年の史上最高ミルクボーイのフリもあるためしゃべくり漫才の強さを認めた審査員らにネガティブに映るのではないかと。松本人志も同様となってしまうのではないか」と、今となってはただの素人のすかした予想をかましてしまっていた。
礼二の最終投票をみればわかる通り劇的な展開となった。

最初の爆発 おいでやすこが 壮絶なシャウト

マヂカルラブリーと同様に正統派ではないユニットコンビ、おいでやすこがが5番目でネタを披露した。そして得点は周知の通り10組を終えてトップ通過の圧倒的得点をたたきだした。
大方の予想を裏切る高得点。松本人志にいたっては「わかっているんだけど笑ってしまう」
として自身最高の95点をつけた。
その流れを受けてでたマヂカルラブリーの漫才。2位につける得点。
筆者はそこで「イレギュラーな展開に振れた」と感じ、衝撃をうけた。
無くはない展開ではあったのだけれどもまさかこうなるとは。

その後の展開は本命オズワルドが伸び悩み敗退、序盤に空気をもっていかれた錦鯉も4位で辛酸をなめる結果となった。
大声系だったりで荒れた場の後に「静の漫才を期待してしまった、ツッコミが後半あがっていったのが良くないと感じた」と松本の評価があったがまさしく出番順の妙を食らう形となってしまった。
巨人が松本とは真逆に評していたように、決して伊藤の声色の変化は筆者も悪くなかったように思う。出来も最高だったと思う。仮に松本が94点くらいをつけていれば最終決戦に残る可能性もあった。
明らかにイレギュラーな展開に起因した、彼らにとって負の流れを壊すことはできなかったのである。本命オズワルド敗退。そして生き残った3組。魂が震えた。

M-1における漫才とは 

そして結果は流れをつかんだマヂカルラブリーが見事優勝。
野田の涙には見返すことができた安ど感があったに違いない。

終了後SNSでは大会結果について賛否両論が吹き荒れた。
「あれは漫才じゃない」「全然面白くなかった」「掛け合いがあってこそ漫才」
といった声だ。もしかすると否の声のほうが多かったのかもしれない。

しかしM-1においてスタイルが正統派漫才でなければいけないわけではもちろんなく、審査基準を見てみると「とにかくおもしろい漫才」とある。
筆者の記憶では2001年開催当初から掲げられている基準だ。
とにかく=いろいろな事情はさておいて と辞書にはある。
いろんな事情はさておいておもしろい漫才であることがM-1では求められているのだ。
漫才はしゃべくり漫才のことをいう などという決まりはない。
ミルクボーイで掛け合いの妙のすばらしさを得た後だからかもしれないが
ここで批判をかますことは間違っている。
運営サイド、演者、審査員らになんら否はない。
そもそもかくあるべきなんて常識まなこでお笑いを見るべきでもないし、もはや今回の大多数の批判はなにもかもが的外れであるし、あなたたちのほうが野田クリスタル以上にばかげている。そう思う。

究極これに尽きるがマヂカルラブリーはめちゃくちゃ面白い。
形とかではなく、一番面白いから優勝した。ただそれだけ。
それに偽りもなにもない。すべてだ。

カオスな1年の締めくくりにM-1史に残るカオスを演じたM-1にかかわったすべての人に感謝したいと改めて感じる。最高だった。
去年は去年で最高だったけど大きな期待へのGAPを得た凄い展開となった今年も最高だった。どの年がいいとかっていうこともないけど、このご時世でこれだけの思いをさせてくれてありがとうございます。

この波乱の1年であらゆる様式や生き方、価値観の再構築が求められるときにマヂカルラブリーが見せつけた結果は、画一化されていく現代に新たな一石を投じたと言えなくもない。
マヂカルラブリーがもっと好きになった。

もうヤメラレナイ  ヤメラレナイ

M-1最高!!

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