モスクワと便とぼく。
どうも。
今日も尻上がりな留年コーヒーからお届け。
今日は趣向を変えて
少しお洒落なエッセイを書いていこうと思う。
そもそもエッセイの定義が自分の中で固まっていないので、これはエッセイなのか?の状態で書き始めることに躊躇いはあるが、この躊躇いこそエッセイをエッセイたらしめるエッセンスなのかもしれナイッス。
いやまじで今日はお洒落に。ではいこう。
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モスクワと便とぼく。
2018年夏。
私は旧友のO君とウズベキスタンにいた。
O君を知らない方は是非
下記記事を読んで欲しい。
O君とはここまで旅路を共にしてきたが、
僕はフィンランドを目指し、
彼はトルコを目指しており、
心の距離だけでなく、
目的地までもが
数千キロも離れてしまった為、
ここで一旦お別れとなった。
2週間後にパリで落ち合うことを約束し。
この2週間でお互い、
パスポートを紛失したり、スマホを盗まれたり、ジプシーに襲われたりするのだが、
これはまだ、先のお話。
ウズベキスタンからフィンランドへの直行便はなく、
ロシアの首都モスクワで乗り継ぎをしなければならなかった。
乗り継ぎの時間は、8時間ほど。
確か、トランジットビザ のような名前だったと思うが、これを取得するのにかなり苦労した。
ロシア大使館での手続きは本当に骨が折れる。
僕が骨だけ人間だったらバラバラになってたと思う。
お洒落エッセイにこんな一文がいるのかは分からないが。エッセンスは多いに越したことはナイッス。
さぁ、話を戻そう。
私はよく、トランジットの時間を活かして観光をするのだが、
(シンガポールで野宿したのもトランジット)
(トルコで15万円詐欺られたのもトランジット)
トランジットで数時間滞在するだけなら、
基本的にその国の通貨には両替しない。
カードで済ませられる分は済ませるし、もし現金が必要となればその時に最小限ATMからおろす。
これが僕のトランジットポリシーだ。
余るのもったいないからね。
で、だ、
そんな些細なことをきっかけに
まもなく僕は苦しむことになる。
モスクワの中心部にやってきて、
しばらく散策していると、
毎日恒例の便意もやってきた。
モスクワはかなりの都会で大きなショッピングモールが林立しており、至る所で済ませそうな雰囲気だった。
しかし、
モスクワのトイレ事情はそう甘くはなかった。
便意に誘われ、
私はまず目に入ったスターバックスを目指す。
スタバ入店。
やはりスタバはどこの国でもスタバだ。
妙な安心感による直腸の緩みを感じる。
そういえば直腸って本当に垂直だよなぁ。
便サイドからすれば、
あれは
フリーフォールアトラクション以外の何物でもないよなぁ。
そんなことを考えながら
さっそく店員に話しかけ、
トイレの場所を教えてもらう。
そのスターバックスは大きなショッピングモールにテナントとして入っていたのだが、
このスターバックス内にはトイレは無いとのこと。
そして、
上のフロアにショッピングモールのトイレがあるからそこを使って欲しいとのこと。
これらの情報を受け取った頃には、
便の先頭集団は間も無く、
ゴールテープを切りそうなところまで来ていた。
ラストスパートである。
食事に例えると、あと米粒15粒ほど。
便宜上、
便意を食事に例えてしまった。
さすがにこれは怒りのお便りが来そうだが
ここは穏便に済ませたい。
閑話休題。
さぁ僕が上の階のトイレに着くが先か
先頭集団のゴールが先か。
本体と体内でのデッドヒートが始まった。
便の先頭集団が直腸付近でもたついているのを
尻目に、
本体は内股ながらも何とかトイレに到着。
早速、中に飛び込もうとするが、
なんとここで障壁。
海外の洗礼。
有料トイレだ。
トイレの前に立ちはだかる門番。
求められる。ワンコイン。
持ってないんだ。ワンコイン。
ロシアの通貨はルーブル。
1ルーブルすら持っていない。
試しに ウズベキスタン スムを見せるが、
見向きもされぬ。
クレカを見せるが、見向きもされぬ。
便意をアピール。見向きもされぬ。
諦めかけたが、まだ負けられない。
確かスタバの近くに両替所があった。
なんて不便なんだと嘆きつつも、
込み上げる怒り
滲む汗
溢れそうな便意
ありとあらゆる
体から出そうな物を抑えながら
何とか両替所へ到着。
しかし、まだ続く洗礼。
ウズベキスタン スムは
両替対象ではなかった。
この時、円やドルも持っていたはずだが
確か最低両替分を持っていなかったか何かで
とにかく両替が出来ず、
ロシア ルーブルを入手できなかった。
この時はフルマックス便意アンド尿意だった為に、
判断力も思考力も記憶力もほとんどない。
ただ確かなのは、そのまま無意識に
あの門番のいるトイレへと戻ったことだ。
私は門番の前で白旗を掲げた。
持てる匙は全て投げた。
もうここでいい。
君の目の前で。
僕は、
僕体内の駅伝を駆け抜けた
彼らを受け止めたい。
思えば長旅だった。
彼らとの出会いがいつかは定かではない。
ウズベキスタンでの朝食だろうか。
機内食かもしれない。
彼らは僕と出会ってから、
歯に噛み砕かれ、
食道を落下し、
胃液に溶かされ
腸を長時間彷徨いながらも
なんとか
僕の門までタスキを繋いできた。
立派じゃないか。
然るべき場所ではないが、
僕は。
彼らを。
ここで。。。
門番前で開門しようとした、その瞬間。
門番が小さな声で
何かを呟いた。
-.-,----..-
? 聞き取れない。
m ・---|・--.---・・d
? m d ?
2度聞き直すと、門番は先ほどよりも
大きく、はっきりと こう言った。
まっどぉーなぁっず
まっどぉーなぁっず
まっどぉーなぁっず
あ、マクド! あ! あ!!
そうだ。その手があった。
スターバックスは思いついたのに
マクドナルドは思いつかなかった。
地図を見るとショッピングモールを出てすぐに
マクドナルドがあるではないか。
マクドナルドにならトイレはあるに違いない。
トイレの門番よ。
君は、そのトイレの門番としても
私の門の門番としても
どちらも守りきった。
素晴らしきモスクワのキーパーだ。
ありがとう。
門番に踵を返す。
心なしかマクドナルドまでの足取りは軽かった。
マクドナルド内の個室にて、
体内駅伝を駆け抜けたランナー達に別れを告げ
フィンランド行きの便まで、
快適なモスクワ観光へと出かけたのであった。
モスクワと便とぼく。
ー完ー
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