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タイとラオスの国境で友人とデッドヒートした話

今回のnoteは
タイトルの通りタイとラオスの国境で勃発した
とある戦いの記録である。

こういうのを人は戦記と呼ぶのだろう。

留年コーヒー初の戦記。とくと味わってほしい。

時は2016年夏

私は高校時代に24,5番目に仲が良かった友人
O君と2人旅に勤しんでいた。

このO君がなかなかの曲者であり、

私とは本当に、全く、馬が合わない。

私がペガサスだとすると、O君は暴れ馬。

彼のジョッキーはいつも
出雲大社のしめ縄くらい極太な手綱をこしらえていたと記憶している。

それでもO君はヒヒン ヒヒンと呻きながら
ジョッキーを蹴散らし
街を荒らす。

そんな我々の馬の合わなさ具合が引き金となり
これから記すバトルと相成った。




フィリピン、インドネシア、カンボジア等を経た私たちは

東南アジアの喧騒から逃れようとラオスに向かっていた。


ラオスでの目的地はない。
ただリラックスしたいだけだった。だけだったのに......

開戦当日の明朝。
私たちを乗せたバンコク発寝台列車は、
ラオスとの国境の街ノーンカイに到着。

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あらかじめ断っておくが、

私はドが付くほどのド低血圧で
朝はすこぶる機嫌が悪い。


しかもこの時は、寝台列車 到着の際の慣性の法則に
掛け布団を引き剥がされるという

考えうる限り最悪の起床。

最悪の気性。


そんなコンディションで
気丈にあの暴れ馬を手懐けて
騎乗などできるわけがない。

ある程度 気を遣う相手なら元気を取り繕い
口角を2度3度上げてみせるのだが

今横にいるのは犬猿の馬のO君。

気を遣う理由を探しているうちに高血圧になってしまう。

O君はO君でなにかコンディションが良くなかったようだ。

本記事を執筆するにあたって
この時のことを本人に聞いてみたが
なんかゴニョゴニョ言っていてよく分からなかった。

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少し話が逸れてしまった。

島国の日本人には馴染みが薄いかもしれないが
陸続きの国では歩いて国境を越える。 

有名な国境なのだろう。
タイの出国手続きの場所付近では人集りができていた。


私たちはただ国境を目指し歩みを進める。

そして、静かに狼煙は上がり、
戦いの火蓋は切って落とされた。

"あいつよりも早くラオスへ"

同じマニフェストを掲げた2人の
デッドヒートが幕を開けた。

人集りを押し退け闇雲にラオスを目指す。

"ラオスにいったい何があるというんですか?"

何があるわけではない。

いやあるのだろうが今はそんなこと関係ない。
そのあたりは村上さんに聞いといてくれ。

ただO君より、ただ留年より
早くラオス入国を果たしたかった。


0.1秒でもショートカットするために
パスポートの顔写真のページを予め開いておいたり、
これまでの出入国手続き歴を駆使する。

IOC会長が五輪の新競技として視察に訪れるほどの激戦だったという。

後日インタビューに答えてくれた
周りのタイ人ラオス人は口々にこう言った。

"なにを見せられていたんだ?"



"正気の沙汰じゃなかったね"



"SUSHIの横についてるGARI? あれはなんだ?"

GARI GARIの2人のJAPANESEの歩みはやがて

競歩に変わり

競走に変わり

そして...


2人は静かに音速を超えた。


周りの誰の声も聞こえない。

鼓膜を震わすのは自分とO君の荒い呼吸のみ。


結果は留年の辛勝。

こんなに嬉しい白星は受験以来だ。


しかし肝心なのは勝敗ではなかった。

2人して超音速でラオスに入国したのだが
振り返ってみて驚いた。

我々以外、そして誰もいなくなった。

誰の声も聞こえないんじゃない。誰もいないのだ。

あれだけタイ側には人がいたのに
出入国手続きをしているものは
我々以外にただの1人もいなかったのだ。



その夜、真人間の速度に戻った私たちは
あのおぞましい人攫いの国境について調べていた。

するとそこには本当に本当に恐ろしいことが記されていた。

例の国境
早朝割増のようなものがあるらしく

○時(失念)までに出入国をすると
割増料金を徴収されるそうだ。

ほんの10分20分待っていれば
通常料金でラオスに入れたらしい。


まじでなんじゃそりゃ

もう少し情報があれば。
もう少し鉄分をとっていれば。


勝利の喜びの余韻は短く、
圧倒的な敗北感に苛まれる。

あまりにも人間万事塞翁が馬が過ぎる。


これからタイとラオスを往来する諸君。

親しき友達と正しい情報、そして鉄分を忘れるな。


【出典元】
村上春樹
アガサ・クリスティ


次回

インドで大暴れした話

この話にはO君は一切登場しないので
安心してほしい。 

では。





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