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ひとりの書店主として伝えたいこと note を見て応援のメッセ-ジを下さった全国の読者の皆さまありがとうございました。とても勇気づけられました。心より感謝申し上げます。「note見てます」と言って多くの出版社さん、そして同業者さん、からも、信じられないぐらい沢山の連絡をいただきました。JBプレスの記者さんからも取材がありました。ありがとうございました。その後のことを以下にご報告したいと思います。

【その後について】
noteの記事を読まれた版元さんから、「結局、遅延の件はどうなったのか書いて欲しい」と言われたので書かなければならないと思ってはいた。ただ、小さな書店が、踏ん張って生き残るためには、日々の努力しかなく、読まなければならないゲラの数々、イベントの準備など、進めていかなければならない仕事も山積みで、その時間があれば、本来の仕事をしたいと思ってしまう自分もいた。


けれども、Amazonではなく隆祥館書店に来て下さるお客様のために、なぜこのようなことが起こったのか? 遅延についての原因を明らかにし、今後の流通の改善を求めるためにも書かせていただくことにした。


まず、その後、遅延を起こしていた件について、大阪トーハンのOさんが、謝罪と、その原因について伝えに来られた。桶川の倉庫の責任者と直接話がしたかったが、連絡はなかった。

 
【遅れた原因として】
1.    新潮社の倉庫が、7月8日に火災に遭っていたことにより、送品が止まっていた。それが回復し、8/1辺りから一気に増えた。

2.    KADOKAWA  Web Hot Line が7月29日から再開したことにより、これも8/1辺りから送品が一気に増えた。

3.    大口の1個口での発注だったら、すぐに荷物が出るが、出版社からの出し方が、データで出されると日にちがかかる。(1個口とデータについての詳細は後述)

4.お盆休みと重なった。

とのことで、要は、8/1からお盆にかけて桶川に荷物が集中したことと、お盆休みが重なったことで混乱して遅延になったとのことだった。
 
今回のように、トーハンに搬入されてから店着まで19日という異常な遅延はさすがに少ない。けれど、搬入後から、7日~2週間(14日)の遅延は、これまでも多々あったことである。

現にトーハン在庫としてあった商品さえ、下記のように11日かかっているのである。これでは、お客様はAmazonに向かわれてしまう。この足止めを何とかして頂きたい。

取次に在庫があるにも関らず、11日かかった「7つの習慣」

 
あのお客様への返金の一件以来、隆祥館書店では、版元さんに発注する際にお聞きした搬入日を、毎回トーハンに電話している。「この日にそちらに入るそうですから、お願いします」と確認するわけである。電話代もかかるが、二度とお客様に迷惑をかけたくないからだ。
 
しかしながら、そこから見えてきたのは、やはり搬入から店着までにかかる日にちだ。

例えば、「頭のいい人だけが解ける論理的思考問題」8月29日に、お客様から注文を受けダイヤモンド社に、電話発注した。搬入日は9月2日だが、9月10日現在未だに入らない。データ化しての搬入のため下記の写真のように提示される。(朝8時30分の時点では、起票がなかった)

 
心配になり、トーハンに連絡した。明日入るということがわかった。これも電話しないとデータとしては上がっていない。搬入から、9日後の入荷である。
 

佐々涼子さんの本は、すべて常備しているが、新書と単行本を補充するために、9月5日に集英社に電話注文した。
データ化しての搬入のため、下記の写真のように提示される。
 

 
電話注文してから、すでに5日経つが、店着日が画面に出ないためいつ入るのかもわからない。

ちなみに、トーハンへの搬入が、10日、取次に連絡して、店着日を聞くと「〝1個口〟という、まとまった数でひとつの箱にしてもらって出す方法では、比較的早いが、〝データ〟化していたら翌週の18日の週になるでしょう。」とのことだった。

〝1個口〟で出してください。とお願いしておかないと、搬入から、約一週間かかるということだ。
〝データ〟化することで、かえって日にちがかかるのだ。

1個口なら搬入から、2~4日で入る、
だが〝データ〟だと搬入から6日~14日かかる。


9月6日金曜日、目取真俊さんと木村元彦さんのイベントを9月18日に控え、影書房に、目取真さんの本「ヤンバルの深き森と海より」「魂魄の道」他、〝1個口〟で電話注文した。

