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【 傘はいらない 】

時折舞い込んでくる はがき 手紙

海外出張先から 国内の離れ島から

とりとめのない内容が

なんだかほっとさせてくれた

ごく稀にお散歩のお誘いの連絡

暖炉のある喫茶店

赤い車が店内に置いてある小さなレストラン

そして 海

夏の日差しを反射して

波が穏やかにささやいていた

秋の風に吹かれて

あしあとをそっとたどった

付き合っていたわけでもなく

遠からず 近からず

ほんの少し遠慮がちに

同じ”時”を愛でていた

結婚のお祝い状

病気のお見舞い手紙

家族と一緒に感謝していた

こうして このまま繋がっていけると

ある日 ふと舞い込んできた

結婚したとの知らせ

家族と一緒に喜んだ

お祝いを贈って返って来たのは...

絶縁状だった

知り合った頃 30代だった彼が

50過ぎて 素敵な人と出会ったこと

電話で一緒に喜んだのにね

何が起きたかわからないまま

絶縁状を握り締めて泣いた

外は雨

しとしと雨

いっそ 強く打ち付けてくれたら

声を上げて泣けたのに...

ずぶぬれの心に

傘はいらない