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意気地なし。
共通テーマ「忘れられぬモノ」
ゴツゴツとした雲に覆われた空の下を
どんよりとした気持ちに支配されながらも
なんとか歩を進める。
立ち止まってなんかいられない。
僕はまた、歩み出すと決めたのだから。
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7月2日、午前9時30分
僕が君にもう一度ちゃんと謝ろうと心に決めていた頃、君はもうこの世から居なくなっていた。
潔い最期だった。と後になって医者から伝えられた。
「彼女らしい最期で良かったです。」とそう返したものの、あんな返答をしたくはなかった。
自分がガンであることを忘れているかのように毎日笑って僕の話を聞いてくれていた君だったから、僕には君の死がいささか信じがたい。
「桜って、散り始めてからが綺麗だよね。」
病院のベッドで散りゆく桜を眺めながらそう呟いてた君の横顔は忘れない。
君と初めて手を繋いだあの飲み会の帰り道も。
初めて一緒に行った花火大会に着てきてくれた浴衣があまりにも綺麗で見惚れてたら怒られたことも。
「大丈夫?頑張れ。って気安く言わないでよ」
って怒られたことも。
僕はきっと、いつまでも忘れない。
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ガンだと宣言されて、日に日に弱っていく君を見るたび僕は耐えきれなくなった。
「大丈夫?一緒に頑張ろう」
そう、声をかけることしかできなかった。
そんな僕に君は怒ってくれた。
「大丈夫じゃないよ。頑張ってるよ。
病気じゃない人が気安く『一緒に』なんて言わないでよ。そんな言葉並べるくらいなら同じ病気になってから言ってよ。」って。。。
あの時、あの瞬間、僕が何を君に残せたのか。
なんて言ってあげたら良かったのか。
未だにわかんないけど、黙って手を握っててあげることくらいならできたのにね。
逃げ出しちゃってごめん。
頼りない男でごめんね。情けなくてごめん。
側にいるよ。って言ったのに逃げ出してごめん。「大好きだよ」って結局一度も伝えられなくてごめん。
あれから半年が経ってしまったけど、
忘れられぬモノ、忘れちゃいけないモノを背負って、また僕は一歩を踏み出すことにする。
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