そして、昨日9月9日月曜日、木村氏の新書「終わらぬ民族浄化」と単行本「コソボ苦闘する親米国家」を集英社に電話注文した。


こちらも、〝1個口〟でお願いした。以前、イベントを控え、新書を注文したが、一週間以上、延滞し、イベントに、間に合わなかったことがあるからだ。

だが、〝1個口〟の注文の場合は、トーネットVの画面には、出ない。発注履歴照会画面にも出ない。これはこれで、本当に間に合うのか?取次に連絡しなければ心配でたまらない。
 

1個口の場合提示されない


搬入から書店に到着までの日にちも、出版社が、〝1個口〟ではなく、〝データ〟で出すと、一週間ぐらいかかると平気で言われる。FAX注文では、電話注文よりもさらに一日遅くなることも分かった。

7/31から8/19までの経緯、出版社からの搬入回答・搬入待ちとあるが、搬入日の記載がない

 
以前は、お客様に、搬入から4日後です。と、きちんとご注文いただいた際に到着日を伝えることができたのだが、それができない。

データ化で入っているか?1個口で入っているか?本によって、いつ入るのかわからないからだ。
 

Amazonでは、翌日入る時代に、データ化することで、さらに遅くなっているのだ。遅延問題は決して解決していない。

急ぎのお客様の注文に対しては、ブックライナ-に在庫があれば使えるが、無ければ使えない。さらにこれを使うと7%取次に利益を取られる。
 
8年ぐらい前から、とうとうAmazonで買ってお客様に渡す書店まで出てきた。そして、それを、笑うしかないと笑い話のように自虐ネタにしている経営者もいた。その自虐ネタを取次の方の前で話されても、取次の方は他人事のようだった。

その結果どうなっていったか?と言えば、多くの書店が、次々に廃業に追い込まれていった。

ずっと、おかしいと思っていた。
 
15年くらい前、一日に30人ぐらい客注があるときがあった。最近でも、10人ぐらいある。ブックライナーは、在庫が無いときも多々あるので、いつでも使えるとは限らない。利益のないAmazonでも買いたくなかった。赤字になるということだけではなく、その場しのぎの対応では問題の解決にはならないからだ。
 

今年、5月、取次さんと版元、書店が集まる大阪のトーハン会が開催された。その後の懇親会で、川上社長が、「地方自治体に本屋の一軒もない自治体がある。私たちは、廃業する本屋をこれ以上増やしたくない。」と言われた。


取次が、これ以上、書店の廃業を望まないと本気で、考えているのなら敏速な流通に何よりも力を入れるべきだろう。

このような遅延を、出版社、書店、取次が、本気で、何とかしなければお客様を引き留めることはもうできない。

 
日販のシステムであるNOCSだと、日販に在庫がある商品であれば、3日で入るそうだ。しかも入荷日も画面に出るという。また、NOCSを使って発注すると版元の在庫と、日販の在庫が表示され、入荷日も画面に出るそうだ。(日販の書店さんから直に聞いた)

 
ト-ハンのトーネットVが、10月から「新トーネットV」としてリニューアルされる。
ここは、トーハンに期待したいところだ。NOCSを越えるものを作っていただき、お客様に本の入荷日を伝えれるように改善していただきたい。
 
ここ何ヶ月か、中島みゆきの「ファイト」を聴いて自分を奮い立たせてきた。
 
今回、全国の本屋に思いを持って下さる方々や、同業者の方々、そして多くの版元さんからのnoteを見ての温かい言葉に救われた。小さくても踏ん張っている書店の姿勢を見て下さっている、それだけでも続ける勇気をいただけた。感謝の気持ちを伝えたい。

大手版元さんの中には、本気で本屋の業界の未来を考え動いて下さっている方もおられた。社長自身が、直接話を聞いて下さることにも救われる。
 

しんどいのは変わらないが、

これからも、伝えなければならない本を書かれた作家さんに応えるために、また、その作品を待っておられるお客様にきちんと届けるためにも、日々努力を重ね、やれるところまで続けたい。

 

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